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片山修のずだぶくろトップインタビュー 第4回 八郷隆弘氏(本田技研工業 代表取締役社長執行役員)後編

「とんがりを失った」ホンダ、完全復活の予兆…過去と決別の「聖域なき経営改革」断行

構成=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

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“チームHonda”の意味

片山 ホンダでは、社長より技術者がエラいといわれたりしますよね。その意味で、責任者を設けることに抵抗はありませんか。

八郷 縦割り組織の弊害には、気を付けないといけません。昔から研究所にマネジメントはいますが、誰もマネジメントには憧れなかった。常務や専務より、LPL(開発責任者)に憧れた。縦割りにすることによって、マネジメントに憧れるようになってはいけない。

 研究所は、開発を管理するマネジメント会社であってはなりません。技術、商品をリーディングする組織形態が求められます。

片山 縦割り組織の弊害とは、いわゆる「大企業病」ですね。いかに克服しますか。

八郷 2つのことに取り組みます。ひとつは、より他社と異なる、独自性のある、クリエイティブな商品をつくっていくこと。もうひとつは、効率を高めて土台をつくることです。グローバル車は、効率を追求し、収益を含めて強さを確立し、土台となる。一方で、土台をつくる人も夢をもち、「ホンダっていい会社だな」と思ってもらえるようにしなければいけません。

片山 私は長く自動車業界を見てきましたが、“組織のトヨタ”に対して“個のホンダ”だと思っています。ホンダのブランドが輝くのは、社員の“個”が強いからだと思う。一方で、八郷さんは就任時に“チームHonda”を掲げられましたね。これはどういう意味ですか。

八郷 ホンダには、思いの強い個もいますが、その人に共感し、一緒にやる人達がいないと何もできない。つまり、チームワークです。具体的には、ホンダジェットは藤野道格がトップを務めましたが、当然、藤野ひとりでつくったわけではなく、サポートする人達がいて初めて実現したんです。

 野球だって、ひとりじゃできませんよね。メンバーを集める際、各部門から一番いいやつを連れてきてオールスターチームをつくるより、むしろ、いろんな人が集まって「何をするんだっけ」みたいなところから始めるほうが、強いチームができる。リーダー的な人や「個」の強いやつがいるなかで一体感が生まれて、だんだんチームができてくる。全員4番じゃなく、1番も9番もいる。それぞれの特長を生かさないといけないんです。

 ただね、こういうやり方だと、面白いことができますが、当然、失敗もある。

片山 その失敗を許容できるかが問われます。

八郷 はい。そのために、土台がしっかりしていなければいけません。

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

愛知県名古屋市生まれ。2001年~2011年までの10年間、学習院女子大学客員教授を務める。企業経営論の日本の第一人者。主要月刊誌『中央公論』『文藝春秋』『Voice』『潮』などのほか、『週刊エコノミスト』『SAPIO』『THE21』など多数の雑誌に論文を執筆。経済、経営、政治など幅広いテーマを手掛ける。『ソニーの法則』(小学館文庫)20万部、『トヨタの方式』(同)は8万部のベストセラー。著書は60冊を超える。中国語、韓国語への翻訳書多数。

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