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東北大、3200人を一斉「雇い止め」に職員が反対運動…大学側が一方的に規則変更

文=林克明/フリージャーナリスト
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 しかも、5年で雇い止めとする就業規則の変更は14年4月1日に行ったが、起算点は1年さかのぼって13年4月1日とした。つまり、その時点で雇用契約を結んでいた職員たちは、18年3月末で雇用期間が終わるのだ。

他大学も一般企業も無期雇用への流れ

 他方、多くの大学では、非常勤職員や非常勤講師を5年で雇い止めにする方針を撤回し始めている。象徴的なのは、早稲田大学だ。

 早大は東北大と同じように、雇い止めをするための就業規則改正を行う際に、過半数代表選挙を正しい形で行わなかったため、非常勤講師らに刑事告訴されて大騒動になった。

 その結果、早大当局は当初の方針を撤回し、膨大な数の職員が実質的にクビになりそうだったところが、18年には約3000人の非常勤講師らが、希望すれば無期契約に転換できることになった。

 この“早稲田ショック”は全国に波及し、日本大学、法政大学、中央大学、千葉大学などが、次々に雇用期間5年上限を撤回していった。また、早大の問題解決に先立って、全国大学高専教職員組合の取り組みにより、信州大学、徳島大学、国立高等専門学校(51校)などで、非正規職員の無期転換が約束されている。

 さらに、大学よりもむしろ企業で、法改正の趣旨に沿う動きが強まっている。たとえば日本郵便グループは、5年を超えて働く有期契約の非正規社員について、希望すれば来年4月から無期転換を始める。同グループの非正規従業員は約20万人いるため、影響は非常に大きい。

 独立行政法人労働政策・研修機構が15年7月に4854社を対象に行った調査が興味深い。

 東北大のように、非正規職員の雇用年数が通算5年を超えないようにすると答えた企業は、フルタイム有期契約労働者の場合で6.0%、パートタイム有期契約労働者で5.8%のみ。逆に、無期契約に転換するという企業は、5年を超える前に転換する例も含め、フルタイム有期契約労働者で65%、パートタイム有期契約労働者で61.9%に上る。

 これらと比較すると、東北大の3200人以上雇い止め方針への頑なさが目立つ。そもそも大学における非正規という雇用形態は、一般企業よりもはるか以前に始まっている。非常勤講師という身分をつくり出し、正規教員の5分の1から6分の1の低賃金で授業を担当させる人員を大量に生み出した。事務方の非常勤職員も、これに準じて拡大していった。

 雇用を安定させるために改正した労働契約法の主旨を尊重するのか、それとも大量雇い止めを実行するのか。名門・東北大の見識が問われている。
(文=林克明/フリージャーナリスト)

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