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眠りたいのに眠れない…つらい「不眠症」を招く遺伝子を発見!DHAで改善できる?

文=ヘルスプレス編集部
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「不眠になりやすい遺伝子」を発見! ぐっすり眠るにはDHAでコントロール?の画像1不眠になりやすい遺伝子を発見(depositphotos.com)

 なぜ眠れないのか--。人類は、眠れない夜に苦悩しながらも、何十万年も過ごしてきた。それでも不眠の謎はいまだに解明できない。だが、その深い闇に一条の光が差してきた。「眠れる森の美女」が目覚めた時のように。

 滋賀医科大学睡眠行動医学講座の角谷寛特任教授、理化学研究所の吉川武男シニア・チームリーダー、ワシントン州立大学、ペンシルベニア大学による日米共同研究グループは、成人男性294人を対象に統合失調症の発症に関わる「遺伝子FABP7」と睡眠時間の関係を分析。

 遺伝子FABP7の突然変異は、たびたび睡眠が途切れる「睡眠断片化(中途覚醒)」をもたらす事実を世界で初めて究明し、『Science Advances』に発表した。

 ぐっすり眠りたいのに、夜中に目が覚める「中途覚醒」は、実につらい。どのような研究なのか、その成果を見てみよう。

中途覚醒の原因は遺伝子の突然変異だった

 脳細胞(リン脂質膜)は、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などのPUFA(多価不飽和脂肪酸)を多く含んでいる。

 PUFAは、中枢神経系の細胞分化、シナプス形成、脳の発達に必須の物質だ。水に溶けないため、FABP(脂肪酸結合タンパク質)と結合して細胞内を移動し、脂質代謝の促進、シグナル伝達、転写制御を司っている。

 このような細胞内のPUFAの取り込みや輸送に関わるFABPのうち、7番目に単離されたのがFABP7(脂肪酸結合タンパク質7型)だ。FABP7は、脳の中枢神経系のアストロサイトというグリア細胞に発現するため、脳型脂肪酸結合タンパク質とも呼ばれる。

 発表によれば、この遺伝子FABP7のミスセンス突然変異を持つ人は、睡眠断片化が起きやすかった。遺伝子のミスセンス突然変異とは、DNAの「A」「T」「G」「C」のうちの1塩基が別の塩基に置き換わる突然変異によって、異常naタンパク質を産生する変異だ。

 つまり、FABP7の61番目のアミノ酸(FABP7-T61M)の変異を持つ人は、持たない人よりも活動量計が計測した睡眠エピソード(睡眠可能時間)が短く、睡眠エピソードの頻度が高かった。すなわち、中途覚醒が多く、睡眠がより断片化していた。

 また、FABP7の61番目のアミノ酸の変異をもつマウスとショウジョウバエでも、同様の変化を再現できた。つまり、FABP7を欠損したマウスとショウジョウバエは、睡眠エピソードの長さが短く、その頻度が高かった。

 この研究よって、ヒト・マウス・ショウジョウバエなどの動物種を問わず、FABP7の61番目のアミノ酸(FABP7-T61M)の変異によって、睡眠が断片化し、中途覚醒が起きる事実が確認されたことになる。

 ヒト睡眠のゲノム疫学研究と実験動物による睡眠基礎研究のコラボから結実した驚異的な研究成果は、中途覚醒の謎の解明に大きく貢献するだろう。だが、謎はまだある。

FABP7の発現を制御し、睡眠の質を高めるDHA

 謎を解くカギは、このFABP7-T61Mにあった。それはDHAとの結合部位であることから、食事やサプリメントによって中途覚醒を緩和する可能性が高い。

 2014年にオックスフォード大学の研究グループは、DHAの摂取は睡眠の状態を改善すると発表した(Fatty acids and sleep in UK children: subjective and pilot objective sleep results from the DOLAB study – a randomized controlled trial P Montgomery et al. J Sleep Res. 2014 Aug; 23(4): 364-388)。

 発表によると、7~9歳の子ども395人を対象に、睡眠時間と血中のDHAの濃度を分析。DHAのサプリメント(600mg)を毎日摂るグループと、DHAを含まない偽のサプリメント(偽薬)を毎日摂るグループに分け、およそ4カ月間にわたる睡眠時間の変化を比較した。

 その結果、血中のDHAの濃度が低い子どもは、睡眠の状態が悪くなる傾向が強かった。さらに、睡眠時間を厳密に測定できる活動量計を着けて実験を行ったグループ(43人)を調べると、DHAを摂った子どもは睡眠時間が約1時間長く、中途覚醒が減った。

 この研究から、DHAの血中濃度を高く保てば、子どもの睡眠を改善する可能性が高いことが明らかになった。角谷寛教授は、研究成果を次のように総括する。

 不眠症には、ベッドに入ってもなかなか寝付けない「入眠困難」と、眠ってもたびたび目が覚める「中途覚醒」がある。DHAは主に中途覚醒に効果をもつが、睡眠薬ほどの強い作用は期待できない。

 牛乳にはトリプトファンが多く含まれるので、寝る前に飲むと安眠に役立つといわれるように、たとえば、毎日の食事にDHAが豊富なサンマ、サバ、マグロ、あんこうの肝、クジラ、ウナギなどをバランスよく摂り入れるのは賢明だろう。今回の研究成果がDHAよりも効果が高く、中途覚醒を劇的に減らす薬剤やサプリメントの開発につながってほしい。

 このように、FABP7とDHAやEPAなどのPUFAは親和性が高いので、脳の神経可塑性を高め、脳の働きを正常化し、とくに胎生期や出生期の子どもの脳に強い影響を与える。しかも、血中の中性脂肪値やコレステロール値の調節、高脂血症、高血圧、動脈硬化の予防などの働きがあることから、DHAやEPAなどのPUFAは、快眠だけでなく、人間の成長と健康に絶対に欠かせない。

今夜のあなたの快眠のために……

 さて、今夜のあなたの快眠のために金言を三つ。

「毎晩眠りにつくたびに私は死ぬ。そして翌朝目を覚ます時、生まれ変わる」――マハトマ・ガンジー

「睡眠が不足すると、レプチンという食欲を抑制するホルモンの分泌が悪くなり、グレリンという食欲を促進するホルモンが分泌されるので、肥満になりやすい。メタボ、高血圧、糖尿病のリスクも高まる」――井上雄一

「あぁ、休みをとりたいなぁと思ったら、その仕事はあなたに合っていない。理想的な仕事とは、仕事と休みの区別がつかない。睡眠時間が短ければ、ライバルに勝つチャンスも増える。私のやり方は非常にシンプルでストレートだ。求めるものを手に入れるためには押し、押し、押しの一手だ」――ドナルド・トランプ
(文=ヘルスプレス編集部)

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