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高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏

過酷労働でも報酬たった5千円…野球審判員、副業なしで生活困難な実情、プロは超狭き門

文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

「結局、NPBの審判員にはなれませんでしたが、独立リーグの四国アイランドリーグ、BCリーグにも所属し、独立リーグとNPB2軍の公式戦を担当するなど、関連試合も経験できました。『野球は下手でも、上手な人と一緒にグラウンドに立ちたい』という夢はかなえられ、子供から大人まで多くの試合を担当してきました。現在は若手審判員の指導にも力を入れ、すでに何人かプロに合格しています。充実した審判員人生です」(同)

 こう振り返る粟村氏は、現在は審判員を始めた当初の団体・リトルシニアに所属して審判部技術委員を務めながら、地区大会から全国大会まで出場する。このほかに、大学の軟式野球連盟、定時制・通信制の高校野球、学童野球全国大会の審判も委嘱される。これらは公式試合だが、さらに独立リーグや社会人野球のオープン戦、草野球の審判など、さまざまな試合を担当する。昨年は、投球の判定をする「球審」、アウトやセーフなどを判定する「塁審」、正規の試合に置かれる「控え審判」を合わせて年間約200試合をこなしたという。

未整備だった「女子硬式野球」の審判部長に

過酷労働でも報酬たった5千円…野球審判員、副業なしで生活困難な実情、プロは超狭き門の画像3関東女子硬式野球の捕手と球審

 現在41歳の粟村氏に対して、23歳の松本涼太氏(関東女子硬式野球連盟所属)は、埼玉県立富士見高校を卒業すると、NPBの審判員をめざし、2012~14年にかけてBCリーグの審判員を務めた。

NPB審判員を頂点とする野球審判員のルートは、近年は整備されたが、それまでは確固たるルートがなく、都道府県や市町村の野球協会に所属し、その審判ぶりが評価されて、大きな試合を任されてステップアップするのが一般的だった。NPB審判への条件として「NPBアンパイア・スクール」が設立されたのは13年のことだ。もともと、「一流になるには圧倒的な量(試合経験)が必要」といわれ、試合をこなして審判技術を磨く。

 松本氏が審判員をめざしたきっかけは、高校時代だという。

「もともと審判員が好きで、よく務めていました。高校時代に練習試合で球審をしていて、守備妨害を宣告したことがあります。その時、当該チームの監督や試合を観ていた連盟の審判員にほめてもらい、そこから選手としての自分ではなく、審判員としての自分にのめり込んでいきました」(同)

 14年でBCリーグの審判員を辞めた松本氏は、翌15年から関東女子硬式野球連盟の審判員となり、シーズン途中から「審判部設置準備委員会」を立ち上げて委員長となり、初代審判部長に就任。現在は約50人いる審判員の取りまとめも行う。

「中学生、高校生、大学生、社会人と各カテゴリーで全日本につながる大会もあります。私が所属する関東女子硬式野球連盟では、試合中にボークや守備妨害、走塁妨害などが発生した時は、すべての措置を終えた後、審判がその選手に『さわやかに』伝えます。こうしたプレーで敗戦につながる悲しさを減らすためですが、上から目線でなく接しています。私が来るまで審判員がいない連盟でしたので、以前からいる方には喜んでいただいています」

「審判員がいない」ということは、それまでは教師や保護者、試合に出ない選手などの関係者が審判員を務めていたわけだ。練習試合や草野球では、一般人が審判員を務めるケースは珍しくない。それを専門の審判員が担当すれば、試合運営のレベルも上がる。

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

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