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小谷寿美子「薬に殺されないために」

「プロテインは人体に危険」は本当なのか? 薬剤師が解説

文=小谷寿美子/薬剤師

 アミノ酸には窒素という元素が含まれているので、窒素を外さないと処分できません。窒素が外れてしまえば、糖分と同じ経路で燃やして処分できます。窒素はアンモニアという物質にして外すのですが、これは毒なのでヒトの場合は無害な尿素に変換します。この変換場所は肝臓です。尿素が腎臓に回りおしっことして排泄されます。処分する窒素が増えると、肝臓と腎臓がフル回転しなければアンモニアが貯まってしまいます。実際はフル回転しているので、アンモニアを貯めることはありません。これだけこれらの臓器を働かせているので、いずれ疲れてしまうのではないか?と疑問が出てきます。

 そこで、2つの文献を紹介します。まずは、『Annals of International Medicine』<2003 Mar 18;138(6):460-7>です。これは1624名の女性を対象として11年間追跡調査した結果です。正常な腎機能を持っている方は、タンパク質を多く摂取しても腎機能への影響はありませんでした。しかし、腎機能が悪い方はタンパク質を多くとると腎機能が低下してしまいました。

 2つ目は『International journal of sport nutrition and exercise metabolism』<2000 Mar;10(1):28-38.>です。この研究は、高体重のボディビルダーとボディビル以外のアスリートを調べたものです。

 彼らに7日間の栄養記録分析と、血液サンプルと尿の収集を行い、タンパク質の高摂取による腎臓の潜在的な影響を調べました。結果は、尿酸およびカルシウムの血漿中濃度が高いにもかかわらず、ボディビルダー群はクレアチニン、尿素およびアルブミンの腎クリアランスが正常範囲内でした。これは、腎臓が悪くなっていないということです。

 毎日のタンパク質摂取量が1.26g/kgを超えると、両群の窒素バランスは陽性(入る量>出る量)となったのですが、タンパク質摂取量とクレアチニンクリアランス、アルブミン排泄率、カルシウム排泄率との間に相関はありませんでした。結論として、2.8g/kg未満のタンパク質摂取は、この研究で用いた腎機能の指標で示されるように、十分に訓練された運動選手において腎機能を損なわないと考えられます。

タンパク質の摂りすぎは腎結石になりやすい?

 次の、こちらの文献を紹介します。『Clinical Science』<Sep 01, 1979, 57 (3)285-288>です。正常な6人の男性を対象として調べました。尿を採取してpH、カルシウム、シュウ酸塩、尿酸、およびグルコサミノグルカンの量を測定しました。カルシウムやシュウ酸塩、尿酸は結石の成分となるものです。またpHが酸性に傾くと石ができやすくなります。食べ物中の動物性タンパク質が1日34g増加すると、尿中カルシウムが23%増加し、シュウ酸塩が24%増加しました。全体的なリスクはタンパク質を多くした期間中250%増加しました。つまり、無作為化試験をしている文献はないので、今の段階では腎結石になると結論付けることはできませんが、腎結石になりやすくなるとはいえます。

まとめ

 以上をまとめると、運動をした日は1.5g/kgから2g/kgのタンパク質が必要であり、食事で足りない分はプロテインを飲むのが現実的です。また、その量を守っている間は腎機能が悪くなりませんが、量が多くなると腎結石になりやすくなるといえます。
(文=小谷寿美子/薬剤師)

小谷寿美子/薬剤師、NRサプリメントアドバイザー

小谷寿美子/薬剤師、NRサプリメントアドバイザー

薬剤師。NRサプリメントアドバイザー。薬局界のセカンドオピニオン。明治薬科大学を505人いる学生のなか5位で卒業。薬剤師国家試験を240点中224点という高得点で合格した。
市販薬も調剤も取り扱う、地域密着型の薬局チェーンに入社。社歴は10年以上。
入社1年目にして、市販薬販売コンクールで1位。管理薬剤師として配属された店舗では半年で売り上げを2倍に上げた実績がある。

市販薬、調剤のみならずサプリメントにも詳しい。薬やサプリメントの効かない飲み方、あぶない自己判断に日々、心を痛め、正しい薬の飲み方、飲み合わせを啓蒙中。

Twitter:@kotanisumiko

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