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虐待経験者は「残念」…物議の『幸色のワンルーム』は本当に放送中止すべきだったのか?

文=編集部
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虐待経験者は「残念」…物議の『幸色のワンルーム』は本当に放送中止すべきだったのか?の画像1『幸色のワンルーム』公式サイトより

 その過激なストーリーから物議を醸した、7月8日放送開始の連続テレビドラマ『幸色のワンルーム』(朝日放送テレビ)。漫画家はくりによる同名マンガを原作としたドラマ。

 両親から虐待を受けて育った14歳の主人公が、さらに同級生からイジメられ、教師から性的暴行を受け、行き場を失う。ある日、マスク姿の“お兄さん”に誘拐され、「幸」と名づけられて同居生活を送り、幸せに目覚めていくというストーリーだが、「実際に起きた誘拐事件をモチーフにして、事件を肯定してしまっているのではないか」「誘拐事件の被害者を傷つける可能性がある」といった批判の声を受けてテレビ朝日は6月18日、放送の中止を発表した。

「正直、騒動になっていることを知りませんでしたが、マンガ原作の実写化は、ただでさえ“アンチ”が湧きやすいので、何かと理由をつけて批判を受けるものだということは、制作側もわかっていたはずです。準キー局が制作を担当する深夜帯放送のドラマなので、少しセンセーショナルな作品にしたいという狙いだと思いますが、なかなか難しいですね。誘拐を扱った作品だと、『Mother』(日本テレビ系)や『八日目の蝉』(NHK)といったドラマもあるので一度は許可が出たのだと思いますが、原作発表の時期などの影響もあって今回の判断になったのでしょう」(テレビドラマプロデューサー)

 一方で制作を担当する朝日放送は、原作は事件とは関係ないフィクションであるとして、関西地区では放送をスタートする予定だ。確かに、実際にインターネット上にある批判の声をよく見てみると、「マンガ原作のファンだが、実写化はNG」という声もあるようだ。

虐待の被害者からは放送を期待する声も

 世間からの批判が上がる一方で、虐待を受けたという“当事者”から、こんな声も上がっている。

「コミック版の『幸色のワンルーム』(スクウェア・エニックス)は、ヒロインの幸が虐待児のリアルな心情を表現している部分もあって、テレビ放送については『またひとつ代弁者となる作品が出てきてくれた』と楽しみにしていました。今年のカンヌ映画祭でパルムドール賞を受賞した是枝裕和監督の『万引き家族』(ギャガ)からの流れもあって、虐待についてたくさんの人に考えてもらえる“うねり”が出てくるという期待もありました。実際、両親から逃れたくて、逃げ出すためのツールを求めている少年少女はたくさんいます。成人であっても、そういう思いを持っている人は多いんですよ」

 こう語るのは、自らも虐待を受けてきた経験を持つライターの帆南ふうこ氏だ。彼女は幼少期に受けた虐待を乗り越え、現在では一般的な仕事についている“虐待サバイバー”だ。

 もちろん、こうした意見もまた一側面からのものでしかない。しかし実際のところ、3月に東京都目黒区で5歳女児が両親から虐待を受けて死亡したような悲惨な事件が発生した直後には虐待問題が注目されるが、それは長続きしない。

「唯一心配なのは、虐待を受けている子どもたちがこの話を妄信して、知らない人について行ってしまうなど、本物の事件に巻き込まれてしまうこと。しかし、あくまでフィクションとしたうえで、自分を投影できる作品に出合うことは、虐待経験者にとって心の安定となる部分もあったんじゃないかと思います。

 だから、もし『誘拐を肯定している』という批判が原因で放送が中止されたのであれば、とても残念です。『相手の意に反して連れ去る』というのを『誘拐』とするならば、コミック(1~4巻)を読んでも、誘拐を肯定している感じは受けませんでした。この作品が、誘拐事件の被害者を傷つけることになるかどうかは、なんとも言えませんが、関西地区では放送されるということで、『本当に中止する必要があったのか?』ということも含めて、展開を見守りたいと思っています」(同)

 帆南氏は「幸と誘拐男が一緒に料理して食べる第1話のシーンで『食べるって楽しいことだったんだね』という彼女のセリフが、自分の経験とすごくダブって泣きました」と言う。

 ドラマが放送された後には、果たして共感と反発のどちらを招くことになるのか。ジャッジは関西の視聴者に委ねられる。
(文=編集部)

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