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舘内端「クルマの危機と未来」

トヨタの燃料電池車、存亡の危機か…世界3大勢力が撤退、水素インフラも圧倒的に不足

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世界の3大勢力がFCVから撤退

 
 FCVの開発を凍結、あるいは共同の開発契約を解消したのは、ダイムラー、フォード、日産・ルノー連合である。FCV開発に関する合弁事業を解消し、FCVの商用化を凍結した。
 
 端的にいえば、この3社・連合は、FCVの開発、販売から手を引いたということだ。これは、ビッグメーカーが「FCVに将来はない」と宣言したに等しいわけで、影響は計り知れない。FCVを開発、普及を推進するメーカーも、そこと提携するメーカーも、難しい局面に立たされたことになる。

車両価格・水素インフラというネック

 
 FCV開発者からは、「EVは航続距離が短いから市街地を走っていればいい。長距離はFCVの出番だ」という声がかつては聞こえたが、個人のつくった軽自動車のEVが東京~大阪の555.6キロメートルを途中無充電で走り、自動車メーカーから航続距離が500キロメートルを超えるEVが発売されると、そうした声のトーンは次第に下がった。

 しかも、国内のEV充電インフラの整備は急速に進み、面的には十分な充電器の数になっている。実際にEVを使ってみると、充電で困る局面はほとんどなくなっている。

 一方、水素ステーションとなると、まだまだ数が足りない。設置に費用がかかり、安全を確保する上で、そして土地価格等で場所の選定が困難なこと、管理に手間がかかることなど、設置の難しさはEVの充電器とは比べものにならない。

 また、先のビッグスリーをFCVの開発から手を引かせている要因は、車両の価格だ。現行のトヨタミライは700万円である。これに対してトヨタは、2020年以降にFCVの世界販売台数を3万台以上とし、製造コストを半分以下に引き下げるとしているのだが。
 
 こうしたことに関して、上記の3社・連合はFCVの将来の可能性を見通せなくなったということだろう。

がんばるトヨタ 東京五輪に100台のFCバス

 新技術の開発はいつも困難に満ちており、同行の志も少ないものだ。FCVもそうかもしれない。トヨタは、まだFCVの可能性を信じている。ここは、しばらくはトヨタのがんばりを見守るべきだろう。

 トヨタは、EVシフトが鮮明になり、ビッグメーカーに限らずほとんどの自動車メーカーがEVに舵を切ったことと、中国の急激なEVシフトに危機感を募らせたからか、FCVの(プレゼンテーションの)展開が急である。

 まずは乗用FCVのミライの発売である。続いてFCフォークリフト、定置式家庭用FC、FCバス、そして小型FCトラック、続いて大型FCトラックの開発と、次から次に新しいFCVを開発している。

 それだけではない。燃料電池の利活用も展開している。たとえばセブン-イレブンと共同で小型FCトラックを配送に使ったり、定置式のFCを家庭で使う実証試験を行うなどである。また、2020年の東京オリンピックには100台のFCバスを用意するという。
 
 また、トヨタとのFCV仲間にはBMWがおり、ホンダは米国市場向けのEV電池開発ばかりか、FCVの開発でGMと提携している。さらにVWグループのFCV開発を担当するアウディは、韓国現代自動車と開発で提携した。もっとも、いずれの提携もEV、PHVの開発でとてもFCVの開発に手が回らないからかもしれないが。

 3社・連合の撤退で、FCVの開発、販売はきわめて厳しくなったと言わざるを得ない。だからといって、トヨタは東京オリンピックで花を咲かせて終わりなどというシナリオは描かずに、がんばってほしいものだ。
(文=舘内端/自動車評論家)

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