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江川紹子の「事件ウオッチ」第108回

【日野町事件再審開始決定】証拠開示が“裁判官の当たり外れ”に左右されないために法改正を

文=江川紹子/ジャーナリスト
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 通常の裁判については、少しずつ制度の是正も行われてきた。刑事訴訟法改正によって、公判前整理手続の段階で弁護人への幅広い証拠開示が認められるようになり、弁護人が検察官手持ち証拠のリストを開示するよう求めることも可能になった。

 ところが、再審請求審に関しては、そうした法改正もなされず、制度の進化から取り残されている。証拠開示についても、きちんとしたルールが定められていない。

 警察・検察にある証拠は、事案の真相解明のために、税金を使って集められたものだ。捜査機関が恣意的に利用していいものではなく、組織の都合で隠しておいていいものでもない。

 もし、その事件の一審が今、行われるのであれば、開示されて当たり前の証拠が、たまたま法改正以前に起きた事件だったからといって開示されないというのは、単なる「不運」では済まされないと思う。

 現行法の下で通常審が行われるのであれば、開示されるはずの証拠群は、再審請求審でも開示を義務付け、証拠リストの作成や開示が求められるようにすべきではないか。

 日野町事件は、検察側が即時抗告をした。しかし、再審制度が無辜の救済にあることを考えれば、ひとたび確定判決に疑問符が付けられた以上、速やかに再審を開始し、検察側の主張はそこで展開すべきではないだろうか。もし、再審の裁判所が、検察側の主張に理があると判断すれば、再審有罪の判決を出せばよい。

 再審制度のあり方について、法改正を前提にした議論が必要だ。
(文=江川紹子/ジャーナリスト)

江川紹子/ジャーナリスト

江川紹子/ジャーナリスト

東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。


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