中国人民解放軍が台湾への軍事侵攻に向けて、ミサイルを沿岸部に整備し、潜水艦部隊を集結、さらに航空母艦打撃群の台湾海峡派遣など、戦闘能力を増強する準備を着々と整えている。16日に発表された米国防総省(ペンタゴン)の議会向け年次報告書によって明らかにされた。
中国軍は2012年秋に軍トップの党中央軍事委員会主席に就任した習近平中国共産党総書記によって軍備を拡大するとともに、陸海空3軍やロケット砲兵部隊が一丸となり、米軍との戦闘を想定した実戦形式の台湾有事作戦の軍事演習を頻繁に実施。同時に、反腐敗闘争によって弛緩しきった軍上層部を更迭するなど、軍事強化路線を強力に推進している。
ペンタゴン報告書は「これらの目的は近い将来の台湾進攻を視野に入れたもので、台湾や周辺地域の安全保障政策を脅かすのは確実だ」と指摘しており、日本を含む東アジア情勢に大きな影響を及ぼすことが予想される。
台湾海峡トンネル高速鉄道構想
報告書は「米議会年次報告―中華人民共和国をめぐる軍事増強と安全保障問題」と題しており、ペンタゴンが毎年、議会向けに作成している。今年の報告書では「中国人民解放軍は隣接する民主的な島である台湾への軍事侵攻の準備を着実に進めている。解放軍は台湾を制圧するために、最新鋭の軍事兵器を開発、いつでも使えるように実戦装備している」と指摘している。
しかし、報告書は「台湾の軍事的な安全が保障されているのは台湾が(米軍から供給される)高度な最新鋭軍事兵器を保有していることに加えて、100マイル(約160km)にも及ぶ台湾海峡によって、解放軍が台湾に容易に軍事力を行使できない点にある」とも強調している。
中国政府は最近、この「台湾海峡」という最大の難関を攻略する具体的な計画を発表した。それが「台湾海峡トンネル高速鉄道構想」だ。実は、中台間を高速鉄道で結ぶという構想自体は16年3月、北京で開かれた全国人民代表大会(全人代=日本の国会に相当)の16~20年の中期経済目標「第13次5カ年計画」に盛り込まれていた。
中国が中台の両岸を鉄道で結ぶ案を検討していることはそれまでも伝えられたことがあったが、16年の全人代では正式な研究計画として書き込まれたことから、中台双方で話題となった。だが、16年の計画では具体策は挙げられておらず、海底トンネルを掘削するのか、あるいが橋を架けるのかなど具体的内容は不明で、台湾側は「荒唐無稽な計画で、台湾統一工作の一環。プロパガンダであり実現不可能」と冷ややかな反応が大半だった。