最近、某有名ダイエットジムのテレビCMのおかげか、街のいたるところに短期間でのダイエットを約束するジムがオープンしています。「返金保証」を謳い、効果を保証しているところも多いようです。
どんなジムであれ、トレーナーの言うことを守り、きちんとトレーニングと食事を管理していれば、ほとんどの人が目標を達成できます。
しかし、問題はその後で、ダイエットに成功した後、元の生活に戻り、体型も元に戻ってしまうケースが想像以上に多いのです。
アメリカの研究では、ダイエット後にリバウンドする割合(リバウンド率)は95%といわれており、日本でも「女性セブン」(小学館/2011年8月18日号)が行ったアンケート調査では、「リバウンド率73%」という数字が出ていました。
これは、ダイエットジムに限らず、どのようなダイエット法でも必ず起こる問題です。
誰でも、ジムに高額の費用を払ってダイエットに取り組めば、2カ月や3カ月ならがんばれるものです。筆者も以前、同様の方法でダイエットをするトレーニングジムを経営していましたが、5年間のうち目標に到達せず返金した方は、わずか1名のみでした。
しかし、このようなダイエットは、効果を急ぐあまり、急激に生活の変化が起こりがちです。最近は居酒屋でも、ダイエット中の方でも食べられるメニューについて、スマホで相談できるというサービスを行う店舗も出てきましたが、ダイエット期間中には飲み会すら断るという方も多いでしょう。
食生活だけでなく、ジムでのトレーニングの増加など、ダイエットのために急激な生活の変化を行った結果、目標達成後に、その反動が出てきてしまい、元の生活習慣に戻るだけでなく、体重もリバウンドしてしまうことが多いのです。
では、どうすればそういったことを防ぐことができるのでしょうか。筆者は3000人以上、ほとんどリバウンドさせずに身体を変えてきた経験から、もっとも大事なことは「環境づくり」だと確信しています。その理由を、簡単に説明いたします。
「無意識の行動」をコントロールする
短期間でのダイエットに集中している時は、ゴールしか見えないため、どんな環境にいたとしても、目標を達成させることができます。しかし、ひとたびダイエットに成功し、モチベーションがなくなると、人は無意識のまま行動する時間が増えていきます。以前の環境のまま生活していては、以前の生活習慣に戻るキッカケがたくさんあるのです。
たとえば、大好きなラーメン屋さんの前を、ダイエット成功後に、以前と変わらず通って帰宅していたら、おそらく無意識にお店に入ってしまうことでしょう。
もちろん、すべての誘惑を断ち切ることはできません。ただ、ダイエットのために短期間につくり上げた生活パターンは、あっという間に元に戻ってしまうので、ダイエットに成功したあとでも数カ月間は、ある程度継続可能な新しい生活パターンをつくることが、リバウンドしないための最大のコツなのです。
笑えない話ですが、筆者が短期ダイエットをサポートしていた時のクライアントの半数以上が、目標を達成したら「今までガマンしていた食事を食べる」ことを、ご褒美として設定していました。
このような考えでは、あっという間に以前の環境に引き戻され、元の生活パターンに戻ってしまいます。
では、何をすれば一番効果があるのでしょうか。それは、環境の「断捨離」をすることです。ダイエットしながら、もしくはダイエットする前に行うことをお薦めします。
多くの人は、生活の大半を、それほど意識せずに活動しています。行動のきっかけになるのは、「目から入る情報」です。たとえば、スマートフォン(スマホ)を見ればSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を起動するといった行為は、半自動的になっている方が多いでしょう。目から入ったスマホの映像情報が、SNSをする行動のキッカケになっているわけです。
この原理を逆に利用し、自分が望まない行動のきっかけになっているモノを、意識的に断捨離することで、以前の生活に戻りにくくさせるのです。
筆者は今まで3000人以上環境を変えるサポートをしてきましたが、部屋や机の中だけでなく、カバンや財布など、普段持ち歩くモノまで、すっきりと断捨離した人で、リバウンドした人を見たことがありません。
ダイエット以前の環境を捨て去ることで、ダイエット前の生活習慣に戻らなくなったのです。ダイエットを成功させるには、食事や身体づくりの工夫だけでなく、「環境」を積極的に変えることも重要なのです。
(文=角谷リョウ/Lifree株式会社・取締役、パーソナルトレーナー)