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森精機、世界の発展を牽引する企業の秘密…確実に未来を見通す経営

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 世界のIoT(モノのインターネット)化の動きを取り込むべく、工作機械製造のDMG森精機株式会社(以下、森精機)が多くの企業と連携を進めている。その背景には、今後、IoTが進むべき道は同社にとって大きなチャンスとの信念があるように見える。

 同社は、長期的な視点で自社の取り組むべき課題を把握している企業だといえる。中国経済の減速などのリスクがあることは確かだが、同社にとってそれは想定内であり、対応可能なリスクなのだろう。その理由として、2000年代に入って同社は高値圏での買収を避けてきた。それは景気循環に左右されにくい経営基盤を整備するために大切なことだ。

 森精機が重視していることは、ハード(工作機械)とソフト(IoTを支えるネットワークテクノロジー)の融合を進め、成長につなげることだ。ハード面に関して森精機は、DMG(ドイツ、旧ギルデマイスター社)との経営統合によって5軸加工機の生産能力増強という成長に必要な要素を手に入れることはできた。

 ただ、肝心の国内市場においてその普及が進んでいない。森精機は他の企業との連携を進めることで5軸加工機の有用性を多くの企業と共有しようとしている。さらには、他のメーカーとIoTネットワークシステムの共同運用などを進めることで、ソリューション面からも、より効率的かつ高度な生産活動を支えることが目指されている。

環境変化への適応と安値での買収

 
 森精機は、わが国を取り巻く経済環境の変化をうまくとらえ、事業構造の変革を進めてきた企業である。それに加え、同社は過去の教訓を生かして安値での買収を心がけてきたように見える。教訓を生かすことは、口で言うほど容易なことではない。

 1948年、奈良県大和郡山市にて森精機は設立された。当初のメイン事業は、繊維機械の製造と販売だった。第2次世界大戦後のわが国経済にとって、生糸などの繊維産業は復興のけん引役だった。森精機設立の背景には、復興のブームに乗って経済的な利得を獲得する狙いがあったといえる。

 1950年代半ばに入ると、わが国経済は高度成長期を迎えた。つまり、繊維加工などの軽工業から鉄鋼や自動車、石油化学を中心とする重工業へと産業の構造が変化したのである。またこの時期、農村から都市部の工業部門へ、労働力の流入が急速に進んだ。

 森精機の経営陣は、経済環境の変化が自社に与えるマグニチュードを的確に理解していたと考えられる。1958年から森精機は高速精密旋盤の製造と販売を始めた。それは、紡績機械などから工作機械へ同社がプロダクト・イノベーションを実現したことにほかならない。

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