
“ホリエモン”こと実業家の堀江貴文氏が、史上初のピロリ菌検査キット付き書籍『ピロリ菌やばい』(ゴマブックス)を4月に上梓した。同書で、堀江氏は「胃がんは防げる」「大事なことは、治療じゃなくて予防」と提言しており、胃がんを防ぐための有効手段としてピロリ菌の検査・除菌をすすめている。
ひとりでも多くの人がピロリ菌検査を行い、菌がいる場合はきちんと除去すれば、胃がんは劇的に減らせるという。
同書の監修を務める予防医療普及協会の鈴木英雄氏(筑波大学附属病院つくば予防医学研究センター副部長)に、ピロリ菌と胃がんの実態や予防医療の意義などについて聞いた。
胃がん患者の99%に生息するピロリ菌
――「やばい」とされるピロリ菌ですが、どんな菌なのでしょうか。
鈴木英雄氏(以下、鈴木) 正式名称はヘリコバクター・ピロリ菌で、胃に生息する細菌です。WHO(世界保健機関)は1994年に「ピロリ菌は胃がんの原因である」と認定し、2014年には「胃がん対策はピロリ菌除菌に重点を置くべきである」との発表を行っています。
いろいろな毒素を出していますが、日本や韓国、中国のピロリ菌は特に毒性が強く、「世界で最悪の菌」ともいわれています。日本人のがん死亡数の3位は胃がんです。胃がんの患者さんの胃の手術標本を調べたら、99%にピロリ菌が確認されました。
ピロリ菌は唾液などを通じて感染し、約8割が母子感染と言われています。感染率は60代以上で60~70%ほど、40~50代で30~40%ほどです。衛生環境の改善に伴い、若年層ほど感染率が下がっており、中学生では3%ほどです。『ピロリ菌やばい』(ゴマブックス/堀江貴文著、予防医療普及協会監修)
鈴木 抗生剤2種類と胃酸を抑える薬を1週間ほど飲めば、ピロリ菌を除菌することができます。一度除去してしまえば、基本的にはその後は感染することはありません。副作用として、抗生剤の服用中は軟便になったり味覚異常が生じたりする可能性があります。
また、除菌すると、胃酸が出やすくなり胸やけや食道炎を生じることもありますが、一過性の場合がほとんどです。治療費は数千円で、検査費を入れても1万円程度です。除菌により胃がんのリスクは6割ほど減らせますが、完全になくなるわけではないので、定期的な検診などは必要です。
――健康診断ではバリウム検査(X線検査)や内視鏡検査(胃カメラ)がありますが、それらではピロリ菌の有無はわからないのでしょうか。
鈴木 ピロリ菌に感染している胃は、ひだがなくなったり太くなったりしているので、バリウムでもベテランの検査技師の方であれば、すぐにわかります。ただ、今までは胃がんの検診なので、「がんの有無」しか回答せず、わざわざ「ピロリ菌がいましたよ」とは教えてくれませんでした。去年からガイドラインが変わり、ピロリ菌が原因であることが多い「胃炎」がみられる人にも、「胃炎の疑いがある」と通知するようになりました。
内視鏡検査でも、専門医であればすぐにわかります。内視鏡の場合は、その場で胃の組織を一部取って、すぐにピロリ菌の検査に出すこともできます。
――ちなみに、バリウム検査と内視鏡検査はどちらのほうがいいのでしょうか。
鈴木 圧倒的に内視鏡です。精度が全然違いますから。胃がんの発見率は、バリウムでは0.1%ですが、内視鏡は0.3%です。
エビデンスが揃ってきたことに伴い、近年は自治体検診でも内視鏡検査が認められるようになりました。ただ、内視鏡については検査できる医師が必要なので、そこがネックです。「内視鏡はつらい」という印象を持つ人もいるかもしれませんが、今は鼻から入れる検査もあり、圧倒的に楽です。X線検査では被ばくの問題もありますし、内視鏡のほうをすすめます。
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