京都大学出身で、現在は京都大学名誉教授の本庶佑氏が、今年のノーベル医学・生理学賞を受賞されました。これには、京都大学医学部だけでなく京都大学交響楽団のメンバーも沸き立っているようです。というのは、本庶氏は学生時代、同大学のサークルでフルートを演奏していたからです。その後、アメリカに留学してゴルフにのめり込まれた本庶氏は、ゴルフ会もつくり、現在も会長に就いているとのこと。
このように、趣味の世界でもトコトン追求されるだけでなく、ご自分が中心になって多くのメンバーを仕切っていかれているのです。研究という孤独な部分と、研究室の統率という対極的な作業を見事にこなすことができるのは本庶氏の大きな才能であり、それが受賞に至る大きな発見に結びついたのだと思います。
医学部に入学してからフルートを始めた本庶氏ですが、楽器の練習という極めて個人的な作業のかたわら、演奏会のすべてを取り仕切る責任者も務めていたそうです。京都大学交響楽団で一緒にフルートを吹いていた同級生で現在、「日本フルート協会」会長の佐々木真氏によれば、「昔から人望が厚く統率力があった」とのことです。
この「責任者」というのは、大変な役割です。まったく経験のない20歳そこそこの学生が、指揮者やソリストの出演依頼、スケジュール作成、コンサートホールの交渉、予算もすべてまとめ上げなくてはなりません。しかも、100名以上いる団員の意見をまとめてプログラムを作成するのが、また大変なんです。
たくさんの先輩たちも強く意見を言ってくるし、なんとかまとまりかけたプログラムを、指揮者が一言で否定してしまうこともあります。本庶氏がその後、大学研究室をしっかりと率いる一方、当時、抗がん剤が主流の時代で免疫療法に消極的だった薬品業界にあって、がん治療薬「オプジーボ」の開発に協力してくれる製薬会社を探していました。多くの会社に断られ続けてもあきらめず、ついに小野薬品との共同開発にこぎつけました。
こういった能力も、実は大学オーケストラで鍛えられたのかもしれません。