
スバルは昨秋以降、無資格検査問題や排ガス・燃費データの改ざん、ブレーキ検査の不正などが相次いで発覚し、その対応のために大幅な減益に陥っている。それに加えて、これら一連の不正とはまた別のリコールを届け出る。
リコールの詳細は11月5日の連結決算(2018年4~9月期)の発表時に説明するというが、同時に発表される2019年3月期の業績予想が大きく見直されそうだ。そうなると今回のリコールは、経営上、重大な問題に拡大する可能性を持つ。
半年で42%、301億円の純利益の減少
このリコールは一連の不正とは異なり、品質関連のものであるといわれる。そうなると部品交換が必要な場合が大半であり、エンジンの部品となれば修理も複雑で高度な技術が求められ、スバルのいう数十万台規模の回収となれば、長期間の対応とならざるを得ない。
こうしたことから18年4~9月期の連結純利益が前年同期比42%減少、従来予想の791億円を301億円下回り490億円になると10月23日に発表した。一方、営業利益は従来予想を490億円下回った。前年同期比71%もの減少であり、その原因には上記の新たな品質問題によるリコール費用の多くが計上されていると想像できる。
エンジンに致命傷、バルブスプリング折損か
リコールされるのは「バルブスプリング」と呼ばれる、エンジンの極めて重要な部品であるとされる。バルブスプリングは、シリンダーに空気を吸い込むときに開き、空気と燃料の混合気を圧縮するときに閉じられる吸気バルブに取り付けられる。また、混合気が爆発・燃焼した後、燃焼後のガスを排出するときに開く排気バルブにも取り付けられている。
現在の高性能、高効率のエンジンには1気筒につき吸気バルブが2個、排気バルブが2個付く。いわゆる4バルブ方式で、1気筒につき4個のバルブスプリングが使われる。スバルのエンジンも4バルブ方式である。4気筒の水平対向エンジンでは計16個の、6気筒では計24個のバルブスプリングが使われる。
エンジンが破損する
バルブスプリングが原因のリコールは過去にもあった。最近の例では10年7月のトヨタ「クラウン」と「レクサス」で、国内外合わせて27万台にリコールが行われた。原因は、バルブスプリングの材料中の微小異物であった。その結果、バルブスプリングの強度が低下して折損し、エンジンが停止することがあるとしていた。
バルブスプリングの材料はバネ鋼と呼ばれる捩じり荷重に強い特殊鋼である。強度を高めるためにシリコン、マンガン、クロムといった元素を含有させている。微小異物というのは、材料の特殊鋼の製造中に入り込んでしまった、こうした元素以外の物質を指す。それによって材料の性質が変わり、バルブスプリングの捩じり強度が低下し、折損する場合がある。バルブスプリングが折損すると、場合によってはバルブがピストン上部を叩き、損傷がエンジン全体に及ぶ場合もある。
リコールの責任の所在はさておき、微小異物の混入が原因とすれば、バルブスプリングの鋼材メーカーの品質管理の問題である。