医師が教える、インフルエンザの知られざる予防法…罹ったときの間違った対処法
その後、種々の実験を繰り返した同教授は「感染症をはじめ、病気にかかったときには食欲不振に陥るが、これは体の防御機構の表現である」という論文を米国臨床栄養学会誌に発表した。その実験の概要は、次のようなものだ。
ネズミ100匹を4群に分ける。その4群を何も感染していないネズミと、腹腔内に病原菌を注射して無理に病気を起こさせたネズミの2群に分ける。その2群ずつを、さらに自由に食べさせる群と、チューブを胃に入れて無理に食べさせる群に分けて、死亡率と平均生存日数を観察した。結果は「表」のようになった。
種々の病気で食欲のないときに「体力をつけるために」という理由で無理に食べることがいかに悪いか、かえって、病気を悪化させたり、死期を早めたりすることがある、ということを雄弁に物語っている。
マレイ教授も結論として「食欲不振は自分自身の体の防御反応に重要な働きを果たしている」と喝破している。
2016年、日本の大隅良典博士に与えられたノーベル医学・生理学賞は同博士の「Autophagy(自食作用)」の理論に対してである。人体を構成する60兆個の細胞は、年齢を重ねるとともに、その細胞内に「古いタンパク質」「老廃物」「ウイルス」などが蓄積されてくる。「空腹」のときや絶食すると、こうした「有害物」を細胞自身が処理してしまう現象が「Autophagy」である。つまり空腹(食欲不振)のとき、細胞に潜り込んだインフルエンザ・ウイルスも「自食」されてしまうことを示唆している。
よって、インフルエンザの予防や、不幸にして罹患したとき(抗インフルエンザ薬は服用しつつ)にも「食べたくないときは食べない」ことだ。ただし人体60兆個の細胞は、糖分だけで活動しているのだから、体を温める作用のある熱い紅茶にハチミツや黒砂糖を加え、免疫力増強作用や殺菌・抗ウイルス作用、解毒作用を有する生姜(の辛み成分=ジンゲロン、ジンゲロール)のすりおろし、または粉末を足した「生姜紅茶」を1日3~4杯飲まれるとよい。インフルエンザ予防になるし、もちろん、かかったときも早めの治癒を促してくれるはずだ。
なお紅茶の赤い色素「テアフラビン」には強力な抗インフルエンザ作用があることも確かめられている。
(文=石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士)