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津田建二「IT/エレクトロニクス業界の動向」

ジャパンディスプレイの呆れた経営…なぜ潰れる寸前まで危機に気づかず中国企業傘下入り

文=津田建二/国際技術ジャーナリスト
ジャパンディスプレイの呆れた経営…なぜ潰れる寸前まで危機に気づかず中国企業傘下入りの画像1ジャパンディスプレイの戦略発表会の様子(写真:つのだよしお/アフロ)

 ジャパンディスプレイJDI)に台湾の電子部品メーカー2社と中国のファンドが800億円を出資することが決まった。これによって台中連合が議決権の49.8%を握る筆頭株主となる。JDIは、経済産業省が主導して2012年に日立製作所と東芝、ソニーの液晶部門を統合してできた会社である。当時の産業革新機構(現在のINCJ)が2000億円を出資し、液晶の復活を目指した。台中連合が出資することで、INCJは筆頭株主ではなくなり、台中連合を中心に再建を果たす。

 JDIがなぜ行き詰まったのか。理由はたくさんあるだろうが、大きく分けて2つある。根本にあるのは、液晶がハイテクからローテクに変わった、という認識を持たなかったためだ。筆者は、シャープが危なくなった2015年にもこのことを指摘している(参考資料1)が、もっと早く警鐘を鳴らせばよかったと後悔している。もう一つは、日本の大企業同士の事業統合でうまくいった事例が一つもないからだ。これもはっきりとした理由がある。

 液晶産業は今や、台湾、韓国から中国へと移転した。韓国においてさえもう利益を生む産業ではなくなっている。液晶ディスプレイは、基本的に1画素を設計できたら、あとはそれを何十万、何百万個ひたすら並べるだけの、いわゆる「ラバースタンピングインダストリ(ゴム印産業)」にすぎない。技術バリアはそれほど高くないため、中国でも早期に量産できるようになった。

 現在は中国の最大手のBOEが7400億円もの設備投資を行い、一人勝ちを目指しつつある。台湾の大手液晶メーカーでは、1990年代から液晶ディスプレイを出荷してきた中華映管が2018年末に民事再生の手続きをとった。

 1990年代までは液晶はハイテクだった。大型化するための各画素の均一化が難しく、量産でのノウハウを蓄えるための期間が必要だった。このため、大面積で均一につくることに集中し、それを製造装置につくり込んだ。このため製造装置を買ってくれば、製造できるようになった。ここが半導体製造とは違うところであり、半導体のランダムロジックやアナログ回路パターンはチップ内ではディスプレイのように単純ではなく、大都市の地図のように入り組んでおり極めて複雑である。つまり高集積半導体の製造は、いまだにハイテクだ。

津田建二/国際技術ジャーナリスト、「News & Chips」編集長

津田建二/国際技術ジャーナリスト、「News & Chips」編集長

国内半導体メーカーを経て、日経マグロウヒル(現日経BP)、リードビジネスインフォメーションと技術ジャーナリストを30数年経験。その間、Nikkei Electronics Asia、Microprocessor Reportなど英文誌にも執筆。リードでSemiconductor International日本版、Design News Japanなどを創刊。海外の視点で日本を見る仕事を主体に活動。
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Twitter:@kenjitsuda2007

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