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韓国の芸能・性・権力の象徴――性接待ビジネス【前編】

ビッグバン・スンリと所属事務所前代表ヤン・ヒョンソクが学んだ女性斡旋ビジネス全真相

取材・執筆=Dan Ryu【韓国紙記者】、翻訳・構成=河鐘基
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2019年8月28日、常習賭博の容疑で出頭するBIGBANGの元メンバー、V.Iことスンリ。警察関係者は8月中旬、同容疑での捜査に着手したことを明らかにしていた。(写真:アフロ)

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 2018年11月、韓国人気アイドルグループ「BIGBANG(ビッグバン)」のメンバー・スンリ(V.I)が、芸能記事ではなく、初めて社会記事においてその名を“飾った”時、韓国の多くの人々は、ふたつの文脈で驚いた。ひとつは、普通の芸能人とは違って、「若く成功した企業家」というイメージが強かったスンリが、「なぜそのような悪行に手を染めたのか?」という点において。

 これまで、スンリはさまざまなテレビ番組に出演。「ビジネスに名前だけ貸すようなほかの芸能人と自分とは違う。みずからの手で事業を運営している」と吹聴していた。そうした話を鵜呑みにした視聴者たちは、名前やルックスだけでなく、実力で勝負するスンリの姿に熱狂。しかし蓋を開けてみれば、スンリは投資を受けるため、性接待や遠征売春まで斡旋していたという疑惑が持ち上がった。視聴者たちの熱狂は、すぐさま虚脱と怒りに変わった。

「結局、“汚い大人”と同じ穴のむじなだったんじゃないか」

 現在、韓国国内では、そんな非難の声があちこちから聞こえてくる。

 そして、スンリのニュースに人々が驚いたもうひとつの点。それは、スンリが用いた手法――「性接待×ビジネス」というやり方――についてのものであった。

 金持ちの投資家に対し、出資を求める側が賄賂や性接待を提供するという手法は、世界のどこででも見られる“ビジネス慣行”であり、それは韓国においても同様である。“過去の遺物”とまでいうと、現実には即さないだろう。それはいまでも現実に存在する手法であり、「おじさんビジネスマン」たちが好んで使ってきた“裏の接待術”である。しかし、1990年生まれで、まだ30歳にもならないスンリが、そのような接待術を使っていたとは……。英語、中国語のみならず日本語まで駆使する新世代のビジネスマンなどと持ち上げられてきたスンリが、そのような古典的なやり方で事業を育んできていたということに対し、人々は驚愕したのである。となれば韓国では当然、次のような疑問が湧き上がっている。

「スンリはいったい、性接待や賄賂といった手法を誰に学んだのか?」

YGの社長ヤン・ヒョンソクの疑惑も持ち上がる

 スンリの事件について、韓国の弁護士のひとりは「芸能人として少しばかり色街の事情を知ったからといって、たかだか28歳のスンリがそんな接待ノウハウを自分で編み出したとは考えにくい。まるで優秀な先生に学んだようだ」と話す。確かにこの意見に説得力はある。しかし筆者は、スンリが本当に誰かからノウハウを学んだという可能性は低いと考えていた。そもそもいったい全体、そんな過去の遺物のようなチンピラじみた手法を誰がレクチャーするというのだろうか?

 ただ、筆者のそんな考えが間違っていることに気付かされるまで、それほどの時間は要さなかった。一連のスンリ絡みの事件発覚からほどなくして、今度はスンリの所属事務所であるYGエンターテインメントの社長であるヤン・ヒョンソクが、まるで売春組織を思わせるような性接待の嫌疑で追及され始めたからである。

 疑惑の概要はこうだ。

 警察が、スンリ事件の舞台となったクラブ、バーニングサンについての調査を進めている間、もうひとつの疑惑が持ち上がる。韓国芸能界で最も大きな影響力を持つ人物のひとりであるヤン・ヒョンソクに、インターポールの指名手配を受けている東南アジアのビジネスマンに性接待を提供したという疑惑がそれである。そのビジネスマンとは、腐敗容疑で手配を受けているマレーシア出身の実業家、ジョー・ロー。ヤン・ヒョンソクは彼を接待し、その席には世界的に有名な人気歌手、PSY(サイ)も同席していたという。もっともPSYは、ジョー・ローが自身の友人であり、ヤン・ヒョンソクに紹介しただけだとしている。また、自身とヤン・ヒョンソクは食事をした後に席を離れたため、その後に起こったことについてはわからないとしていたのだが。

 しかし、PSYの言葉が真実ではないことは、すぐに明らかになっていく。ほうぼうから、ヤン・ヒョンソクがジョー・ローに提供した性接待の具体的な情報が出てきたのだ。元JYJメンバー、パク・ユチョンの元ガールフレンドで、パク・ユチョン同様に麻薬使用の嫌疑で逮捕された“ミルク姫”ファン・ハナ(南陽乳業創業者の孫娘)もその場におり、韓国の夜の世界の実力者である“チョンマダム”が女性たちを斡旋、ジョー・ローとその一行を接待したというのだ。接待参加者のひとりは、ヤン・ヒョンソクがチョンマダムに対して「今日は私のために苦労したのだから、酒をたくさん売らないと。任せるからどんどん出してくれ」と話していたと証言している。

 しかもヤン・ヒョンソクの性接待はそれだけにとどまらなかったという。ヤン・ヒョンソクがチョンマダムを通じて、“遠征性接待”を行ったという事実も明らかにされた。ジョー・ローと一行は、韓国から斡旋された女性10人とともに、南フランスやイタリアへの旅行を楽しんだという。その斡旋の背後にはYGの存在があったと指摘され、さらにヤン・ヒョンソクが直接関与したという情報もまことしやかにささやかれているのだ。

スンリとヤン・ヒョンソク、女性斡旋の“同じ手法”

 さらに韓国では、チョンマダムとともに実際に接待に参加した女性たちへの報酬額まで報じられ始めている。韓国の放送局MBCが放送する『ストレート』というニュース番組では、YGが2億ウォン(約2000万円)を支給、そのうち、1億ウォン(約1000万円)がチョンマダムに渡ったと報じられた。

 この件を、情報提供者の代理人として警察に通報したパン・ジョンヒョン弁護士は、ラジオ局CBSの番組『キム・ヒョンジョンのニュースショー』に出演し、現在までに明らかになった状況を詳細に説明した。その説明には、ヤン・ヒョンソク事件とスンリ事件との繋がりまでもが含まれていた。

「(ヤン・ヒョンソクの事件のように)高級レストランを借りきって性接待をするというような方法は以前はよく用いられた手法であり、バーニングサンにおけるスンリ氏の性接待事件と方法がとても似ている。さらに驚くべきことに、スンリ氏も高級レストランを借りて日本の投資家を接待をしましたが、チョンマダムという人物は、そのやりとりに使われたチャットグループにも登場する人物なのです」(パン氏)

 パン氏によれば、スンリのチャットグループにおけるやり取りには、「チョンマダムを通じて、何人か女性を用意しろ」といった内容の書き込みが散見されたという。つまり、ヤン・ヒョンソク、スンリがそれぞれに、女性を斡旋するチョンマダムと関わりを持っていたということになるわけだ。

「私が調べたところでは、チョンマダムをヤン・ヒョンソク代表に紹介したのはスンリだ」とパン氏は言う。つまりヤン・ヒョンソクとスンリの性接待は、単に方法が似ているのではなく、まったく同じ人物を通じて、まったく同じ方法で行われていたのだ。

 なおここでは、チョンマダムをスンリが紹介したということ自体はあまり重要ではない。状況に鑑みれば、“よく学んだ学生”たるスンリは、師匠であり先生であり、そして社長でもあるヤン・ヒョンソクに“新たな取引先”、すなわちチョンマダムを紹介しただけ――と考えたほうが妥当だろう。この報道の直後、疑惑が高まったヤン・ヒョンソクは、2019年6月、YGの代表職を辞すに至る。「自分は何も違法行為をしてはいないが、会社に迷惑をかけることはできない」と釈明してのことだった。

【中編】に続く)

(取材・執筆=Dan Ryu【韓国紙記者】、翻訳・構成=河鐘基)

河鐘基

河鐘基

1983年北海道生まれ。株式会社ロボティア代表取締役。テクノロジー専門ウェブメディア「ロボティア」を運営。著書に 「AI・ロボット開発、これが日本の勝利の法則」(扶桑社新書)、「ドローンの衝撃」(扶桑社新書)、「ヤバいLINE 日本人が知らない不都合な真実」(光文社)。訳書に「ロッテ 際限なき成長の秘密」(実業之日本社)、「韓国人の癇癪 日本人の微笑み」(小学館)など。

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