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江川紹子の「事件ウオッチ」第135回

「旭日旗」持ち込み問題で生じる東京五輪組織委への疑問…江川紹子の提言

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東京五輪「旭日旗」持ち込み問題で生じるIOCへの疑問…江川紹子の提言の画像1
物議を醸す旭日旗 (c)fotlia


 東京オリンピック・パラリンピック組織委員会は、韓国が求めていた旭日旗の持ち込み禁止を行わない方針を示した。韓国政府は国際オリンピック委員会(IOC)にも旭日旗禁止を要請。だがIOCは、「競技会場は、あらゆる政治活動と無縁であるべきだ。大会で懸念が出た際は、ケース・バイ・ケースで対応する」というコメントを発表しただけで、態度をはっきりさせていない。

旭日旗をめぐる声


 旭日旗をめぐっては、それぞれの立場から次のような意見が表明されている。

(1) 韓国側は、旭日旗を「周辺国家に過去の軍国主義と帝国主義の象徴と認識されている。ナチスのハーケンクロイツ(かぎ十字)と同じ戦犯旗」と主張。旭日旗そのものだけでなく、「旭日旗をイメージさせる」デザインに対しても過敏に反応する。「扇」をモチーフにしたパラリンピックのメダルが、「旭日旗をイメージさせる」として、変更を求めた。

(2) 日本政府は韓国側のこうした見方をずっと否定してきた。たとえば、菅義偉官房長官は2013年9月26日の記者会見で、次のように述べている。

「皆さんご承知のとおり、旭日旗のデザインはですね、大漁旗や出産、節句の祝い旗、あるいは海上自衛隊の艦船の旗など、日本国内ではですね、広く使用されておりですね、これが政治的主張だとか軍国主義の象徴であるという指摘はまったく当たらない。大きな誤解があるのではないかというふうに思っております」

 今回も、菅氏は「旭日旗掲示は政治的宣伝とはならず、持ち込み禁止品とすることは(東京五輪組織委は)想定していないと承知している」と述べている。

 さらに、内閣改造で就任したばかりの橋本聖子五輪担当相も、「旭日旗が政治的な宣伝になるかということに関しては、決してそういうものではないと認識している」として、問題ないとの認識を示した。

(3) ネット上では、韓国が旭日旗を問題視するのは、2011年にサッカーの日韓戦の後、韓国選手の1人が日本人を侮辱する差別パフォーマンスを行って批判された弁明として「観覧席の旭日旗」を持ち出したのがきっかけで、旭日旗非難はそれに韓国世論が便乗したものにすぎないとして、今回の問題も、韓国が日本に嫌がらせをしているだけだ、との主張が飛び交っている。「旭日旗に因縁をつけているのは、世界でも韓国だけ」といった声も少なくない。

 こうしたネット民は、(2)の日本政府の立場を強く支持する。さらに、積極的に旭日旗の持ち込みを推奨しようという声もあり、「東京五輪には旭日旗を持って応援に行こう」と煽った高須クリニック院長の高須克弥氏のツイートには、2万9000もの「いいね」がついた。

旭日旗の使用を禁止したFIFA

 ただ、いずれの見解も、自身の立場に都合の悪い事実には触れずに済ませたり、曲解している。

 (1)について言えば、日本政府の見解にもあるように、旭日旗のデザインは、大漁旗など民間で広く使われていたもので、朝日新聞の社旗やビールのラベルなど商業利用もされてきた。この事実を伏せて、ナチス党のシンボルに採用され、ヒトラーが政治的権力を握ってから国旗にも使われるようになったハーケンクロイツと同一視するのは、無理がある。

 ただ、(2)の日本政府の見解も、日本帝国陸軍の軍旗、同海軍の軍艦旗として使われたことで、アジアの国々にとっては過去の軍国主義の象徴として見られていることを、意図的に省いているのは問題だろう。また、旭日旗は、右翼の街宣やヘイトスピーチの現場で日の丸とともに掲げられ、ナショナリズムや排外主義を強調する印としても使われている。都市部の町中で旭日旗を目にするのは、そうした政治的、あるいは排外的な主張の場ばかり、と言ってもいいくらいだ。

 また、(3)で指摘されているように、韓国が旭日旗をことさらに非難するようになったのは2011年の出来事がきっかけだったとはいえ、それ以前にはまったく問題視していなかったわけではなく、日本による植民地支配に関する“恨”は根強い。

 たとえば、1999年8月17日付産経新聞は、韓国の新聞各紙が、終戦記念日の8月15日に、靖国神社で旧軍人らが軍服姿に旭日旗を掲げている写真を掲載し、閣僚・政治家の参拝を批判した、と報じた。旭日旗がかつての軍国主義の象徴として使われている一例と言えよう。また、2001年8月9日付の同紙は、韓国のバンドが日本で行われたロックフェスティバルのステージで、歴史教科書の記述をめぐる問題に抗議して、旭日旗を引き裂いたと伝えている。

 また、旭日旗が日本の軍国主義の象徴として扱われるのは、韓国だけでもない。日中戦争で多くの犠牲者を出した中国でも、旭日旗は侵略の象徴として受け止められている。

 2001年に、人気女優の趙薇(ヴィッキー・チャオ)が、黒地に旭日旗をあしらった服を着た写真がファッション誌に掲載された時には、その情報がネットで瞬く間に広がった。彼女は「国賊」などと激しい非難にさらされ、女優生命の危機に瀕して謝罪。それでもなお、リサイタルの最中に暴漢に襲われる事件まで起きている。

 また、2006年の終戦記念日に小泉純一郎首相(当時)が靖国神社に参拝した時には、中国で激しい抗議運動が起こり、そこでは小泉首相の写真と共に旭日旗が燃やされた。

 2008年の北京オリンピックの際には、現地の日本大使館は、日本人の観客に旭日旗を持ち込まないよう呼びかけた。これは、旭日旗が中国の人たちの感情を害し、トラブルを招く可能性があると、日本の当局も認識していたからだろう。

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