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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

インフルエンザ治療薬「ゾフルーザ」、医師の間から処方に警鐘も…耐性ウイルス発生の可能性

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
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「Getty Images」より

「例年より早いインフルエンザ流行」というニュースを、多くのメディアが伝えている。日本でのインフルエンザ流行のピークは例年1~2月だったが、今年はすでに9月の時点でインフルエンザ感染拡大の兆しがあり、話題となっていた。実は、インフルエンザは通年で感染する可能性があり、春や夏に感染することもある。しかしながら、春や夏にはインフルエンザが爆発的に感染拡大する可能性が低い。

 また、日本と海外とではインフルエンザが流行する季節が異なる国もあり、インフルエンザに罹患している渡航者が日本で感染を広げた可能性も考えられる。ラグビーワールドカップ開催に伴い、海外から日本への渡航者は40万人を超えるといわれる。グローバル化が進む日本は、ウィルス等の感染予防対策も必要だろう。同時にインフルエンザ治療についても国民に正しくアナウンスすべきだ。

インフルエンザ治療薬は日本スタンダード

 日本で2001年に発売されたインフルエンザ治療薬「タミフル」は、日本におけるインフルエンザ治療を大きく変えた。冬に高熱が出ればインフルエンザを疑い、検査を行う。そして陽性ならば、タミフルなどのインフルエンザ治療薬を投与する。多くの日本人は、この流れに疑問を抱いていないようだが、これはあくまで日本スタンダードだと言っていいだろう。日本ではインフルエンンザを異常に怖がる傾向にあるが、海外ではインフルエンザにかかってもインフルエンザ治療薬を服用する人は少ない。なぜなら、普段健康な人がインフルエンザにかかった場合、自然治癒でも5日程度で回復するからだ。

 昨年には、新薬「ゾフルーザ」が1回の服用で治療できるという利便性が話題となり、インフルエンザ治療薬の年間売り上げで1位となった。

 また、2018~19年のインフルエンザ治療薬の医療機関への供給量を見ても、ゾフルーザが大きなシェアを確保していることがわかる。

 ゾフルーザを販売する塩野義製薬は今年度、前年度比6.5%増の280億円の販売を計画しているというが、ゾフルーザの処方については「慎重になるべきだ」と警鐘を鳴らす意見もある。

新薬を使う危険

 ゾフルーザについて、神戸大学感染症内科の岩田健太郎教授に話を聞いた。

「そもそも、新薬には手を出してはダメ。新薬は臨床試験の第三相試験の段階で、何百人か集めて有害事象がないかをテストするわけですが、その何百人がどういった人かというと、多くの場合、健康で、タバコや酒の嗜好がない、医師の指示を守る、きちんと外来を受診してフォローもできる人たちです。しかし、一般の患者さんは、言うことを聞かなかったり、臓器障害があったり、合併症があったり、タバコも酒も飲むという、臨床試験に参加できないような条件を持つケースもあるわけです。臨床試験のデータが一般の患者さんに当てはまるとは限らないんですよ」(岩田教授)

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岩田教授

 新薬の安全性は、臨床試験の結果だけで判断されるが、臨床試験のデータがすべての人に当てはまるとは限らず、臨床試験を受けた被験者と異なる条件を持つ人が新薬を使用すれば、予期せぬ副作用が出る可能性がある。ゾフルーザは、1回の服用で治療でき、コンプライアンス(服薬遵守)が良好であることが利点とも言われたが、岩田教授はその点こそ大きな危険をはらむと話す。

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。福島県立医科大学薬理学講座助手、福島県公立岩瀬病院薬剤部、医療法人寿会で病院勤務後、現在は薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

吉澤恵理公式ブログ

Instagram:@medical_journalist_erie

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