
10月1日の消費税率引き上げと同時に、鳴り物入りでスタートしたキャッシュレス還元制度。政府の発表によると、1~7日までの1週間に還元されたポイントは、1日平均約8億2000万円相当に上るという。
このままのペースでいくと予算額を使い切るのではという声もあるようだが、それはどうだろう。スタートダッシュの勢いはあるが、毎日そこまで買い物はできない。とはいえ、冬のボーナスや年末年始商戦、外食では忘年会・新年会あたりでひと盛り上がりはくるだろう。
今回のキャッシュレス還元事業の対象外である大手家電量販店や大手デパート・流通各社も、やはり別立てのポイント還元策や決済事業者のキャンペーンに乗って、消費熱を煽っている。来年6月までに、どれほどの消費額が積み上がることだろうか。
とはいえ、今はキャッシュレスを語りたいわけではない。なぜ、我々がこの施策によって素直に買い物をしてしまうのか。その仕組みを知り、本来は必要なかった買い物を防ぐための提案をしたい。
そのキーワードとなるのが、「フレーミング効果」というものだ。簡単に言えば、同じことを示していても、表現の違いによって異なる印象を与えられる効果のことである。
たとえば、こんな具合だ。婚活パーティーの参加者募集で「実績では参加者の約4割がカップル成立!」と聞けば、まずまずと感じる。しかし、「6割の参加者は相手を見つけられなかった」と言われたらどうだろう。表現している事象は同じなのだが、受ける印象はまるで違う。
おなじみの100円ショップも、フレーミング効果をうまく利用していると言える。「すべて100円!」と聞けば、どの品も安いという印象を持つが、実際には割高だったり、ほかの業態なら100円以下で買えたりする物も紛れている。しかし、「100円均一」というフレームでひとくくりにされると、すべてが安いだろうと錯覚してしまうのだ。
「ポイント失効前に駆け込み消費」の罠
このフレーミング効果は、「ポイント」でも効果的に利用されている。日本人はポイント好きと言われ、常になんらかのポイントを貯めている。そして、それが失効するのが、とにかく苦痛なのだ。
覚えのある人も多いだろうが、手元に期間限定ポイントがあるとしよう。「もうすぐ期限が切れるポイントが150ポイントあります」と言われると、それを無視できる強心臓の持ち主はなかなかいない。手元のポイントが失効する前に、あわてて何か買おうと考える。しかし、有効期限まで時間がないので、熟考している余裕はない。150ポイントを消費できればいいので、特に必要がないものでも飛びついてしまうのだ。その気持ちは実によくわかる。
しかし、ここで考えるべきなのは、150ポイントとはどんな価値なのかということだ。賢明な読者はお気づきだろう。これは、現金相当額の表現をポイントに変えただけだ。150ポイントというともったいない気がするが、これが1ポイント1円相当だとすれば、実質150円となる。はした金とまでは言わないが、「150ポイント」と言われるより「150円」と認識したほうが、冷静に損得判断ができるのではないだろうか。
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