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藤和彦「日本と世界の先を読む」

中国発コロナウイルス肺炎患者、日本でも確認…SARS以上の猛威の可能性も

文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員
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中国で原因不明の肺炎拡大 各国で警戒(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

 1月15日、中国の湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の国内初患者が確認され、衝撃が走った。最初の症例が確認されたのは昨年12月12日であり、中国国内で深刻な感染拡大が生じていないにもかかわらず、たった1カ月で日本にそのウイルスが持ち込まれたからである。

 さらに深刻なのは、この患者が日本に戻ってから感染が確認されるまで9日間も要してしまったことである。感染が確認されたのは神奈川県に住む中国人の30代男性である。解熱剤を使用していたことから、常時サーモグラフィーを使って入国者の体温をチェックしている空港の検疫所で異常が確認できなかったという。

 コロナウイルスは風邪を引き起こす代表的なウイルスの一つで、主に呼吸器や腸に影響を及ぼすものである。今回の事例を踏まえ国立感染症研究所は15日から「肺炎の症状があれば重症でなくても保健所に相談する」ことを求めるようになったが、今回の新型コロナウイルスは一部で重症例を引き起こすものの、通常の肺炎と症状が大きく違わない。折悪しくも季節性のインフルエンザの流行期となりつつあり、医療現場の識別作業は大きな困難を伴うのではないだろうか。

 中国当局が12日に新型コロナウイルスの遺伝子配列情報を世界に公開したことで、17年前に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)との類似性が明らかになっている。SARSはコウモリのコロナウイルスが人に感染して重症肺炎を引き起こすようになったとされている。世界30カ国以上に感染が拡大、感染者数は8096人、そのうち774人が死亡した。致死率(感染して病気になった場合に死亡する確率)は約10%。人から人への感染は咳やくしゃみの飛沫を介して起こり、感染者のなかには1人で十数人に感染を広げる「スーパースプレッダー」が出現して話題を呼んだ。死者の多くは高齢者だった。

 新型コロナウイルスの流行はSARSにとどまらない。2012年から中東地域を中心にMERS(中東呼吸器症候群)が流行した。ヒトコブラクダのコロナウイルスが人に感染したことがその要因とされている。SARSのように市中で人から人への持続的な感染拡大は生じなかったが、世界全体で2468人が感染し851人が死亡した。致死率は約34%だが、サウジアラビアには抗体を有する者が多数いたことから、実際の致死率はそれほど高くないとする説がある。死者の多くはSARSの場合と同様に高齢者だった。SARSやMERSのケースでは、日本で患者が発生することはなかった。

警戒レベル引き上げも検討すべき

 今回の新型コロナウイルスに話を戻すと、中国では感染源とされる海鮮市場が1月1日に閉鎖され、3日以降新たに患者が出ていないとされている。海鮮市場では魚類以外にコウモリ、モルモットなどの野生動物が売買されていたことから、市場で売られていたコウモリから感染したとの説が有力である。