ビジネスジャーナル > 政治・行政ニュース > 7月からレジ袋完全有料化
NEW

7月からレジ袋完全有料化…安倍政権の「消費増税+キャッシュレス推進」で個人商店廃業

文=小川裕夫/フリーランスライター
7月からレジ袋完全有料化…安倍政権の「消費増税+キャッシュレス推進」で個人商店廃業の画像1
「Getty Images」より

 今般、環境意識の高まりから脱石油の動きが加速している。自動車の燃料となるガソリンや石油火力発電といったものだけではなく、ファミリーレストランやカフェのプラスチック製ストローにも及ぶ。矛先を向けられたプラ製ストローは官民一体での取り組みが奏功し、早くも使用取りやめが広がり、紙製ストローへと切り替えられている。

 自動車や発電をはじめ、私たちの身の回りには石油に依存している製品がたくさんある。プラ製ストローもそのひとつだが、目下、次の脱石油のターゲットにされて削減が進められているのが、買い物の際にスーパーやコンビニエンスストアで無料配布されるレジ袋だ。

 これまでにも脱レジ袋は、あらゆるシーンで取り組まれてきた。中央省庁だけではなく、地方自治体も積極的に脱レジ袋を推進してきた。環境団体やNPOなどでもマイバッグなどを配布し、レジ袋削減はまさに官民が一丸になって取り組む環境政策でもあった。しかし、スーパーやコンビニといった小売・流通業界からの反対は根強く、レジ袋の削減は順調に進んでいるとはいいがたい状況だった。

 全国的に見れば、レジ袋の削減はあまり進んでいないが、それでも熱心な地方自治体はある。そのひとつが、東京都杉並区だ。2002年、杉並区はレジ袋に対して課税するレジ袋税を独自に制定したが、同区の条例によるものなので区内でしか適用されない。今般、東京23区在住者は通勤・通学の途中で買い物を済ませてしまうことも珍しくない。いくら杉並区がレジ袋税を制定して削減に努めても、隣の区で買い物をされたら削減効果はない。

 そのため杉並区は課税によるレジ袋削減から意識啓発による削減へと方針を転換した。区職員は、こう話す。

「レジ袋税の制定には、区内外問わず大きな反響がありました。杉並区の場合、レジ袋1枚に対して5円を課税するというかたちで、税率でみれば消費税とは比較にならないレベルの重税です。そうした重税感もさることながら、政府がレジ袋有料化を検討していること、また区内でのレジ袋削減の啓発運動も活発化してきたことも踏まえて、レジ袋税は施行されないままになりました」

ゴミ削減という目的が骨抜き

 それから10年たち、政府は重い腰をあげる。環境省と経済産業省がレジ袋の有料化を検討し始めたのだ。そして、20年7月からレジ袋の有料化がスタートする。レジ袋税とレジ袋有料化、どちらもレジ袋に対して消費者が金銭的な負担を負わされることに違いはないが、税と有料化ではまったく意味合いが異なる。税ならば事業者が税率にあわせて税金を政府に納めなければならず、店舗側の裁量でレジ袋の金額を決めることができず、割引や無料サービスを行うことは難しい。

 一方、有料化の場合は事業者がレジ袋の売価を決定する権限を持つ。そのため、スーパーやコンビニごとにレジ袋の価格が異なり、「いずれレジ袋の価格競争・サービス競争が起きてしまい、レジ袋削減にはつながらない」という見方も出ている。要するに、レジ袋有料化は大義名分ばかりが立派で、その内実は面倒なルールが増えただけで終わる可能性が高いのだ。

 また、今回のレジ袋有料化では、環境負荷の少ないバイオマスプラスチックや海洋生分解性プラスチック製のレジ袋は有料化の対象外とされる。これだけを見ても、ゴミ削減といった目的が早くも骨抜きになる。

 国の動きを先取りしてレジ袋の有料化を始めた事業者もある。大手レンタルチェーンのTSUTAYAは19年10月1日から、ユニクロやGUも20年1月からレジ袋を有料化したほか、大手スーパーなどもこぞって始めている。

レジ袋の有料化がもたらす弊害

 その一方、レジ袋の有料化がもたらす弊害は見過ごせない。今般、アマゾンをはじめとするネット通販はリアル店舗の売上を凌駕するほどの大きな存在になっている。レジ袋有料化が定着すれば、消費者には袋持参という面倒な手間が課されるため、面倒がないネット通販で買い物を済ませてしまおうと考える消費者が一気に増加する可能性が指摘されているのだ。街の個人商店と密接な関係を持つ地方自治体の商工課などでは、有料化を機に多くの消費者がネット通販に流れて商店街の“シャッター街化”が加速すると懸念されている。

「現在でも個人商店はショッピングモールやコンビニに客を取られている状態です。消費税10パーセント、キャッシュレスの推進といった個人商店では手が回らないことが多いなかで、今度はレジ袋の有料化。こんなに負担が増えたら、もう個人商店は立ち行かないでしょう。あちこちから困惑の声を聞きます」

 環境問題に効果があるとされるレジ袋有料化だが、その内容は骨抜き。さらに個人商店を廃業に追い込み、大手コンビニなどにも打撃を与える懸念がある。アマゾンや楽天などのネット通販に小売業が淘汰される未来が現実に迫っている。

(文=小川裕夫/フリーランスライター)

小川裕夫/フリーライター

小川裕夫/フリーライター

行政誌編集者を経てフリーランスに。都市計画や鉄道などを専門分野として取材執筆。著書に『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)、『私鉄特急の謎』(イースト新書Q)、『封印された東京の謎』(彩図社)、『東京王』(ぶんか社)など。

Twitter:@ogawahiro

7月からレジ袋完全有料化…安倍政権の「消費増税+キャッシュレス推進」で個人商店廃業のページです。ビジネスジャーナルは、政治・行政、, , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!