楽天・三木谷社長、NHK『プロフェッショナル』が“独裁者・超ワンマン”だと話題に

楽天の三木谷浩史社長(撮影=編集部)

 2月末、ネット上で「三木谷」がトレンドワードになっていた。NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀 逆風下の“問題児”~実業家・三木谷浩史~』の放送によるものだ。

 番組へのネットでの反応は、

「三木谷社長がプロフェッショナルに出ていて、スピード感を大切にしていることは非常に共感できました。人の出会いも大切にしていることについても見習わなければいけない」

「日本発のサービスとして、GAFAに対抗するために戦ってるんだろな、と。そのための英語公用語。本気でグローバルを狙ってる数少ない企業」

「問題児っていうより類型的な独裁者」

「この人過去の成功にしがみつき過ぎで、足元何も見えてない過去の人ですね。なんだかガッカリした」

と賛否両論だ。

 楽天株式会社の創業者で代表取締役会長兼社長、三木谷に密着したこの番組。始まってすぐに言及されるのが、いつも黒ずくめの彼のファッション。それは4つほどのパターンで20枚ほどあると、本人が説明する。

 ベンチャー企業のサクセスストーリーに興味のある者なら、いつも黒のタートルネックとジーンズというスタイルで通した、スティーブ・ジョブズを思い起こすだろう。着る服を決めるのに時間を取られたくないという考えにより、アップルの新商品発表の場だけでなく、普段の生活でも同じスタイルだった。

 同様の考え方をする人はほかにもいる。フェイスブックのCEO、マーク・ザッカーバーグが公開したクローゼットには、同じグレーのTシャツとパーカーが並んでいた。これは今、「究極の普通」を意味するノームコアスタイルと呼ばれている。GAFAを意識する三木谷がこれを踏襲するのは当然だろう。

 カメラが追う三木谷の日常は、ヨーグルトだけの朝食や会議を兼ねたランチ、世界を股にかけたハードなスケジュールなど、ベンチャーからのし上がった経営者ならそうであろう「究極の普通」が続く。

 そしてお決まりのように登場するのが、現場主義だ。携帯電話の基地局の設置が遅れているのにいらだった三木谷は、設置現場のマンション屋上に行く。管理マニュアルを作るのに大量に写真を撮っているのがわかると、「全部ビデオでずーっとこうやって撮ったらさ終わりなんじゃないの」と言って、動画で撮ることを提案する。現場スタッフは「斬新なアイディア」と口にするものの、釈然としない表情だ。

 ホンダの創業者、本田宗一郎や京セラ・第二電電(現・KDDI)の創業者、稲盛和夫の現場主義は、客の目線に立つことだった。三木谷がやっていることは、単なる思いつきを現場に押しつけているように見える。

 番組を見ていても、これで問題が解決したのかはわからない。後日の社員ミーティングで三木谷が語ったのは、「大義名分 品性高潔 用意周到 信念不抜 一致団結」という精神論。聞いている社員たちは、腑に落ちない表情を浮かべている。

 会議で必要な資料の配付が終わっていないことを知ると、弁明する部下に「今すぐ一緒に配ってこいよ」と言いつける場面もあった。部下は走って行くが、一緒に走って行って自らも資料の配付を行うのが、本当の現場主義ではないだろうか。

 ヤフーとLINEの経営統合のニュースについて聞かれると、「ちょっと待って」と言ってうつむく姿をカメラは捉える。結局のところ、答えは「あんまり関係ない」「よくわからないです」「とりあえずノーコメントです」とはぐらかした結果、「他人がどう言おうと自分たちがやりたいことをやればいいので」と突き放した答えに至る。「それは今まで聞いた中で最も三木谷らしい言葉」とナレーションが入るのだが、それが強烈な皮肉に聞こえたのは筆者だけだろうか。

嘘偽りがない“素の三木谷さん”

 楽天関係者は語る。

「“素の三木谷さん”の様子が映し出されていたという意味では、嘘偽りがなく正直で良いと思いますが、あからさまに三木谷さんのワンマンぶりがテレビで晒されていたので、『会社と三木谷さんにとって、なんのメリットがあったんだろう』『逆効果だよね』という声も社内では多いです。少なくとも、あの番組を観て『楽天に入りたい』『三木谷さんの下で働きたい』と考える人はいないでしょうから。ただ、密着取材でもまったく“いい人”ぶったりせず、悪い印象を与えそうな部分もカットさせずに自由に放送させたという意味では、やっぱり器の大きい方なのかなとも感じました。常に事業のことで頭がいっぱいの三木谷さんにとっては、そういう細かいことはどうでもいいのかもしれません」

 また、別の楽天関係者は語る。

「いい意味でも悪い意味でも、ウチはなんでも三木谷さんと幹部のトップダウンで決まります。そういう体質を嫌がる人も一定数いるので、ウチである程度の期間、経験を積んで、グーグルとかヤフーなどイメージが良さげな競合他社に転職するケースは多いですよ。その逆のケースは、あまり聞いたことがないですが。ただ、ウチと同じく創業社長がトップに立つユニクロもソフトバンクもワンマン体質だと聞くので、ゼロから大企業にのし上がるような企業は、そういう面が必要なんですよ」

 どういった制作意図なのか。三木谷の嫌な部分ばかりを見せつけられる番組だった。楽天では月曜の朝、社員自ら掃除するという。自分のデスクやその周りを、自ら掃除する三木谷の映像は好感の持てるシーンであった。

深笛義也/ライター

1959年東京生まれ。横浜市内で育つ。10代後半から20代後半まで、現地に居住するなどして、成田空港反対闘争を支援。30代からライターになる。ノンフィクションも多数執筆している。

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