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木下隆之「クルマ激辛定食」

トヨタ・新型ヤリスのガソリン仕様車を試乗してみた…小ささにこだわる真の理由とは?

文=木下隆之/レーシングドライバー
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トヨタ自動車・新型「ヤリス」

 トヨタ自動車「ヤリス」は、2020年で一気に注目されているモデルのひとつであることに間違いない。軽量コンパクトハッチバックは、トヨタの主力車種であることから、開発段階から気合いが入っている。時を同じくして本田技研工業(ホンダ)が「フィット」をリリースした。直接対決となる最大のライバルと横並びである。このジャンルのシェア争いは、絶対に負けなれない決戦でもある。おのずと完成度も高い。

 筆者は、すでにプロトタイプをサーキット試乗している。そこでの印象は3月13日付本連載記事『ホンダ新型「フィット」、バカ売れの予感…斜陽の小型車に注力、驚異的な心地よさを実現』にて報告済みだ。だが、今回は幸運にも、生産車となったヤリスを公道でドライブする機会を得た。また異なるインプレッションとなる。試乗車はガソリンエンジン仕様である。

 最初に確認しておかなければならないのは、そのディメンションであろう。新型ヤリスは、トヨタの最新プラットフォームであるTNGAを採用している。それにより低重心ワイドスタンスが実現している。骨組みが評判の高いプラットフォームというだけで走りへの期待が高まる。

 意外なのは、ボディがコンパクトになったことだ。フルモデルチェンジするごとにボディは肥大化し、車格感が増すのは新型モデルの常だが、今回はレアケースである。先代の「ヴィッツ(日本名)」と比較して、全長は5mm短縮、全高は30mmも低くなっている。“低く短く”がコンセプトなのだ。

 ただ、ドライバーシートに腰掛けてみると、それほど窮屈感がないのが不思議である。それにもカラクリがある。全高を低くしていながら、シートのヒップポイントを21mm下げている。それによって、懸念された頭上の空間が確保されることになった。むしろ、前に投げ出すような自然なドライビングポジョンが得られるのだ。コンパクトなハッチバックが抱えていた、オルガンを弾くような背筋をピンと伸ばさずにすむ。ホイールベースも40mm長い。室内長は延長してされているはずである。

 ただし、後席はさすがに狭い。法規的な最大乗車定員は5名だが、近距離の移動にとどめたくなる。前席のシート下に空間を持たせるなどして、後席の乗員の足元への配慮も散見できるが、大人ならば2名での移動、もしくは子供を乗せての4名乗車が現実的だろう。

 ともあれ、新型ヤリスはコンパクトであることを、むしろ武器にしている。取材したなかで、開発責任者がたびたび口にしたのが、「小ささへのこだわり」である。最近の肥大化するクルマへのアンチテーゼのように、小ささのメリットを意識しているように感じた。それは日本の道には合っている。

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 噂によれば、ヤリスのロングホイールペースモデルも準備されているという。真偽は定かではないが、そのモデルとの差別化を意識しているのかもしれない。そうだとすれば、合点がいく。ヤリスラインナップが出揃ったときこそ、完璧な構成となるのだろうと想像した。

 今回の試乗車に搭載されていたガソリンエンジンは、直列3気筒の1.5リッターだ。最大出力は120ps。数字的には非力だが、車重が1トンを超えるあたりということを考えれば、常識的な走りに終始する。3気筒ゆえに振動やサウンドががさつなのは致し方ないところなのかもしれない。ただ、CVTと組み合わされていながらも緩慢なラバーフィールは抑えられており、自然な走り味である。

 おそらく、3気筒にしたのは燃費効率を求めたことと無縁ではあるまい。実際に、実践に即したWLTCモードへ並々ならぬこだわりを見せている。燃費性能を優先したからの3気筒選択なのかと想像した。

 ちなみに、ホンダ・フィットは4気筒である。対比が興味深い。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

●木下隆之
プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

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