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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

新型コロナ、医療崩壊危機…感染疑い患者の診察を拒否する病院も

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
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「Getty Images」より

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け4月1日、日本医師会の横倉義武会長は、新型コロナウイルスに感染した患者の受け入れ病床が不足することを懸念し、「医療危機的状況宣言」を発表。国民に感染防止への協力を呼び掛けた。

 この日本医師会の発言が政府に方針転換を促したのか、3日の閣議後の記者会見で加藤勝信厚生労働相は「無症状や軽症の感染者を自宅やホテルなどで療養させる方針」を示した。また、すでに都道府県などへの通知も終えていることも明らかにした。

 しかし、こういった一連の報道に、どれほどの人が危機感を持っているだろうか。「医療崩壊」という言葉から「感染者の受け入れや治療ができなくなる」という状況は想像されるだろうが、実はもうひとつの側面があることも理解してほしい。

感染症病床

 感染症患者の受け入れは、感染症病床を備える医療機関しか行うことができない。2019年4月公表の病床数合計は5373床である。4月6日正午時点での国内の感染者数は3654人。医療崩壊は目前ともいえる。感染拡大を阻止することは、医療崩壊を阻止することに直結することを再認識してほしい。

 中国・武漢では今年1月、軽症者や感染疑いの方もすべて医療機関に押し寄せ、パニックに陥った。中国の情勢に詳しい健康ビジネスインフォ代表取締役で薬学博士の鄭権氏は、次のように話す。

「重症者は病院で入院して治療を行いましたが、一方で軽症者の隔離を徹底していました。当初、検査キットが足りなかったので疑い例や接触者は検査できず、まず隔離する方針でした。その患者数は非常に多く、隔離の場所では病床も足りず自宅やホテルを使っていました。

 その後、簡易病院を早いスピードでつくり、軽症者を受け入れました。また、検査キットが十分に供給され、感染が疑われたら全員検査を行いました。しかも、疑いがあった場合、陰性であっても最低2回以上検査するようになりました。つまり、問題ないと確信しない限りは隔離を徹底したのです」

 軽症者を医療機関以外で受け入れることで医療崩壊を立て直した武漢は、さらに封鎖という措置が功を奏し、感染拡大を収束することができた。

 日本も軽症者は医療機関以外で隔離という方針に変えたが、医療崩壊を免れるにはさらに都市封鎖が必要なのかもしれない。

もうひとつの医療崩壊

 医療機関では、職員に感染者が出れば即、診療停止となるため、職員の健康チェックを厳しく行っている。メディアド代表取締役で精神科医の高木希奈医師は、「すべての職員は1日に3回、体温測定をします。37.5度以上の発熱があれば、出勤停止です。また、感染拡大の状況を考え夜間外出の自粛、5月末まで海外渡航は一切禁止となっています」と言い、職員への厳しい管理はもちろんだが、患者の受け入れにも変化があるという。

「入館者全員に検温と消毒を実施し、熱発者、1カ月以内の海外渡航歴のある方、2週間以内の生活実態が明らかでない方の初診や新規の入院は受けないことになっています」

 精神科という本来の診療目的からすれば、発熱患者を断ることは致し方ないといえるだろう。

 しかし、こういった対処は風邪で受診するような内科クリニックでも行っているところもある。ある内科医師は、感染疑いのある患者の受け入れを拒否せざるを得ない事情を明かす。

「うちのクリニックは、新型コロナに感染疑いのある患者さんは診察しません。HPでも『検査はできません』と明記しています。しかし、誰にでも感染の可能性があるので、現在は発熱患者の診察をお断りしています」

 こういった対策を行うクリニックは多く、従来から通っている患者の診察を守るための策ともいえる。

 しかしながら、これまで当然のように受けられていた医療が受けられない現実は、もうひとつの医療崩壊といえるだろう。

 外出自粛要請が続き疲弊する人も多いと思うが、医療崩壊となればオーバーシュート(爆発的な感染拡大)も容易に訪れ、我々の生活は混乱をきたす。この1~2週間が勝負である。国民一丸となって自粛に努める時だ。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

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吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

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