
朝鮮半島では南北関係が急速に悪化している。韓国で活動する脱北者団体が北朝鮮に向けて飛ばした金正恩体制を批判するビラや救援物資を吊るした風船に猛反発した北朝鮮は、開城にある南北共同連絡事務所を爆破するという強硬手段に打って出た。さらには、韓国との国境線における軍の配備や訓練の再開を始めるとも宣言。
これは周辺国にとっては由々しい事態である。日本政府は「重大な関心を持って、情報収集、分析に努めている」と、菅官房長官が答弁するのが精一杯で、北朝鮮の暴発を防ぐ秘策などは期待できそうにない。しかし、南北朝鮮の軍事的緊張が高まる背後では、まったく別の危機が迫っている。
何かといえば、中国、ロシア、北朝鮮の国境地帯における巨大な火山噴火の可能性である。それは黒龍江省に位置する「五大連池火山帯」を構成する尾(ウェイ)山の地下にある2つの巨大なマグマの活動が活発化していることだ。
そこで中国の地球物理学の専門家チームが現地で100カ所以上の調査を繰り返すことになった。そして、地下8キロと15キロの2カ所でマグマの膨張が確認されたのである。高度なセンサーを使い、地下の深層部における地殻変動の異常現象をつぶさに研究した結果、「このまま地殻変動が続けば、巨大噴火につながる可能性が高い」との結論に至ったという。
実は、地震学者や地球物理学者の間では、尾山の南に位置する朝鮮半島の最高峰、白頭山の噴火活動の可能性のほうに関心が集中していた。白頭山は946年と947年に大爆発を起こしており、「人類史上最大の噴火」として記録されている。半島南部は1メートルの火山灰で覆われ、日本にも大量の火山灰が飛来し、農業は壊滅的な被害を受けた。
白頭山の噴火の予兆は近年、頻繁に確認されるようになっており、中国の主導の下、北朝鮮も韓国も、その監視には共同戦線を張ってきた。日本政府も気象衛星を飛ばし、空からその動きを追っている。ところが、今回の中国科学技術大学の調査チームの分析で、白頭山と尾山が地下で連動している可能性が判明したのである。
これまで白頭山は小規模な噴火と大噴火を交互に繰り返してきた。最も直近の小規模噴火は1903年だった。そのため、北朝鮮も韓国も警戒態勢を強化していたわけだが、そこに新たに尾山の噴火の可能性が出てきたのである。中国や北朝鮮が繰り返してきた地下核実験の影響も否定できない。
いずれにせよ、2つの火山は地下でつながっており、両方が同時に噴火することになれば、朝鮮半島はいうに及ばず、日本列島も数時間で大量の火山灰に覆われることは避けられないだろう。中国の研究者は「いつ大噴火が発生してもおかしくない。監視体制を強化し、避難準備も万全を期すべきだ」との警告を発している。
韓国地球科学鉱物研究所では今後4年間にわたり、16億ウォンの調査費を投入し、火山活動の監視を続けると発表。北朝鮮との共同研究を行う予定である。韓国では人気俳優イ・ビョンホンとハ・ジョンウが夢の共演を果たしたことでも話題となった災害スパイ映画『白頭山』が2019年末に公開され、国民の関心も高まっているようだ。