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輸入トウモロコシ、発がん性のアフラトキシンB1検出…飼料にする牛の乳からも毒性検出

文=小倉正行/フリーライター
輸入トウモロコシ、発がん性のアフラトキシンB1検出…飼料にする牛の乳からも毒性検出の画像1
「gettyimages」より

 8月5日に農林水産省は、令和元年の食料自給率が前年の37%から1ポイント上がって38%になったと発表した。農林水産省はその理由として「小麦の単収が増加したこと等」を挙げており、それは食料自給率向上に向けた構造的変化があったわけではなく、単に、主に小麦の生産地帯である北海道の天候が良かったというだけの一時的な現象といえる。

 では、日本の食の実態はどうなっているのか。

 小麦についてみると、小麦製品(パン、麺、菓子、味噌、醤油など)の需要量の9割が輸入小麦に依存していて、輸入量533万トンで小麦自給率は14%(2018年)となっている。ラーメンの麺はすべてオーストラリア産小麦プライムハード、うどんの麺もオーストラリア産小麦ASW、パスタ麺はカナダ産小麦デュラム、ケーキや焼き菓子や和菓子向けはアメリカ産小麦ウェスタン・ホワイトやオーストラリア産小麦ASW、食パンはカナダ産小麦CWやアメリカ産小麦となっている。

 ラーメン屋でラーメンを食べると、麺はオーストラリア産、焼き豚は米国産、ネギやシナチクは中国産で、国産はラーメンスープの水だけというありさまである。私たちはどっぷりと輸入小麦に浸かって食生活を営んでいることになる。

 そして、輸入小麦を原料としている食パンからもれなく、15年3月に国際がん研究機関(IARC)によって「ヒトに対しておそらく発がん性がある」と結論づけられた発がん物質グリホサートが検出され、消費者に衝撃を与えている。

 牛肉の輸入量は、2012年50万5000トンから19年には61万6000トン(121%)に急増。一方、日本の牛肉の生産量は、13年の50万6000トンから17年の47万1000トン(93%)に減少。輸入量は増えて生産量は減少している。

 豚肉の輸入量は、12年の108万5000トンから19年の136万8000トン(126%)と急増。一方、豚肉の生産量は13年の131万1000トンから17年の127万2000トン(97%)に減少。ここでも輸入量は増えて、生産量は減少している。

輸入牛肉、合成ホルモン剤残留

 輸入牛肉と輸入豚肉には安全性上重大な問題がある。それは合成ホルモン剤が残留しているということである。今、世界的に合成ホルモン剤が残留している牛肉に対する輸入禁止措置が広がっている。EC(欧州共同体、現EU)は1989年からホルモン剤の残留している牛肉の輸入を禁止し、米国政府といわゆる「ホルモン戦争」を継続している。

 ロシアは、合成ホルモン剤が残留しているオーストラリア産牛肉の輸入を禁止した。また、中国政府は香港経由の合成ホルモン剤残留米国産牛肉の輸入を禁止し、それによって米国産牛肉の国際価格低下を招いているとされる。牛肉輸入を宗教上の理由で禁止しているインドを加えると、合成ホルモン剤残留牛肉が国内に流通していない国の人口合計は32億7942万人に上り、世界人口の45%にも及んでいる。

 こうした状況のなかで、先進国で最大の残留ホルモン剤汚染牛肉の輸入国が、日本になっている。日豪FTAでオーストラリア産牛肉の輸入量も増加している。さらに、TPP11や日米貿易協定では、牛肉関税がいっそう引き下げられ、日本国民は否応なしに合成ホルモン剤が残留した牛肉を消費させられている。

中国産頼みの冷蔵野菜と冷凍野菜

 生鮮野菜や冷蔵野菜、そして冷凍野菜の輸入依存も深刻である。2019年の生鮮野菜と冷凍野菜の輸入量は合わせて186万トン。日本の野菜生産量の15.89%におよぶ。生鮮および冷蔵野菜の輸入量は77万トンで、そのうち66%が中国産となっている。中国産の野菜は残留農薬違反が多発していることは周知の通りである。主な野菜の輸入量は以下の通り。

・ばれいしょ:3万1000トン、ほぼ100%が米国からの輸入

・玉ねぎ:28万トン、92%が中国産、玉ねぎの国内流通の25%が輸入玉ねぎ

・にんにく:2万2000トン、91%が中国産、国産品は1万4300トン(15年)

・ネギ:6万2000トン、99%が中国産、中国のネギ輸出の9割が日本向け

・ブロッコリー:9813トン、75%が米国産

・人参:8万2000トン、93%が中国産

・ごぼう:4万4000トン、97%が中国産、国産品は13万7000トン(16年)、32%が輸入ごぼう

・ジャンボピーマン:4万2000トン、83%が韓国産、韓国のジャンボピーマンの輸出のほとんどすべてが日本向け

 冷凍野菜の輸入量109万トンうち、中国と米国で74%を占める。冷凍ほうれん草5万トンのほとんどが中国産、台湾の冷凍枝豆3万1000トンはすべて日本向け。

 食用油の原料となっている大豆の自給率はわずか7%。339万トンの大豆を輸入し、その73.2%が米国からの輸入である。米国産大豆のほとんどが遺伝子組み換え大豆となっている。食用油は日本人が摂取するカロリーのなかでもウエイトが低くはない。その原料のほとんどを輸入に頼っているわけなので、カロリーベースの自給率が38%であることも当然である。

 飼料用のとうもろこしの輸入量は1163万トンで、その94%が米国からの輸入。飼料自給率は、わずか28%。輸入飼料を食べて国内の牛、豚、鳥は飼育されているため、カロリーベースで見た場合、輸入飼料で育った家畜は、自給率としてカウントされない。

 それだけではない。輸入トウモロコシは、自然界で最強の発がん物質ともいわれるアフラトキシンB1による汚染が常態化している。アフラトキシンB1によって汚染されたトウモロコシを飼料として飼育されている乳牛からは、アフラトキシンB1の毒性の10分の1の毒性を持っているアフラトキシンM1が乳から検出されていることが報告されている。

 このように、食料自給率が38%という現実は、日本人の健康を脅かしているのである。

小倉正行/フリーライター

小倉正行/フリーライター

1976 年、京都大学法学部卒、日本農業市場学会、日本科学者会議、各会員。国会議員秘書を経て現在フリーライター。食べ物通信編集顧問。農政ジャーナリストの会会員。
主な著書に、「よくわかる食品衛生法・WTO 協定・コーデックス食品規格一問一答」「輸入大国日本 変貌する食品検疫」「イラスト版これでわかる輸入食品の話」「これでわかる TPP 問題一問一答」(以上、合同出版)、「多角分析 食料輸入大国ニッポンの落とし穴」「放射能汚染から TPP までー食の安全はこう守る」(以上、新日本出版)、「輸入食品の真実 別冊宝島」「TPP は国を滅ぼす」(以上、宝島社)他、論文多数

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