
蚊は二酸化炭素で寄ってきてしまう
一緒にいる仲間のうち、なぜか自分だけ刺されるということがあります。実際、私はよく刺されます。自転車に乗って患者さん宅に薬を届ける道中で、必ずといっていいほど刺されます。
蚊がターゲットを探すときのポイントが二酸化炭素です。イギリスの民間科学団体「王立学会」の2017年5月の報告ですが、チューブ状の管の中に蚊が到達する時間を調べる研究があります。チューブ内の二酸化炭素濃度を変えて調べています。濃度を上げるとそれに比例して蚊の到達時間が早くなりました。また300ppm群と4800ppm群では有意差がありました。二酸化炭素が濃い環境では蚊が寄ってきてしまうということです。
大人と比べて子供は呼吸する回数が多いので、それだけ二酸化炭素を吐き出しています。また運動する習慣のある人は代謝がよいので、それだけ二酸化炭素を吐き出しています。また、蚊が寄ってくる原因は二酸化炭素以外に温度とにおいがあるといわれています。
蚊に刺されると免疫による攻撃が行われている
蚊に刺されると、皮膚が隆起して赤くなり、かゆみが出てきます。それが数時間続きます。隆起した部分が平らになり、ようやくかゆみが落ち着きます。蚊の雌は産卵するための栄養源としてヒトの血液を必要とします。蚊が血液を吸い取る時に蚊の唾液がヒトの血液に混入します。それが異物としてヒトの免疫系が反応します。この免疫ですが、30分以内に出てくる「即時型」と、1~2日後に出てくる「遅延型」というものがあります。即時型は機関銃による先制攻撃のようなものです。この攻撃は数時間続きます。これでこの異物が退治できれば終了です。
しかし、退治しきれないと“対策本部”が結成され敵の特徴の調査に取り掛かります。そして専用の部隊をつくり、特殊なミサイルを発射します。これが「遅延型」です。調査の時間がかかるので1~2日後に始まります。かゆみがぶり返すという症状は、この調査が終わり特殊なミサイルを撃ったということです。そして次に同じような敵が現れたときにこのミサイルが使えるようにするため、しっかり記録を取り残しておきます。
蚊の場合は即時型反応で大方は終了するのですが、遅延型へ移行することもあります。
かゆみ以外の二次被害が問題
「かゆいより痛いほうがマシ」と掻き壊す人が私の父以外にもいることでしょう。掻き壊すことで、皮膚が傷になりそこから細菌が入ってきます。普段の皮膚はしっかりバリアが正常に機能しているので、細菌が皮膚の上に乗っていても体内には入れないようになっています。ところが、傷になってしまうとバリアがないので簡単に細菌が体内に入ります。これで「感染」が成立します。細菌が血流にのり全身に回ります。皮膚はジュクジュク膿が出てきますし、全身の細菌たちを効率よく退治するために熱を上げます。