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さんきゅう倉田「税務調査の与太話」

なぜ税制度はわかりにくい?税務署でも間違う事例続出、一般人が正確に判別するなど不可能

文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人
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「Getty Images」より

 元国税局職員、さんきゅう倉田です。好きな小説の書き出しは「どっどど どどうど どどうど どどう 青色欠損金も吹きとばせ」です。

 今でこそ、2年前の売上が1000万円を超えていれば課税事業者となりますが、昔はその基準が3000万円でした。

 法人であれば1000万円を超えて当然ですが、フリーランスで1000万円を超えるのは大変です。仕入れのない取引であれば、ほとんどが1000万円以下。消費税とは無縁の世界で生きています。

 さて、1000万円でも3000万円でも、基準は所得ではなく売上です。正確には「課税売上」、つまり消費税を含めない本体の売上ですが、消費税の申告をしない免税事業者の場合はどうでしょう。

 課税事業者であれば、課税売上にかかる消費税から課税仕入れにかかる消費税を引いて、消費税を納めています。だから、取引先から受け取った売上代金を課税売上と消費税部分に分けることになります。

 しかし、免税事業者は消費税部分を納めません。売上としてもらうことができます。それでも、課税売上に含めないことができるのでしょうか。

 Aさんは、ある年の売上が3050万円でした。しかし、免税事業者だったので、課税売上は、売上の103分の100(当時の消費税率は3パーセント)である2964万円と考え、その2年後の消費税の申告と納付は行いませんでした。

 これに対し税務署が、103分の100にはならないとして更正処分をしたため、最高裁で争うこととなりました。つまり、消費税込で判断するのか、消費税抜で判断するのかが問題となったのです。

 Aさんはこう主張しました。

「課税事業者か免税事業者かにかかわらず、売上高から課されるべき消費税に相当する額を控除した金額をもって、免税事業者に当たるかどうかを判断するのが自然な解釈である」

 つまり、免税事業者だが、売上の中には消費税があるのだから、その分(3%)を控除した金額が3000万円を超えるか超えないかで判断すべきだ、と主張したのです。

 これについて、免税事業者にも「課されるべき消費税に相当する額」を観念すべきであるとの主張は根拠に乏しいなどとされ、Aさんは敗訴となりました。

 今では、免税事業者の売上から消費税分を控除できるかどうかで悩む人はいません。控除できなくて当たり前となっています。しかし、この裁判が始まった当時は、そうではなかったようです。

 通達では、免税事業者は「税込経理方式」をとるべきことを定め、<免税事業者の消費税の処理>の中で「これらの免税事業者が行う取引に係る消費税の額は……」としていて、免税事業者の取引にも消費税が課されることを前提としている様子がうかがえます。

 また、税務調査を行う税務署でも、Aさんと同じ処理を認める事例や、そのように指導する事例、研修会でそのように説明される事例があったようです。かなり昔のことなので、このあたりの真偽を確認することはできませんが、消費税を含むか含まないかという、シンプルな2択でも、意見が別れていました。これが税務の難しいところであり、楽しいところだと思います。

 この消費税の問題以上に複雑な法令は数多あり、意見が二分されることはよくあります。プロでも間違えるのに、一般人が正しい判断ができるわけがありません。しかし、税は身近なものです。税の簡易の原則に則って、わかりやすい法整備をする必要があると思います。

 先般の新型コロナウイルス対策として給付された、一律10万円の特別定額給付金に関するリーフレットの説明も複雑でした。専門的な知識がなくともあまねく制度の恩恵を受けられるようなルールづくりをすることは、できないようです。
(文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人)

●さんきゅう倉田
大学卒業後、国税専門官試験を受けて合格し国税庁職員として東京国税局に入庁。法人税の調査などを行った。退職後、NSC東京校に入学し、現在お笑い芸人として活躍中。2017年12月14日、処女作『元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話』(総合法令出版)が発売された。

「ぼくの国税局時代の知識と経験、芸人になってからの自己研鑽をこの1冊に詰めました。会社員が社会をサバイバルするために必須の知識のみを厳選。たのしく学べます」

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