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現役マネージャーが語る、芸能ニュース“裏のウラ”第34回

米倉涼子は独立後も前事務所にギャラを“献上”?続出するタレント独立とカネ勘定

文=芸能吉之助/芸能マネージャー

geinou  どうも、“X”という小さな芸能プロダクションでタレントのマネージャーをしている芸能吉之助と申します。

 今回は、相次ぐ芸能人の「独立」と、その際の“おカネの事情”について触れてみようと思います。

 剛力彩芽さん、城田優くん、少年隊の錦織一清さんと植草克秀さん……最近、大手芸能事務所を退所する芸能人のニュースが続いていますよね。そのなかでも特に「人材流出が止まらない!」と大きな話題になっているのが、剛力彩芽さんも所属していたオスカープロモーション。米倉涼子さん、忽那汐里さん、岡田結実さん、福田沙紀さん、堀田茜さん、森泉さんなど、この1年の間に数多くの人気タレントが事務所から退所しています。

 本連載の第22回でもお話ししたように、創業者である古賀誠一氏(現在は会長)が社長を退いたことで社内体制が大幅に変わり、それがきっかけでタレントやスタッフが離れているといわれていますが……。“オスカー帝国”が今後どうなっていくのか気になるところです。

【参照/第22回「当初は批判されたホリプロ、美人姉妹が担うナベプロ…世襲に成功した芸能プロの秘密」】

米倉涼子は独立後も前事務所にギャラを“献上”?続出するタレント独立とカネ勘定の画像1
女優の米倉涼子。2020年3月いっぱいでオスカープロモーションを退所したが、移籍前から続く仕事に関しては、独立後も同事務所とギャラを折半しているとの報道があった。

ナベプロから干された西島秀俊、バーニングから干された水野美紀

 そんなふうに最近増えている“芸能人の事務所独立・移籍”ですが、以前に比べてネガティブなイメージが払拭されてきたような気がします。過去には、大手芸能事務所から移籍した芸能人が、各メディアの忖度によって“干される”ことも少なからずあった。

 アイドル路線に反発して渡辺プロダクションから移籍した西島秀俊さんや、清純派として売り出そうとする事務所と意見が合わずバーニングプロダクションを飛び出した水野美紀さんが、その後数年、目立ったテレビドラマに出演できなかったというのは有名な話ですよね……。

 それが最近では、ジャニーズ事務所を退所する予定の長瀬智也くんに対しても「次は何をするのか?」と明るく期待する報道ばかりだし、3月にスターダストプロモーションを退社した柴咲コウさんも10月クールのドラマ『35歳の少女』(日本テレビ系)で主演を務めるなど絶好調。“干される”なんてブラックな気配は微塵たりとも感じられません。もちろん、揉めて退所したのか“円満退所”かにもよるので一概にはいえないわけですが、とはいえ、こうした大手事務所から独立するだけで大騒動になっていたひと昔前から考えれば、個人的には隔世の感がありますね……。

衝撃だった、公正取引委員会からジャニーズへの“注意”

 さて、こんなふうに事務所独立・移籍のイメージが変わってきたのは、ここ数年の芸能界の動きが関係しているのではないでしょうか。

 まずひとつは、2019年に公正取引委員会が大手芸能事務所に対して注意・指摘を行ったこと。具体的には、元SMAPの稲垣吾郎さん、草彅剛さん、香取慎吾さんに対してテレビ出演させないよう圧力をかけた疑いがあったとして、ジャニーズ事務所に注意を行ったこと。また、闇営業問題であらわになった吉本興業の“契約書なし”問題について、公正取引委員会の事務総長が指摘をしたことです。ここ数年、世間で注目されつつあった“芸能人の権利”が、より強く認識される方向に向かっているわけです。

 もうひとつは、YouTubeやSNSの発展で、芸能事務所を通して旧来型のメディアに出なくても、発信できる場が広がったこと。今年ブレイクしたYouTuberのフワちゃんのように事務所に所属しないまま自分で動画を作って発信できる子がどんどん出てきているし(彼女はもともとはナベプロ所属だったそうですが、ブレイク前にフリーになっています)、オリエンタルラジオの中田敦彦さん、佐藤健くん、本田翼ちゃん、手越祐也くんのように、芸能界からYouTubeに参入して成功しているタレントもたくさんいますからね。すでに人気があって、ある程度仕事をマネジメントしてくれる人さえ身近にいれば、「芸能事務所には所属せずにフリーでやればいいや」って思う人はどんどん増えるでしょうね。その分、ぼくら芸能事務所は、これから大変な時代に突入するかもしれませんが……。

米倉涼子は独立後も前事務所にギャラを“献上”?続出するタレント独立とカネ勘定の画像2
今年6月に、約14年間在籍した所属事務所・LIBERAから独立したローラ。“円満退所”したと報道されてはいるが……。(画像は8月25日投稿のローラ公式Instagramより)

米倉涼子は独立後も前事務所とギャラを折半?

 さてここからは、気になる“芸能事務所とタレントのおカネの取り分”についてお話ししていきます。

 芸能事務所を退所し独立した場合、所属中に事務所が取ってきた仕事に関しては、事務所に一定の割合でギャラをバックするのが慣例となっています。今年3月にオスカープロモーションを退所した米倉涼子さんの場合は、「独立後も継続する仕事のギャラは、ドラマは3割、CMは半分、前の事務所にバックする」と「週刊文春」(文藝春秋)などで報道されていましたが、だいたい相場はそんな感じでしょうね。

 今年6月に独立を発表したローラさんは、推定3億円を稼いでいたとみられる事務所在籍時の仕事をすべて引き継ぐという好条件で“円満退所”したと報道されていますが、これはかなり異例の好条件。まあ、ローラさんの場合は2017年に“奴隷契約”騒動を起こして事務所とかなりドロドロに揉めたこともあり、今回の“円満退社”はオモテ向きのことで、そこにいたるまでになんやかんやがあったはずですが……。

 米倉さんがオスカーに所属した当初は給料制でギャラが支払われていたそうですが、途中から歩合制に変更されたと報道されています。これはよくある話で、事務所に所属しているタレントの給料形態は、基本的に固定月給制か歩合制のどちらか。「CM仕事が決まったらボーナスをつけますよ」といったような固定月給+歩合のような形態も多いですね。

 事務所の規模にもよりますが、芸人さんは歩合制が多くて、タレントやアイドルは月給制であるケースが多いかな。デビューしたばかりの駆け出しのアイドルなんかは初めのうちは仕事の量が少ないので、特に地方出身の子なんかだと、月給制じゃないと暮らしていけない子が多いんです。で、その後だんだん売れてきたところで事務所と相談して歩合制に切り替えるというパターンが多い。その時のタレントと事務所の取り分が7:3なのか6:4なのか5:5なのか……というのは、その時の関係値によるんじゃないですかね。本当にケース・バイ・ケースです。

タレントは、カネの話をヘアメイクや共演者から情報収集する

 かなり売れているタレントでも、月給制のままの人もいます。以前、和田アキ子さんがテレビで自分が月給制であるとお話しされていましたけど、結局、大事なのはトータルでいくらもらえるかですからね。歩合と給料、年間でもらえる額にそんなに差がないのであれば、安定してギャラが支払われる月給制がいいと思う人もいますよね。

 デビューしたてのタレントの場合、新人の頃は無我夢中で仕事に取り組んでいるんだけど、少しずつ売れて人気が出てくるとおカネのことが気になり出すケースが多いですね。というのも、芸能界に馴染んでくると、仕事の現場でメイクさんや共演者と、けっこうおカネの話になるんですよ(笑)。もちろん事務所としては、お給料のことは口外しないように言ってはいるんですけどね、みんな若いから、ついつい喋っちゃうんですね……。

「へー、◯◯ちゃんって月給制なんだー」なんて言われて、「あれ? もしかして私あんまりもらってない……?」て気になっちゃう。そういうのがどのタイミングで訪れるかは人によって違うし、なんなら全部親任せにしているアイドルの子なんかもいるし、お金に対する考え方は本当に人それぞれ。その時々で交渉していくしかないんですよね。

 で、タレントのなかにそうやって自分のもらっているおカネに対しての疑問が芽生えたときに、所属事務所とタレントの間できちんとした信頼関係が醸成されているかどうかが、実は大事なポイント。そうじゃないと、「(所属事務所の)社長は新しいクルマを買っているのに、私は少ししかお給料がもらえてない……こんなに働いているのに!」なんて小さな不満から、だんだん綻びが大きくなっていくことにもなりかねないわけです。

 芸能界の仕事は、もちろんおカネがすべてではありません。でも、おカネのことは、すごく大事でデリケートな話。そこに不信感が生まれると、タレントと芸能事務所の関係が崩れるきっかけになる可能性はおおいにあり得ます。ぼくら芸能事務所がタレントとずっといい関係で、いい仕事をできるように、しっかり信頼関係を築いていきたいものです。
(構成=白井月子)

芸能吉之助/芸能マネージャー

芸能吉之助/芸能マネージャー

弱小芸能プロダクション“X”の代表を務める、30代後半の現役芸能マネージャー。趣味は食べ歩きで、出没エリアは四谷・荒木町。座右の銘は「転がる石には苔が生えぬ」。

Twitter:@gei_kichinosuke

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