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コロナ失政の与党議員の傍若無人ぶり…国民には厳しい生活強要、自分たちは深夜に飲み歩き

文=林克明/ジャーナリスト
コロナ失政の与党議員の傍若無人ぶり…国民には厳しい生活強要、自分たちは深夜に飲み歩きの画像1
首相官邸HPより

 東京・銀座の高級レストランやクラブをハシゴし、無症状でも安心して入院できる“上級国民”たちが、一般人に過料(行政罰)あるいは刑事罰を科す法案をたて続けに提出する動きがある。

 具体的には、政府が提出した新型コロナウイルス対策の特別措置法改定案、感染症法改定案などの新型コロナウイルス対策に関係するもの。そして自民党が提出する方針を決めた「国旗破損罪」のことだ。これらの法案からは、政府と自民党の“倒錯”ぶりが垣間見える。

一般人はペナルティーが科され自宅死、上級国民は即入院

 まず、コロナ特措法改定の当初案では、緊急事態宣言下で時短・休業要請に従わない業者に50万円以下の過料。緊急事態宣言前の予防段階でも都道府県知事が営業時間短縮・休業命令を出すことが可能になり、違反すると30万円以下の過料。

 感染症法改定案では、入院を拒否した者に懲役1年以下の懲役または100万円以下の罰金。さらに、感染経路を割り出す積極的疫学調査を拒否する感染者に50万円以下の罰金を科すというものだった。

 後述する自民党議員らの“ご乱行”に対する批判を考慮してか、自民党と立憲民主党による協議の結果、1月28日に以下のように修正が合意された。今後は、この案を審議する。

(1)緊急事態宣言下で時短営業・休業に違反した場合

50万円の過料→30万円の過料(「過料」は前科のつかない行政罰)

(2)宣言を出す前の予防段階で時短営業・休業等に違反した場合

30万円の過料→20万円の過料

(3)入院を拒否した感染者に

1年以下の懲役または100万円以下の罰金→懲役刑を削除し50万円以下の過料

(4)積極的疫学調査に協力しない感染者

50万円以下の「罰金」→30万円以下の「過料」

生活苦のシングルマザーが子供を残して入院も

 さすがに、感染者を犯罪人扱いする刑事罰は削除し、行政罰に変えた。とはいえ、自らの失政を顧みず、感染者の一部を刑務所に送ることを一瞬でも考えていたことには、倒錯的なものを感じる。そしてペナルティーを科すことには変わりない。

 経営が苦しく営業しなければ食えなくなる業者をさらに経済的に追い込む。もともと生活苦で近所に親戚もいないシングルマザーが感染した場合、子供のことを考えて入院をためらうことも考えられるだろう。当初案では、このように追い込まれた人たちをも懲役刑にしようとしていたのだ。

 国内で感染者が拡大し始めた昨年2月頃は、発熱しても「4日間は待て」と指示し、入院も診療もさせない方針だった。それが今や、緊急を要する場合でも入院できずに自宅で死亡する患者が相次いでいる。

 厚生労働省によると、1月20日現在の自宅療養者は3万5391人。日本テレビの調べでは、1月25日までに自宅死は少なくとも25人以上だという。その一方で、自民党の石原伸晃元幹事長は、無症状にもかかわらずすんなりと入院できた。

上級国民は高級店で会食、一般人には外出も会食も自粛強要

 さまざまな営業者に時間短縮を求めたことにより、多くの事業所が倒産したり廃業し、多くの人々が職を失い、自殺者も急増しているのは周知のとおりだ。昨年の緊急事態宣言時の4月30日、新型コロナの影響で縮小営業していた東京都練馬区のとんかつ店主が焼身自殺したことは記憶に新しい。

 一般人には昼も夜も「外出を控えろ」「同居する家族以外の会食をやめろ」と、政府は自粛を呼びかけている。ところが、昨年12月14日に菅義偉総理が銀座のステーキハウスで会食したのを筆頭に、自民党や公明党の議員が高級飲食店をハシゴするなど、やりたい放題である。ちなみに、菅首相ら8人が会食したのは、12月17日付毎日新聞電子版によると、「シェフおすすめコース」が一人3万円からという高級店だ。

 そして1月28日発売の「週刊新潮」(新潮社)によると、自民党の松本純・元国家公安委員長が通常国会召集日の1月18日夜、イタリア料理店を訪れ、その後銀座のクラブ2軒をハシゴしたという。1軒目のイタリア料理店はともかく、銀座クラブの2件とも営業時間短縮要請の午後8時を回っていたという。

 さらに4日後の1月22日夜、公明党の遠山清彦・前財務副大臣が深夜の銀座高級クラブで知人と会食した事実が発覚している(1月26日付「文春オンライン」)。この報道によると、遠山氏が銀座のクラブに入ったのは夜11過ぎである。松本氏、遠山氏は、午後8時以降の営業停止、午後7時以降の酒類提供自粛のことが、一瞬でも頭をよぎっただろうか。

 会食といえば、無症状で即入院の石原伸晃氏は、検査で陽性が判明する前日に、野田毅元自治相、坂本哲志・地方創生担当相と会食していた。自民党議員をはじめとする上級国民は、自分たちは会食してもいいし夜に飲み歩きで外出してもいいが、一般人には許さないとでも考えているようである。

 これまでの新型コロナウイルス対策を見ると、適切とはいいがたい面が多々ある。自分たちの失政により被害を拡大させているのに、失政を認めず、反省せず、当然、謝罪もしない。その一方で、刑事罰を含む改正案はひっこめたものの、コロナ感染者や業者に罰を与えようとしているのだから、まったく倒錯している。

 ともあれ、最低限の修正は行われた。しかし、これで安心はできない。彼らは、国民に刑罰を与える新たな法案を提出しようとしているからだ。それは、「国旗損壊罪」を新設する刑法の一部を改正する法律案だ。

2年以下の懲役または20万円以下の罰金

 1月26日付読売新聞によれば、「自民党は26日、日本を侮辱する目的で日の丸を傷つけたり汚したりする行為を処罰できる『国旗破損罪』を新設する刑法改正案を今国会に議員立法で提出する方針を固めた」という。

 実はこの法案は、野党時代の2012年に自民党が提出して廃案になっている。現行刑法には、外国の国旗については損壊罪が明記されているが、自国の国旗に関する条文がないことが問題だと自民党は主張していた。

 これに対して、当時の日本弁護士連合会は山岸憲司会長名で「声明」を出し、法制化に反対した。声明では、外国旗が損壊された場合、「国際紛争の火種となり、外交問題にまで発展する可能性」を指摘。日本国旗に同様のことを求めることについては、「少なくとも外国国章損壊罪と同様の保護法益が存在しないことは明らかである」と述べている。加えて「国家の威信や尊厳は本来国民の自由かつ自然な感情によって維持されるべきものであり、刑罰をもって国民に強制することは国家主義を助長しかねず」と批判している。

 そもそも、国民市民に犠牲(コロナ在宅死を含む)を押し付け、自分たちは安心して治療を受け、あるいは高級店で酒池肉林を堪能している人たちが、業者や感染者の一部に罰を与えようとしたり、日の丸を傷つけたり汚したりする人を処罰する資格はあるのだろうか。そのような暇があったら新型コロナウイルス対策に集中すべきであり、人を処罰する法律を制定して自民党議員らが国家主義的妄想に陶酔するなど論外である。

 むしろ必要なのは、一般人に厳しい生活を押し付けながら自ら違反するような行動をとり続け「国家の威信や尊厳」を傷つけている、彼ら上級国民にペナルティーを科す法律だろう。

(文=林克明/ジャーナリスト)

林克明/ジャーナリスト

林克明/ジャーナリスト

1960年長野市生まれ。業界誌記者を経て週刊現代記者。1995年1月からモスクワに移りチェチェン戦争を取材、96年12月帰国。第一作『カフカスの小さな国』で小学館ノンフィクション賞優秀賞受賞。『ジャーナリストの誕生』で週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。

 最新刊『ロシア・チェチェン戦争の628日~ウクライナ侵攻の原点を探る』(清談社Publico)、『増補版 プーチン政権の闇~チェチェンからウクライナへ』(高文研)
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