緊急事態宣言、延長へ、厚労省の失策…飲食店の営業自粛偏重政策、効果は限定的の画像1
首相官邸のHPより

 新型コロナウイルス感染症拡大を受け、2月7日までの予定で11都府県に発出されていた緊急事態宣言について、政府は1カ月程度延長する方針だと30日、主要メディアは一斉に報じた。感染状況の改善がみられる栃木県は延長されないもようだという。

 今回の緊急事態宣言では、「飲食店の営業時間短縮(20時まで)」「テレワークによる出勤7割減」「20時以降の外出自粛」「イベントの人数制限」などが柱だったが、31日の東京都の新規感染者は633人、重症患者は140人に上るなど、依然として高い水準が続いている。

「感染の抑制には、無症状感染者から不特定多数への感染を防ぐことがもっとも重要であり、そのためには中国や韓国が実施したように大規模なPCR検査が必要です。すでに欧米をはじめ海外では、とにかく国民に広くかつ積極的にPCR検査を受診させるという政策が主流になっていますが、いまだに日本の厚生労働省は検査抑制の方針を維持しています。

 また、政府は特に飲食店の利用自粛や営業時間短縮を強調していますが、現実的には現在での多くの人が職場に出勤し、学校や保育園、各種商業施設なども開いており、飲食店の営業自粛偏重の施策では効果は限定的。そのため、とても2月7日に宣言が解除される状況にはならないという見方が、厚労省内でも当初から強かったのです」(厚労省関係者)

 特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏は1月30日付当サイト記事『厚労省による人災、さらにコロナ感染拡大…頑なにPCR検査抑制、疫学調査の情報を非開示』で、次のように指摘している。

「職場や訪問した場所でマスクをつけていれば、最初から濃厚接触者と見なされず、積極的疫学調査の対象から外れる。この結果、飲食店でのクラスター発生が過大評価される。これこそ、今回の緊急事態宣言で、飲食店が規制対象となった理由だ」

「保健師は『保育園で複数の保育士が感染しました。彼らの家族はPCR検査が陰性だったので、職場感染を疑いましたが、ずっとマスクをしていたので集団検査は実施できませんでした』という」

「第一波の時点からPCR検査体制を強化してきた中国や韓国などの東アジア諸国が、コロナ感染を抑えこんできたのに対し、日本は全土に蔓延させてしまった。日本人はマスクやソーシャル・ディスタンスについては、政府の指示を守ってきたのだから、クラスター対策に固執し、PCR検査を抑制した彼らの責任は重い」

 そこで今回は、同記事を改めて再掲載する。

―――以下、再掲載―――

 1月18日に召集された第204通常国会の目玉の一つが感染症法の改正だ。世間の関心は、入院拒否に対する罰金・罰則に集まっているが、もっと重要なことがある。それは、クラスター対策の見直しだ。本稿では、この問題を取り上げたい。

 厚労省がクラスター対策を新型コロナウイルス(以下、コロナ)対策の中心に据えてきたのは周知の事実だ。コロナ対策本部の下に「クラスター対策班」を設置し、「データチーム」と「リスク管理チーム」を設けた(図1)。

緊急事態宣言、延長へ、厚労省の失策…飲食店の営業自粛偏重政策、効果は限定的の画像2
図1

 前者は国立感染症研究所、後者は東北大学が担当し、北海道大学や国際医療福祉大学などが協力した。押谷仁・東北大学教授をはじめとしたコロナ感染症対策分科会などのメンバーや西浦博・京都大学教授(元北海道大学教授)などは、「クラスター対策班」のメンバーとして活動し、その成果を発表してきた。日本のコロナ対策を実質的にリードしてきた組織といっていい。

「クラスター対策班」の主たる業務は、積極的疫学調査の分析だ。積極的疫学調査は、感染症法に規定された法定検査で、日本のコロナ対策は、この調査で得られた情報を元に議論されてきた。極めて重要な情報だ。感染症法の1~3類に規定された感染症が発生した場合、保健所は都道府県の関係部局と連携して、この調査を実施する。実施要綱などを作成するのは、国立感染症研究所だ。

 積極的疫学調査では、感染者を発見したら、保健所が濃厚接触者を探しだし、PCR検査を実施する。もし、感染していれば、さらに濃厚接触者を探し、芋づる式に感染者を見つける。この芋づるをクラスターと呼ぶ。昨年の第一波が収束した際、安倍晋三首相(当時)は「日本モデルの成功」と発言し話題となったが、この「成功」に大きく寄与したのが、積極的疫学調査といわれている。

 ただ、クラスター調査は、世界のどこでも実施している標準的な感染対策だ。なぜ、日本だけが「成功」するのだろう。それは日本と海外はやり方が違うからだ。海外では感染者が見つかると、その後、接触した人を洗い出し、発症するか調査するが、日本では、感染者の過去の行動を調べ、接触者を探しだし、彼らを検査する。海外と比べ、日本のクラスター調査は徹底していることになる。厚労省は、積極的疫学調査により、感染源や感染経路が判明し、「三密」のリスクをいち早く明らかにしたと言うが、宜なるかなだ。

積極的疫学調査が唯一無二のコロナ感染対策に

 日本の積極的疫学調査が、優れた「調査研究事業」であることは論を俟たない。ただ、そのために全国の保健所を動員しているのだから、そのコストは膨大だ。ところが、このことは、あまり議論されない。

 積極的疫学調査の問題は、これだけではない。私が最大の問題と考えるのは、本来、「調査研究事業」である積極的疫学調査が、いつのまにか唯一無二の「コロナ感染対策」になってしまったことだ。

 このことは関係者も公言している。コロナ感染症対策分科会の委員を務める押谷教授は、3月22日のNHKスペシャル『“パンデミック”との闘い~感染拡大は封じ込められるか~』に出演し、「すべての感染者を見つけなければいけないというウイルスではないんですね。クラスターさえ見つけていれば、ある程度の制御ができる」「PCRの検査を抑えているということが、日本がこういう状態で踏みとどまっている」と述べている。

 彼の発言が間違っていたことは、その後の経過をみれば一目瞭然だ。第一波の時点からPCR検査体制を強化してきた中国や韓国などの東アジア諸国が、コロナ感染を抑えこんできたのに対し、日本は全土に蔓延させてしまった。日本人はマスクやソーシャル・ディスタンスについては、政府の指示を守ってきたのだから、クラスター対策に固執し、PCR検査を抑制した彼らの責任は重い。

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