
15日、東京都庁第1庁舎の2階の書店でのこと。「すいません、この本、置いていませんか?」と手に持ったスマホの書影を書店員に見せると、レジ裏に平積みされた本の山から一冊の本が取り出されてきた。東京都総務局人事課長や中央卸売市場次長、選挙管理委員会事務局長などを歴任した元都庁幹部、澤章氏が著した『ハダカの東京都庁』(文藝春秋)だ。同店内の書棚にはかつて都庁内を震撼させた大宅壮一ノンフィクション賞受賞作『女帝 小池百合子』(石井妙子著、同)ですら平積みされていたが、なぜか『ハダカの東京都庁』は1冊も見当たらなかった。
実は同日、「文春オンライン」(同)に掲載された記事『西新宿から「職員が死にそうだ」とうめき声が…… 元幹部職員が明かす、小池百合子が招いた東京都庁の悲惨な「緊急事態」』冒頭で、澤氏は前述の自著の出版に関して次のように記していた。
「西新宿の都庁第一本庁舎の2階には書店が入っている。今頃、『ハダカの東京都庁』はちゃんと並べられているだろうか、ちょっと心配である。
というのも、1年前の春に出版した拙著『築地と豊洲』は、発売当初こそ平積みにされたものの、いつの間にか店頭から消え、店員に尋ねるとレジの後ろからこっそり取り出してきたという話を都庁職員から聞いたことがあるからだ」
どうやら澤氏の懸念の通りの事態が、都庁内で現出しつつあるようだ。実際、東京都職員はこの本をどのように受け止めているのだろうか。
「裏切り者の本は買ってはならない」
澤氏の著作は東京メトロや、はとバスといった都内大手企業をも影響下に置く“都庁ホールディングス”の全体像と、その内部で行われる幹部職員の定年後の“再就職”の実態、都庁記者クラブの内実、赤裸々な都庁職員の出世競争などをつまびらかにした意欲作だが、真っ向から小池百合子氏を批判しているわけではない。では、庁舎内の書店が書棚におけない理由とはなんだろうか。
別庁舎で勤務する中堅職員は次のように話す。
「実際、みんなこっそり買って読んでいますよ。ただ第一庁舎の書店の書棚に置かれているのをレジに持っていくのを誰かに見られると困る。だから、書店さんが配慮して(レジ裏に置いて)いただいているのではないかと思いますよ。澤さんがご指摘されている通り、本を買っているところを見られでもしたら、政策企画局か総務局に通報されます。最近は、第一庁舎内では密告が常態化しているので、すぐ小池(百合子)知事の耳に入り、即人事異動の対象になるでしょうね。