急転直下、専門家らの意見に押され、菅義偉首相は5月14日、緊急事態宣言を北海道、広島県、岡山県の3道県にも広げることを決めた。菅首相は「安全安心な大会は実現可能」と強気だが、これで7月23日開幕予定の東京五輪・パラリンピックの開催は、ますます不透明になってきた。
そんななかで、にわかに囁かれているのが、東京都の小池百合子知事が「五輪中止」を言い出すのではないか、という見方だ。小池氏が中止表明をするのかどうか、永田町は固唾を呑んで見守っているという。
小池氏は世論動向に敏感で、世論の流れを掴む力は政界でもピカイチとされる。直近の世論調査でも五輪中止を求める声は6割近くに達し、調査を重ねるごとに高まっている。7月4日投開票の東京都議会議員選挙も控えているだけに、「五輪中止」で世論の拍手喝さいを浴びれば、知事与党の地域政党「都民ファーストの会」の議席維持にもプラスになると小池氏が計算しているとしてもおかしくない。
「不気味なのは、ここへきて小池知事が五輪開催について明確な言葉を発しなくなっていることです。公式ツイッターでもここ1カ月、五輪に言及していない。五輪関連の会議でも黙って話を聞いていることが多いそうです。何かいろいろ考えを巡らせているのではないか」(都庁関係者)
5月11日、小池氏が自民党本部を訪ね、二階俊博幹事長と会ったことから、こうした警戒感がさらに高まった。小池氏は会談後、記者団に囲まれ、五輪について話し合ったのかを聞かれると、「それについてはありません」と明確に否定したが、永田町でも都庁でも、額面通りに受け止める向きはいない。
そもそも、五輪中止に言及したのは二階氏のほうが先だ。4月15日に民放のCS番組収録で「これ以上とても無理だということだったら、これはもうスパッとやめなければいけない。オリンピックで感染を蔓延させたら、なんのためのオリンピックかわからない」と発言したのだ。
二階氏と小池氏の連携
気脈を通じる二階氏と小池氏だけに、「五輪中止で連携」があり得るという見方が広がっただけでなく、永田町ではさらにその先を警戒する声まで出てきている。都議選後に行われることになる衆議院の解散総選挙に小池氏が再び挑戦するのではないか、という見方だ。小池氏は4年前の2017年10月の衆院選に「希望の党」の党首として挑んだが、自ら放った「排除発言」が批判を浴び、大惨敗。失敗に終わった。
そのときに「排除」された枝野幸男氏が党首を務める立憲民主党が野党第一党なので、野党が小池氏と再び組むことはさすがにないだろうが、自民党とならあり得るのでは、というのは野党のベテラン議員だ。
「一度失敗しているのだから、普通はまた国政挑戦なんてあり得ないが、小池氏は直感で動くので、五輪中止で世論の絶大な支持を得れば、何を考えてもおかしくない。シナリオは2つ。中小政党の党首として衆院選に出て、自公が過半数割れしたり、過半数ギリギリのときに与党の一角に入って政権を安定させる役割を担う。そうなれば総理も狙える。日本新党の細川護熙元首相のパターンです。
もうひとつは、自民党が小池氏を取り込むパターン。安倍晋三前首相の再々登板説が出てくるほど自民党内の『ポスト菅』は人材難。融通無碍な二階氏なら小池氏だって担ぐでしょう。自民党は政権に留まれるなら、いざとなればなんだってありですから」
巷では、女性初の首相候補として自民党の野田聖子幹事長代行が再浮上してきたとみられているが、まさかの小池首相があるのか。