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「世田谷一家殺人事件」犯人特定に向け新展開 !? 週刊誌報道を期待していいのか

文=沖田臥竜/作家
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世田谷一家殺人事件
成城警察署の前では、いまも情報提供を募る看板が掲げられている

 写真週刊誌「FLASH」(11月9日・16日合併号)およびそのウェブ版が「世田谷一家殺人事件 21年めの新展開!警視庁が異例の実名出しで所在を追う『焼き肉店のアルバイト店員』」という記事を報じた。

  2000年12月30日に発生した、宮沢みきおさんら一家4人が殺害されたこの事件は、日本における未解決事件の代表的な存在となっている。

 「FLASH」の記事は、同事件に関連して、現在、警視庁捜査一課が「H」という人物について聞き込み調査を行い、その行方を追っているというものだった。Hは事件当時20代で、世田谷区内の焼肉店でアルバイトをしていたが、捜査本部が発表している犯人像と一致する点が多いというのだ。

 では、この情報は本当に、犯人逮捕に向けて、注目に値するものといえるのだろうか。

 筆者も、複数の未解決事件のその後を追跡した『迷宮 三大未解決事件と三つの怪事件』(サイゾー)を執筆した際、この事件についても取材し、事件に詳しい友人に協力してもらいながら、当時の状況を知るために莫大な資料を調べ尽くした。事件現場にも足を運んだ。そして結局は、『迷宮』でも書いたが、この事件に詳しい友人が最初に言った言葉、

―調べれば調べるだけ、わからなくなる―

という状況に突き当たったのだ。

 生半可の知識や取材ならば、勝手に推測や妄想が働き、我田引水で導いた結論と犯人像が出来上がってしまうのだが、実際のところは、調べれば調べるだけ、わからなくなってしまう……つまり、推測を捨て、事実だけを追い、それを積み上げても、結論に導く決定的な事実が欠けていれば、そこからは真実は見えてこないのだ。だからこそ、私は『迷宮』の冒頭でこう記した。

―本書は、「未解決事件に真相に迫った」ことを売りにする、すべての書物を否定する―

 実際にそうではないか。過去、多くの未解決事件関連本や報道が、犯人に迫るような情報を発表してきたが、その通り、犯人が逮捕されたケースはない。日本の警察の捜査能力は、他国と比べても群を抜いて高い。その捜査能力をもってしても、事件を解明し、犯人を逮捕できない中、ジャーナリストやライターの取材力が当局の捜査能力を上回ることは、常識的に考えてもありえないだろう。確かに読み物としては、犯人がわかったかのような拡大解釈と妄想を交えたほうが面白い。だが、それが真実かといえば、犯人が逮捕されていない以上、未解決事件である以上、違うといわざるを得ないのだ。

 世田谷一家殺人事件においても、いまだ疑わしき人物というのは特定されていない。簡単な話だ。あれだけの遺留品が現場に残されているのだから、そこに残された指紋やDNAと一致するかどうか調べれば、疑わしき人物がシロかクロかの答えはすぐ出るのである。疑わしき人物の指紋やDNAを採取するのも、それほど難しいことではない。例えば、その人物の家から出たゴミを洗えば、すぐに採取できるだろう。立ち寄った飲食店などでも採取できる。つまり、疑わしき人物が捜査線状に浮上したら、すぐに犯人か犯人でないかと結論づけることができてしまうのである。

当局内で色めき立つような動きは起きていない

「世田谷一家殺人事件」犯人特定に向け新展開 !?  週刊誌報道を期待していいのかの画像1
事件現場として、取り壊されることなく保存されている宮沢さん宅

 世田谷一家殺人事件の解明は、捜査当局の悲願だ。特に近年その想いを強くさせている背景がある。ご遺族である、宮澤みきおさんのお母さんがご高齢ゆえ、どうにかお母さんがご存命のうちに解決したいという思いが募っているのだ。

 そんな中で、「FLASH」が目をつけたHが犯人とつながるものではないかという見方は、現実的ではないだろう。これまでも、世田谷一家殺人事件を担当している特命班は、どんな小さな手がかりでも、しらみつぶしにしてきた。だが、昨今、特命班が特定の人物について、熱を持った動きをしているという話は耳にしない。本当にHが疑わしき人物として捜査線上に浮上しているならば、特命班の温度感はもっと違ったものになっているはずだ。

 今から数年前、世田谷一家殺人事件と同じく「平成三大未解決事件」の一つに数えられる葛飾区柴又女子大生放火殺人事件で、もしかして犯人ではないかという人物が浮上した。のちに結果的にはシロであることが判明するのだが、その際の特命班の動きは、明らかに緊迫した状態になったと、警視庁担当記者や当局関係者などは誰しもが口を揃えていた。

 私には独自の当局筋のルートがあるため、「FLASH」の記事が掲載されると同時に、Hの名前を調べてもらえないかと、大手メディアの知人から連絡があった。だが、どの角度からアタックしても、Hを割り出すことはできず、実際にわかったのは、前述した通り、当局が現在、特定の人物を本気で狙っている形跡がないということだった。そうした状況の中、仮に憶測や妄想で、Hの実名が出回りでもすれば、SNSなどで瞬く間に拡散されてしまうだろう。しかもそれが犯人ではなかった場合、取り返しがつかない事態になりかねない。

 「FLASH」によると、Hの実家はすでに以前の場所にはなく、Hの行方をいまだにつかめていないというが、警察当局が本気を出して捜査に乗り出した場合、実家がなくなっているくらいで捜査が手詰まりすると思えない。しかも、そこまで辿りついたあとに、不測にも週刊誌に情報が漏れてしまったというならば、当局はHの居所を特定するためにさらに躍起になって一気に畳みかけるはずではないか。

 だが、私が聞く限り、当局内で色めき立つような動きは起きていない。無論、捜査は水面下で極秘裏に進められているので、「絶対に動きがない」とは断言しない。だが、週刊誌がこれだけ大々的に報じたあとも、当局の変化を感じ取れないところを見ると、残念ながら、世田谷一家殺人事件が現在、犯人特定に向けて大きな進展を迎えているかといえば、そうではないと見るべきではないだろうか。

(文=沖田臥竜/作家)

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沖田臥竜/作家

沖田臥竜/作家

作家。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』(サイゾー文芸部)はドラマ化もされ話題に。最新刊は『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』(同)。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。

Twitter:@pinlkiai

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