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北朝鮮軍の訓練学校、人間や動物の排泄物で一日10キロの堆肥を生産…食糧生産拡大

取材・文=相馬勝/ジャーナリスト
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北朝鮮(「gettyimages」より)

 北朝鮮では、すでに今年秋の食糧生産拡大の準備に入っている。その生産に必要なのは肥料だが、化学肥料が乏しい北朝鮮ではその代わりに、人間の排泄物や動物のフン、あるいは生ごみを用いて堆肥をつくるように人々に指示しているなか、朝鮮人民軍の戦車訓練学校の訓練生にさえ、堆肥の製造を命令していることが明らかになった。

 訓練生たちは「戦車の運転方法などを学ぶためにこの学校に入ったが、その代わりに人糞や動物のフンを盗む方法を学んでいるように感じられる」とぼやいているという。一方、地元の人々は「この基地は機械化部隊の兵士ではなく、農業の専門家を養成しているのではないか」と皮肉っているという。北朝鮮専門のニュースサイト「デイリーNK」が報じた。

 北朝鮮の平安南道价川(ケチョン)市にある朝鮮人民軍2734部隊は、戦車の運転や攻撃などの訓練を行う軍事訓練機関で、軍参謀本部の直轄部隊だ。同部隊は3カ月の基礎訓練の後、1年間、戦車や装甲車の理論と実地訓練を学び、年間600〜700人の卒業生は機械化部隊や装甲部隊に配属される。

 しかし、その主な訓練は午前中だけで、午後は主に堆肥づくりや農作業に費やされるという。部隊はすでに12月14日から堆肥の生産作業に入っており、午前中の訓練と兵器の整備を終えると、午後2時から午後7時まで、訓練生は各々1日に10キロの堆肥を生産することを課せられている。訓練生は「訓練に集中できない」と文句を言っているが、学校側は「39万7000平方メートル(東京ドーム8.5個分に相当)以上の土地を所有しているので仕方がない」と説得しているようだ。

「将軍様の賞賛に応えよう」

 同部隊が農業生産に力を入れているのには理由がある。それは金正日前総書記が2004年10月に訪問した際、同部隊の農業、畜産、キノコ栽培に高い評価を与えたためで、部隊側では「将軍様の賞賛に応えよう」として、部隊は訓練ではなく副業に力を注いだのだ。

 これは現在に至るまで続いている。現在の北朝鮮の最高指導者、金正恩総書記も昨年と一昨年に数十トンの大豆とトウモロコシを収穫した同部隊を「自立生産のモデル」として賞賛しているからだ。その期待に応えようと、訓練生たちも訓練後の農業生産活動に力を入れているが、夕方の点検後、1日の堆肥のノルマを果たせなかった訓練生たちのなかには、地元の農家や家庭から堆肥を盗み出すなどの挙に出る者もいるという。

 地元住民は戦車学校の訓練生を見かけると、「堆肥泥棒。私の堆肥に触るな」と叫ぶなど、警戒心を露わにしている。ある農民は「戦車訓練学校から農業学校に名前を変えれば良いのに」とまで述べているという。

(取材・文=相馬勝/ジャーナリスト)

●相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人、次の戦争」(講談社刊)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日作戦』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

 

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