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北京五輪、商業的にも“大コケ”…衰退著しいテレビのスポーツ報道、改善は困難?

文=中村俊明/スポーツジャーナリスト
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北京五輪、商業的にも大コケ
ネガティブな話題が多い北京五輪(「Getty Images」より)

 北京五輪の真っ只中だが、どうも盛り上がりが芳しくない。

 昨年の東京五輪に続く、2度目のコロナ渦における五輪開催。日本勢は2個の金を含む12個のメダルを獲得するなど(15日時点)、まずまずの成績を残している。だが、国内外のメディアの論調を見直すと、今大会開催に対しての厳しい意見も並ぶ。五輪開催の本来の意義に反する近年の商業五輪の流れではあるが、商業的な側面からみても“大コケ”は免れない状況だ。大手広告代理店社員が明かす。

「視聴率の面でかなり苦戦をしているというのが、偽らざる現状です。結果的に、スポンサーも見方が厳しくなっています。開会式こそ21%を超えました(関東地区、世帯平均/ビデオリサーチ調べ)が、前回の平昌五輪よりも10ポイント近い減少幅。さらに個別の競技を見渡しても、フィギュア、スキージャンプといった従来のキラーコンテンツですら、低迷が目立ちます。

 国際的なスポーツイベントの放送権料は年々上昇している一方、視聴率は低下傾向が著しくなっています。冬季五輪は夏季五輪よりも注目度が低いのは仕方ありませんが、ここまで厳しい数字になるとは、さすがに予測をしていなかったですね」

 その傾向は、スポンサーの顔ぶれをみても明らかだと続ける。

「原則的に、五輪の放送に関する民放のスポンサーは“ナショナルクライアント”というのがこれまでの通念でした。しかし、今回に関してはナショクラと呼べない企業も多く混ざっています。これは、五輪の注目度の低下から、スポンサー集めにも苦労したことの裏付けでもあります」

 さらに今回の五輪に大きな影を落としているのが、ロシアのウクライナ侵攻問題だ。欧米では北京五輪に政府関係者を派遣しないという「外交ボイコット」を実施。その一方で、開会式に参加したウラジーミル・プーチン露大統領の一挙一投足が注目され、習近平国家主席と並び共産圏の国が存在感を放っている形だ。日本メディアの現地特派記者が語る。

「今の所、一番目立っていたのが開会式のプーチンの『居眠り』疑惑ですね。また、メダル独占が確実視されていた、ロシアのフィギュア女子のドーピング問題が注目を集めています。良くも悪くもプーチンの思惑通りというか、これまではロシアが話題をさらっています。

 それでも、他国のメディア関係者と話していても、世界的にも軒並み過去最低の注目度で、視聴率も低いという声が目立ちます。さらに今回の五輪は政治的な色が強すぎて、欧米メディアはかなりバランスに気を使って報道していますね。アメリカやヨーロッパとの関係、ロシア、中国との関係性もあり、参加国でも妙な遠慮のような空気がある。いずれにしろ、これまで20年以上五輪を取材してきましたが、ここまで政治色が強い五輪を経験するのは初めてです」

国際的なスポーツイベントの放送は衰退が不可避か

 北京五輪は2月20日までだが、テレビマンたちは五輪というコンテンツをどう捉えているのか。民放の情報番組ディレクターは、もっと悲惨な数字になると見ていただけに、思いの外踏みとどまっていると語る。それでも、報道の仕方も従来と変わってきているとの見方を示す。

「メダル獲得の有無によって盛り上がるという番組づくりから変わってきているんですよ。それは、コロナを理由に個別の選手の取材がかなり制限されているため、どうしても番組づくりでの差別化が難しくなっていることが大きいです。これは各局、同じ悩みでしょうね。特にワイドショーや情報番組では、ストレートニュースのような取り上げ方はできないので、角度の付け方が難しいです。それよりも高梨沙羅選手のスーツ規定違反での失格のような、賛否両論を巻き起こすネットニュース的な取り上げ方のほうが、視聴者の反応が良かったりもします」

 テレビの現場からすれば、数字的な部分だけでの判断ではなく、想定よりもスポンサーや視聴者の反応が良いということだろう。それでも、今後の国際的なスポーツイベントの放送、報道は衰退していくと見ているという。

「一番の要因は、テレビ局が放映権の高騰に耐えうる体力を失いつつあることです。五輪に関していえば、完全に赤字ですから。今年は冬にサッカー・ワールドカップも予定されていますが、同じように厳しい結果になると暗い見方が強いです。コスト削減を上から強く言われる今、もはや劇的にスポーツ報道が改善されるということはないでしょう。

 たとえば、大谷翔平や八村塁、大坂なおみといったスーパースターの映像を借りて、適当な識者を読んで、それっぽく番組をつくっても視聴率的には大差がないのです。コロナ報道の影響も強く、そういった楽な方向に走ろうという現場の流れや上の意向もあり、それは番組づくりにも影を落とすようになっています。平たく言えば、資金的な意味でも、報じ方もテレビ放送の限界を迎えているといえるでしょうね」

“商業五輪”と揶揄され続ける近年の五輪だが、もはやメディアにとっても決して美味しい商品とはいえない状況なのかもしれない。

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