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中国発の航空便、乗客の半数がコロナ検査陽性…1月以降、日本への旅行者増加に警戒

文=編集部、協力=上昌広/医師、医療ガバナンス研究所理事長
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27日、中国からの入国に関する緊急措置について会見を行う岸田首相(首相官邸のHPより)

 29日付米ブルームバーグ記事は、中国の北京発と上海発のミラノ着の航空便で、乗客の約半数が新型コロナウイルス検査で陽性だったと報じた。イタリア政府は中国からの到着便について全乗客の検査を義務付けたが、ゼロコロナ政策の緩和以降、感染が拡大する中国は26日、入国後のPCR検査と強制隔離の撤廃を発表し、来月8日から海外旅行の申請手続きも再開するなど大幅な規制緩和を開始。日本含め世界では「中国発」の感染再拡大に警戒が高まっている。

 中国政府はこれまで、出入国や国内移動を厳しく制限するゼロコロナ政策を取ってきたが、ヒトやモノの移動が制限されたことで経済が急速に悪化。2022年4~6月期の国内総生産(GDP)は、物価の変動を調整した実質で前年同期比0.4%増と、ここ10年では極めて低い水準となり、7月の若年層失業率(16~24歳)は19.9%で過去最高、対外輸出の伸び率は10月には前年同期比0.3%減に落ち込むなど、中国経済は大きなダメージを受けた。

 さらに11月には、新疆ウイグル自治区の高層マンションで起きた火事で、厳しい感染対策のため避難経路が閉鎖されたことで救助が遅れ10人が死亡したという情報がネット上で広まったことがきっかけとなり、全国各地で大規模なデモや抗議活動が勃発。デモは首都・北京をはじめ上海、広州など全国10以上の都市に広がり、ゼロコロナ政策の批判や習主席・共産党への退陣要求が公然と叫ばれるなど、反政府運動が活発化した。

 こうした事態を受けて中国政府は、国民の不満のガス抜きの目的もあり徐々にゼロコロナ政策を解除しているが、それに伴い国内で新型コロナ感染が拡大。前出ブルームバーグ記事によれば、一日当たりのコロナ新規感染者が3700万人近くになった可能性もあるといいい、中国の海外旅行再開をはじめとする水際対策の緩和に世界で警戒が高まっている。

 イタリア政府は今回の中国便の乗客への検査結果についてゲノム解析を行っており、その結果によってはEU各国が歩調を合わせて中国からの渡航制限を強化する可能性もある。前出ブルームバーグ記事によれば、米国も中国からの渡航者にコロナ検査での陰性証明を義務付ける方針だという。日本政府も27日、中国本土からの渡航者および7日以内の渡航歴があるすべての人に入国時の検査を実施するなどの特別措置を行うと発表したが、全国紙記者はいう。

「2019年の後半から20年にかけて世界でコロナ感染拡大が始まるなか、例年中国からの渡航者が増加する1月の中国の春節シーズンに、日本政府は東京五輪への影響や日中関係を考慮して中国からの渡航制限をかけなかったことで、日本国内での感染拡大につながったという認識が現在では定着している。来月以降、中国から日本への渡航者が増えるのは必至だが、今回も自民党内の親中派に押されるかたちで入国規制が不十分になれば、3年前の二の舞になる恐れもある」

不安を煽ることが国民の健康を損ねる

 医師で医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏はいう。

「今回の日本政府の対応は妥当と考える。その理由は、中国でBF.7などの新たな変異株が流行しているからだ。その実態が明らかになるまで、水際対策を強化するのはやむをえない。

 ただ、いくつかの理由から、このような変異株が我が国で問題となる可能性は少ない。まずは、新たな変異株はオミクロン株に由来するもので、中国と異なり、日本ではワクチン接種と実際の感染により、すでに多くの国民がオミクロン株に対して免疫を獲得していることだ。中国でもワクチン接種は進んでいるが、中国製ワクチンの効果は低い。医療ガバナンス研究所は、中国の研究者と共同研究を進めているが、中国製ワクチンの抗体価は、ファイザーやモデルナ製ワクチンを接種した日本人の1/10~1/100程度である。ワクチンを接種していても十分な免疫が獲得できないから、今回のような大流行が起こり、多くが重症化するのも納得できる。日本では、こんなことは起こらない。

 第二の理由としては、コロナ流行の季節性だ。過去2年間、冬場の流行は11~12月に始まり、1月にピークアウトした。この傾向は韓国も共通している(図1)。日韓で流行状況が酷似するのだから、人流増などの人為的な影響より、ウイルス固有の原因あるいは気候などの要因が影響しているのだろう。コロナの流行には季節性があるから、中国から変異株が入ってきても、早晩、ピークアウトするだろうから、大きな問題となる可能性は低い。

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 以上の理由から、中国からの変異株の流入は、過度に心配する必要はない。むしろ、不安を煽ることが、国民の健康を損ねるリスクがある。厚労省の『人口動態統計』を用いて、コロナ流行期間の死因を分析すると、興味深い事実がわかる。人口10万人あたりの死亡数は、2019年の1112人から21年には1173人へと61人(5.5%)増えている。この間に最も増加したのは、老衰25人(26%増)、誤嚥性肺炎7.7人(24%増)、心疾患7.0人(4.1%増)、悪性新生物6.5人(2.1%増)と続く。コロナ感染の主な死因である肺炎は、この間0人から14人へ増えただけだ。日本の死亡者の増加の54%は、老衰と誤嚥性肺炎によるものだ。いずれも、長期にわたる自粛が悪影響を及ぼしたといっていいだろう。

 変異株の不安を煽り、高齢者に自粛を促すことは、国民の健康を損ねるリスクがある。国民の健康を最優先した合理的な対応が必要である」

(文=編集部、協力=上昌広/医師、医療ガバナンス研究所理事長)

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