私たちが寝ているときに見る「夢」。まったく現実的なものではないものから、普段の生活の延長線上のようなものまで様々で、時には起きた後も陰鬱な気持ちを引きずるほどの悪夢をみるときもある。
では、「夢」とは一体何なのか。
その問いに対して、臨床心理士で夢の専門家である松田英子さんは「目覚めているときに入力され、処理した情報を記憶し、整理したのが夢」であると述べる。そして、現在夢についての研究が進み、かなりの部分が解明されてきているのだそうだ。
『1万人の夢を分析した研究者が教える今すぐ眠りたくなる夢の話』(ワニブックス刊)は、夢にまつわる様々なトピックをテンポ良く紹介する一冊。本書によると、例えばこんなことが分かっているのだという。
誰でも毎晩いくつか夢を見ている
私たちが一晩に見る夢は、起きる直前に見ていたものだけではなく、複数の夢をみているという。ただ、覚えている頻度はさまざまで、「自分はあまり夢をみない」という人もいるだろう。しかし、そういう人でも実験室で眠ってもらい、ちょうど夢をみている時間に起こすと、ほとんどの人が夢の内容を報告するという。
実は「悪夢」の割合が多いのは普通?
ドイツの夢研究者シュレードルによると、客観的評価では、ポジティブな感情が“優勢”な夢をみる確率は21.1%であり、一方のネガティブな感情が“優勢”な夢をみる確率はなんと56.4%にのぼるという。また、感情をともなわない夢をみる確率は13.5%、感情のバランスがとれた夢をみる確率は9%となり、ネガティブな感情の夢をみる確率がひときわ高いことが分かる。
おなかの中の赤ちゃんも夢をみているのか?
私たちは何歳から夢をみるのか。その問いについて、松田さんは「鮮明な夢をみているとされるレム睡眠の時間帯は、実は胎児からも観察されています」(p.29より)と答える。ただ、胎児がみている夢は、いわゆる私たちがみる夢とは異なるのではないかと推測する研究者もいると指摘する。
また、生まれてから幼児までの間はレム睡眠が比較的多く、シナプスの形成に重要な役割を果たすと考えられているという。そして、この時期にみる夢を、夢と認識して語りはじめるまでには、少なくとも生後2~3年かかるとされているそうだ。
動物は夢をみている?
「レム睡眠があれば、どんな生体でも夢をみている」という仮定の上で、レム睡眠のある動物ならば、すべて夢をみていると考えられると松田さんは述べる。
また、最新の研究によると一部の爬虫類やタコ、イカの仲間も、ノンレム睡眠かレム睡眠へと睡眠状態が切り替わることがわかっており、特にタコは「体の色が変わったり、吸盤をビクビクさせたりするとき」がレム睡眠に近いのではないかという研究報告もあるという。
◇
ここで取り上げたのは本書の入り口部分。
世代別による「よくみる夢」の共通点や傾向、夢のコントロール、「悪夢」への対処法など、夢についての基礎知識から夢にまつわる深い話まで、興味深いトピックスが並ぶ。
眠りについて夢をみることが少し楽しみになる一冊だ。(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。