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ツタヤ図書館の不正疑惑、住民監査請求が棄却…和歌山市の杜撰すぎる監査の実態

文=日向咲嗣/ジャーナリスト:外部執筆者
ツタヤ図書館の不正疑惑、住民監査請求が棄却
和歌山市民図書館が入居するキーノ和歌山(「Wikipedia」より)

 和歌山市民図書館の運営支出に多額の不正疑惑があるとして昨年12月27日、市民団体のメンバーが住民監査請求を行った。その結果が2月21日付で和歌山市監査事務局から発表された。

 結果は「棄却」。昨年9月以降、当サイトで独自の調査報道として追及してきた、同館内のカフェと書店の激安賃料にまつわる不正疑惑はすべて“シロ”とされたわけだが、果たして、その結論は妥当と言えるのだろうか。

「監査結果を読む限り、とてもそうは思えません。この内容なら、住民訴訟をすれば市民サイドにも十分に勝ち目はあります。監査が適正に行われたとはいえない箇所が少なくありませんので」

 そう話すのは、総務省の元官僚で地方自治に詳しい、神奈川大学法学部の幸田雅治教授(行政学・公共経営)だ。一般的に、住民訴訟で市民が勝訴する率は1割程度しかないといわれるなか、専門家が「十分に勝ち目はある」と判断するのだから、監査結果は和歌山市の“悪政”を色濃く反映したものといえそうだ。

 そこで今回は幸田教授に、監査結果の内容について詳しく解説してもらった。

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2月21日付で公表された監査結果。和歌山市監査事務局のサイトで全文公開されている

 まず幸田教授は、市民が行政運営に対して異議を申し立てることができる数少ない手段のひとつである住民監査請求の制度について、こう解説する。

「監査を担当するのは自治体が選任した監査委員ということもあり、自治体寄りの結果を出す場合が多いともいわれています。棄却されたら住民訴訟までいかない限り、なかなか住民が期待するような結果は出ないですね」

 また、監査の対象になるのは、あくまでも自治体における財務会計上の不当または違法な行為に限定される。そのため、指定管理者による図書館運営が、どれだけ非常識でデタラメなものであったとしても、財務会計に関係ない運営については、監査請求の対象にはならないという。

 それらを踏まえたとしても今回の監査結果は、適正な監査が行われたとはいいがたいと、幸田教授は疑義を呈する。詳しくみていこう。

 今回、和歌山市民が監査の対象としたのは、市民図書館内で指定管理者であるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が同館内で経営する、スターバックスと蔦屋書店の賃料に関することが主題。これら民業店舗が和歌山市に払う賃料(正式には目的外使用料)が、世間相場から著しくかけ離れた安い価格(月額約19万円)に設定されていたり、それら店舗が適正な光熱水費を負担していなかったり、通路部分を他社に又貸ししていたりするなど、11項目にわたっていた。そのなかでも最大の疑惑が、賃料決定プロセスである。

 監査請求では、この賃料について、2017年の指定管理者・募集要項において「めやす賃料」が「平米当たり年間約3万円」と明記されていたことを指摘。だが、CCCが指定管理者に選定されて新図書館が完成した後、この使用料が「平米当たり年間約1万円」と、募集要項の3分の1にまで値下げされていた。そのプロセスが不透明だとして、この間の行政上の手続きが適正なものであったのかを監査すべきとの趣旨だった。

 ところが監査結果では、先に建物の完成後に決定された賃料を取り上げて、それが条例で定められた通りに算出されているので問題はないと認定。一方、指定管理者・募集要項の策定時には、まだ建物の実施設計段階で仮評価を行えなかったため、すでに算出されていた都市再開発法に規定する概算額を用いて、目安賃料を算出したとする市の行為は適正だったと是認している。

 肝心のこの間のプロセスが妥当だったかどうかについては言及がない。Aは正しい、Bは正しい、ゆえに「(AからBに至る経緯全体に)不正はなかった」という粗雑な論理を展開していたのだ。

 そもそも、監査請求でいちばん問題とされていた、意図的に高く設定された疑いのある「めやす賃料」が、どのような計算方法によって算出されたものなのかは依然として不明なままだ。「都市再開発法に規定する概算額を用いて計算した」とする市側の言い分を追認しただけで、監査結果に明記されている「本請求に関連する書類の提出」欄を見ても、根拠となる資料をすべて提出させて検証した形跡はない。この点について幸田教授は、次のように指摘する。

「最終的に決定された平米当たり年約1万円という賃料単価が、固定資産評価額を基に算出されたという点は妥当だろうと思われますが、監査では本来、根拠となる資料や帳簿をすべて提出させたうえで、細かくひとつずつそのプロセスが適正かどうかをチェックしなければなりません。それがきちんとなされていないということであれば、結果が正しいかどうか以前の問題として、監査は不十分といえると思います」

 筆者はこれまで和歌山市教育委員会に、募集要項に明記した「めやす賃料」が決定された際の検討記録や会議録、決裁文書などプロセスの情報開示をしつこく求めてきたが、結局、その点については1枚も文書は開示されず「不存在」となっていた。

 住民監査請求を経ても、なお、その間の経緯はまったく解明されないまま、激安賃料でCCCを優遇したのは「適正」とされたわけで、「和歌山市民図書館の不正疑惑は、第二の森友学園事件ではないか」と囁かれても致し方ないだろう。

 監査委員によるおかしな事実認定は、それだけにとどまらなかった。和歌山市民図書館を訪れた利用者の目には、1階は書店・物販とカフェが配置された民業フロアと映るはず。だが、なぜか書類上は、そのほとんどのスペースが「図書館及びその共用部分」として処理されている。賃料の対象となっている民業店舗部分は1階1669平米のうち220.19平米で、全体の約13%しかない。

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和歌山市民図書館・YouTube公式紹介動画(上)をみると、1階フロアの床は、ほとんどがカフェと書店・物販等の民業店舗が占有しているようにみえる。ところが、CCCが申請した行政財産の使用許可書に添付された図面(下)をみると、同社が賃料を和歌山市に納めているのはテーブルとイスや販売棚など極めて限られたスペース(1階全体の約13%)であることが判明した

 つまり、カフェの椅子やテーブル、カウンター、書店の販売棚など狭い範囲に限定したCCCからの使用申請を市が受理。それに基づいて、ただでさえ平米当たりの単価が激安になっているところに、対象面積まで極端に狭くした賃料が決定。結果、当初のめやす賃料から試算した額の“9割引”(1階1669平米の半分約800平米×3万円=年2400万円、つまり月200万円が月19万円に値下げ)になっていたのだ。

 これこそ、明らかに事実と異なる不正な許可申請であるとして、監査請求の対象になったわけだが、この対象面積を極端に狭くする“屋台方式”についても、監査結果では次のような驚くべき見解を示していた。

<また、目的外使用の範囲については、「自主事業の内容、業務の形態によって機材のみ又は排他的な専有部分(入場料が必要な部分、カフェサービスの専用席等)」であることを募集要項で示しているとおり、市民図書館の床面に什器を設置した部分とカウンター等の壁や什器等に囲まれた排他性を持つ部分を自主事業として算定しており、何ら問題ない>

 つまり、「CCCに特別な便宜を図って賃料対象の面積を狭くしたのではなく、CCCが指定管理者に選定される前の、募集要項の段階で賃料対象は明示していた。そのとおりに、排他的専有部分のみを算定しただけである」と結論づけているのだ。

 この点についても幸田教授は疑問を投げる。

「募集要項に書いてあるとおりにしたというのは、一見、筋が通っているようにも思えますが、それは違うと思います。客観的に見て、どこからどこまで民業店舗が利用しているスペースなのかをしっかりと判断して、それに基づいて賃料を徴収しなければなりません。まず、その判断がなされていないことは問題です。本来、取れるはずの使用料を取っていないことになります。つまり、市が損害を被っているという住民側の主張を崩せるものではありません」

 そのうえで、こんな見解を示す。

「栃木県栃木市が、総合運動公園内に建設されたサッカースタジアムの設置会社に公園使用料や固定資産税の免除することの差し止めなどを求めた住民訴訟の判決が2022年1月27日、宇都宮地裁でありました。裁判所は、市長が使用料を請求しないのは違法と結論づけ、固定資産税の免除を差し止める判決を言い渡しています。このケースでは、条例の規定に基づき無料にしたと市は主張していましたが、裁判所は『公益性があるとは到底認められない』と判断しました。

 和歌山市のケースでも、棚とテーブル・イスのみとした賃料の対象が妥当かどうかを、使用実態に合わせて検証して初めて結論が出せるといえますが、監査結果は、ただ市側の主張をそのまま書いているだけにすぎないと思います」

 このように、監査の杜撰さが浮き彫りになっている。

 監査結果のなかでも幸田教授がとりわけ大きく首をかしげたのが、開業準備期間中の無許可使用までも「問題なし」とした箇所である。

 市民図書館が全面開館したのは2020年6月5日。館内で営業するスターバックスと蔦屋書店は、いずれもその直前の2~3カ月は、機材の搬入やスタッフの研修などの開業準備作業を行っているはず。それにもかかわらず、その間の使用申請が出されておらず、賃料も1円も支払われていなかったのだ。

 市民は、その分をCCCに請求せよとしているわけだが、おかしなことに監査委員は、それを棄却。監査結果では、CCCは使用許可を得ずに開業準備のため施設を使用した「事実を確認した」と述べ、手続きに不備があったことは明確に認めている。それにもかかわらず、コロナ禍によって開館延期となったことなどを理由に、その間の使用料は免除されるべきものだったとして、「市に損害は発生していない」としているのだ。 

 この結論について幸田教授は、厳しく批判する。

「本来、賃料を取るものなのに取らなかったのですから、損害は間違いなく発生しています」

 では、なぜ「損害は発生していない」としているのか。その理由として、監査結果では以下のような事情を挙げている。

<また、当該期間の目的外使用料については、当時において使用を許可していたのであれば、賃料の減額について定める民法第611条第1項の考え方を応用し、使用料条令第3条第2項を適用して免除することになっていただろうと教育委員会は推認している>

「使用は許可していないけれども、もし許可していたら」という仮定の条件を設定。そのうえで、「実際に開業しても利益を得られなかった状態にある以上、使用料を免除していた」と推認。つまり「たぶんこうだったんじゃないかと思っている」というおかしな文章になっている。この点について、幸田教授は間違いであると指摘する。

「賃料減免の理由として挙げている民法第611条第1項の規定は、賃借物の減失によって使用できなくなった場合に賃料を減免できるとしたものです。当時、市民図書館は使用できる状態(開業準備作業の場として)にありましたので、これは当てはまりません。また使用条例第3条第2項は、“災害その他特別の理由により市長が特に必要と認めたとき”には賃料を免除できるとされていますが、その必要性について、合理的で公益性が認められなければなりませんが、該当するとは思えません。また、開業準備のために現に使用したわけですから、市が賃料を減免する理由がありません」

 よしんば、市教委側が主張するような「特別な理由」があったとしても、それを認定するためには、教育委員会が協議を行ったうえで、開業準備期間中の賃料免除を教育長が決裁する手続きが必要のはず。そうした手続きが行われていないのに、あとから賃料免除したという釈明は、あまりにも牽強付会といえる。

「もし、教育長の合理的な根拠がない裁量によって賃料免除したということであれば、それは裁量権の乱用・逸脱となり、結果的には、違法となります」と、幸田教授は手厳しい。以上のような理由から、住民訴訟になった場合には、この項目については市民側の主張が認められる可能性は高いだろうと指摘する。

 これに関連して、広告物(蔦屋書店とスターバックスの看板)についても、開館した翌年2月に未申請に気づいて申請しているため、「不足分は発生していない」と監査で結論づけられている。

 しかし、開業準備期間の賃料と同じく全面開館よりも前に、これら店舗の看板が設置されていた。その期間中に1円の使用料も払われていないと監査請求されたことについて監査結果では、“土地及び建物の使用許可と同様である”とされているが、広告物は設置された段階で使用料が発生する性質のものであることは一切考慮されていない。

 こうしてみていくと今回の監査結果は、実施機関である市教委が提出した資料を基に一つひとつ事実を監査委員が精査したようには到底思えず、かなりアバウトというか杜撰なものであることが次第に浮き彫りになってくる。こうした“ザル監査”の実態が、さらに鮮明になるのは、CCCによる「又貸し疑惑」と、「光熱水費の転嫁疑惑」である。

 まず、和歌山市民図書館の1階では、ときどき商業施設のイベントと見まがうような、通路に屋台方式の「ポップアップストア」が派手に出店しているが、それらはCCCの店舗ではない看板で営業。平台スペースを1日当たり数百円で借りたCCCが他店に高額で又貸し(契約で禁止)している実態が明らかになっていた。

 あくまでも「他店から商品を仕入れた蔦屋書店が営業している」として、市教委は「合法」と主張していたが、今回の監査結果においても「教育委員会において契約書又は納品伝票で仕入れの状況を確認している」と、同じ釈明を繰り返している。

 今回の監査で監査委員が新たに確認したのは、「令和4年3月10日から同年4月24日までの期間」のポップアップストアを実施した店舗の納品伝票だった。肝心の監査請求で問題とされていた令和3年11月から12月分については、CCCに書類を提出させて確認した形跡がみられない。これでは、又貸し問題が世間で騒がれてから、慌てて他店から仕入れたように書類を作成したのではないかと疑われても仕方ないだろう。

 幸田教授は、こう指摘する。

「監査請求されているのは、実態としてほかの店舗が看板を掲げて営業している“又貸し状態の違法性”にあるので、いくら書類上は蔦屋書店が他店から仕入れて販売した形にしていたとしても、それだけで違法性がないとは判断できません。住民訴訟になれば、当然その営業実態がどうであったのかが問われるので、その事実認定の争いになるでしょう」

“ザル監査”の極め付きは、CCC経営のスターバックスと蔦屋書店が負担する光熱水費(電力料金と水道料金)の図書館運営費への転嫁疑惑である。

 筆者は昨年秋以降、和歌山市から開示された資料を基にスタバ・蔦屋書店が実質負担している電気代と水道代を算出したところ、それらが異様に安いことが判明。ブログで独自の試算データ(開示資料では店舗の電力料金を黒塗り)を発表したのが事の発端だった。

 それを受けて和歌山市民は、それぞれの店舗の使用分を、一括で支払ったCCCに戻す経理処理が適切に行われていないのではないかとの疑問を持った。つまり、店舗の冷暖房などの使用分が、図書館全体の水道光熱費に転嫁されているのではないか、もしそうだとしたらその分の損害をCCCに請求すべきであると、監査請求されていたのだ。

 請求が正式に受理されたのであれば、監査委員はCCCに関係書類をすべて提出させて、店舗の使用分が図書館へ流用されたりしていないかを詳しく監査したはずであると思っていた。

 ところが、今回の監査結果では、そのような監査を厳密に行った形跡が見られないのだ。

・CCCが電力会社と市企業局と供給契約を締結している

・CCCが電力会社と市企業局へ指定管理料から一括して支払いしている

・自主事業(店舗)に係わる光熱水費については、子メーターで計測したうえで民業としてのCCCが市民図書館の指定管理料に戻す会計処理を行っている

以上の3点を認定。よって、市に損害は発生していない、という謎理論を展開している。

 そもそも、指定管理料を積算した際の水道光熱費はいくらだったのか、それはどのように決められたのか、開館後は決められた予算内に収まった場合は精算することになっているのか――などの疑問については、一切答えていない。

 意味深なのは、この項目の末尾に以下のような、ただし書きがあることだ。

<なお冷暖房については、公の施設としての市民図書館全体を維持するためには必要なものであるため、指定管理料で負担することについては不当ではない>

 図書館の1階で営業するスターバックスと蔦屋書店については、冷暖房にかかわる部分の電気代を図書館の指定管理料(図書館運営に必要な水道光熱費)で賄っていることを公然と認めているようにもとれる。指定管理者に直接書面を提出させて事実認定をせず、監査請求で指摘された店舗の水道光熱費を図書館の費用に転嫁していることを認めつつも、それは妥当だとする、ある意味開き直りともとれる結論を出しているのだ。

 幸田教授は、この監査結果についても、まったく的外れな見解だと指摘する。

「図書館全体の水道光熱費については、CCCが図書館運営のための委託費から払うのは当然です。しかし、自主事業の店舗については、使用許可書に電気料金を負担する旨が定められていますので、それに従って各店舗は冷暖房費用も負担すべき。たとえ同じ建物にあっても、カフェや書店は図書館ではないので、図書館運営のための委託費から支出するのは許されません。もしそういうことがあるのならば、指定管理者が行っている“図書館業務以外の業務”に不当な利益を与えていることなります」

 なお、この水道光熱費の冷暖房費部分については、市長または教育長の「合理的な根拠に基づく」裁量によって全額または一部免除することは可能だろうが、その場合、この「合理的な根拠」に加え、事前に検討・協議したうえで、教育長の決裁がなければ適正なプロセスとはいえない。

「市が主張する可能性がある理屈としては、カフェがあることによって図書館の利用者も増えることが期待できるため冷暖房費を免除したというものですが、図書館とカフェは別の業務であり、このような理屈はまったく成り立ちません。図書館は公的施設ですので、むしろ図書館があることによってカフェに人が入り、カフェが利益を得ていると見るのが適切といえます。逆転した論理であって、認めることはできません」(幸田教授)

 必要な行政上の手続きを経ずに、市民から指摘を受けてから慌てて取り繕った市教委サイドの釈明をただ追認しただけの監査結果という印象は、最後まで拭えなかった。

 このほか、人件費の流用疑惑や全面開館前の不当な指定管理料支出、蔵書の独自分類にかかる不当な支出など、監査請求されたのは全部で11項目に上るが、いずれについても十分な事実認定をされることなく、門前払いするような形で棄却されている。

 幸田教授は、監査結果についての全体的な印象を次のようにまとめる。

「まずは監査が不十分であるということ、事実認定がちゃんとされていないこと。そして3つめは、開業準備期間の無許可使用など、手続きが不十分で本来請求されるべきものが請求されておらず、指定管理者に不当な利益を与えることを是とする市の主張をそのまま是認していることが問題であると思います」

 現行の指定管理者制度のもとでは、指定管理者がどんなにデタラメな運営をしたとしても、財務会計上の行為とならなければ、監査請求の対象にはならない。そのため、財務会計上の内容にのみ絞った監査請求をして、市に改善を求めるしか方策は残されていないが、その監査がこれほどいい加減で、行政寄りの結論しか出さないとなれば、市民が行政の不正を正すのは至難の業といえる。

 監査請求を却下された市民サイドは、30日以内に住民訴訟を提起することができるが、訴訟費用を捻出して、これからさらに何年もかかるかもしれない裁判をしないと、まともな結論が出ないとしたら、理不尽極まりない。監査委員には、猛省を求めたい。

 なお、今回、監査請求を行った和歌山市民が住民訴訟を提起したという情報は、現時点では得られていない。今後は市議会等に舞台を移して、和歌山市全体で、この疑惑解明に取り組まれることを期待したい。

(文=日向咲嗣/ジャーナリスト:外部執筆者)

日向咲嗣/ジャーナリスト

日向咲嗣/ジャーナリスト

1959年、愛媛県生まれ。大学卒業後、新聞社・編集プロダクションを経てフリーに。「転職」「独立」「失業」問題など職業生活全般をテーマに著作多数。2015年から図書館の民間委託問題についてのレポートを始め、その詳細な取材ブロセスはブログ『ほぼ月刊ツタヤ図書館』でも随時発表している。2018年「貧困ジャーナリズム賞」受賞。

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