AI採用ツール、導入率は約5割…JetB・キリンHD・ローソンに見る「AIと人の分業」

●この記事のポイント
AI採用ツールの国内導入率は47.9%、2026年卒学生の82.7%が就活でAIを利用。JetBは選考工数を88%削減、ローソンは内定承諾率が1割向上。一方、約6割の企業はAIスコアを参考に人が最終判断する「ハイブリッド判定」を採用。AIに任せていい業務/人が引き取るべき業務の線引きを事例から解説する。
採用選考にAIを組み込む動きが、もはや一部の先進企業だけの取り組みではなくなっている。国内調査では企業のAI採用ツール導入率が47.9%に達し、導入企業の73%が工数削減を実感しているという結果が出ている。学生側でも変化は顕著だ。2026年卒業予定の大学生・大学院生を対象にした調査では、就職活動でのAI利用経験者が82.7%に上り、2年前(2024年卒)の39.2%からわずか2年で倍増した。
もはや「AIを選考に使うかどうか」は議論の対象ではなくなりつつある。採用・人事責任者にとっての本題は、選考プロセスのどこをAIに任せ、どこから人間が引き取るべきかという設計論に移っている。
●目次
- 導入率5割に迫るAI面接…なぜここまで急速に広がったか
- AIに任せて成果が出ている領域
- 人が引き取るべき業務
- 導入企業が陥りやすい失敗パターン
- 選定基準としての「説明可能性」
- 自社の選考フローを「AI適性マップ」で棚卸しする
導入率5割に迫るAI面接…なぜここまで急速に広がったか
対話型AI面接サービスの国内最大手「SHaiN」は、2025年12月時点で導入企業数が927社に達し、1日1社のペースで増加を続けている。これまでの延べ受検者数は14万8,477人に上る。この分野を長年調査してきた労働政策研究・研修機構(JILPT)は、科学的な面接理論に基づいて設計されたAIが、面接官ごとの評価のばらつきを抑え、人間よりも公平な評価を実現しうる点を指摘している。
実際、採用現場が抱える課題として「面接官による評価のブレ」を挙げる企業は約3社に1社にのぼるという調査結果もある。属人的な評価基準を標準化したいという企業側のニーズと、AIによる均質的なスコアリングという技術的な解決策が噛み合ったことが、急速な普及の背景にあると考えられる。
学生側の受け止め方も一様ではない。同じ調査では、AIによる評価に「適性検査の評価検討」では賛成が49.8%と多数派だった一方、「面接内容の評価検討」では反対が47.5%と、人柄や熱意など数値化しにくい要素の評価には、依然として人間による判断を望む声が根強いことがわかっている。この学生側の感覚は、後述する「AIと人の線引き」を考えるうえで重要な手がかりになる。
AIに任せて成果が出ている領域
導入企業の実例を見ると、AIが成果を上げているのは主に「初期段階のスクリーニング」と「評価の標準化」だ。ソフトウェア開発企業のJetBでは、AI面接による自動スクリーニングを一次選考に組み込むことで、選考工数を88%削減したと報告されている。従来は担当者が全応募者と一次面接を行っていたが、AIが一次的な絞り込みを担うことで、人的リソースを二次面接以降の見極めに集中させられるようになったという。
書類選考をめぐる動きも興味深い。新卒・中途採用の担当者1,625名を対象にした調査では、生成AIの影響で約7割の企業が書類選考の縮小・廃止を検討していると回答している。書類だけで足切りをするのではなく、AI面接によって「選考の間口を広げる」方向への転換が進んでいるとみられる。実際、この調査でAI面接導入の効果として最も多く挙げられたのは「埋もれた才能の発掘」であり、次いで「工数削減」だった。従来の書類選考では見落とされていた候補者に、対話を通じて接点を持てるようになったという評価だ。
人が引き取るべき業務
一方で、AIに全面的に判断を委ねている企業は少数派だ。前出の調査では、約6割の企業がAIのスコアをあくまで参考情報として扱い、最終的な合否判断は人間が行う「ハイブリッド判定」を採用している。
大手企業の事例もこの傾向を裏づける。キリンホールディングスは新卒採用にAI面接を導入し、コース数を5から12へと拡大しているが、AIが担うのは行動特性のスコアリングによる評価の均質化までであり、最終的な合否判断や配属適性の見極めには人が関わる設計になっているとされる。ローソンも新卒・インターンシップ採用にAI面談を導入し、学生の98%が「体験してよかった」と好意的に評価し、内定承諾率も従来の対面面接のみの場合と比べて1割向上したと報じられている。これらの事例に共通するのは、AIが「候補者との最初の接点」や「評価の下地づくり」を担い、最終的な意思決定や候補者との関係構築は人が引き取るという役割分担だ。
学生側が面接評価へのAI活用に慎重な姿勢を示していたことを踏まえれば、こうした線引きは合理的といえる。カルチャーフィットの見極めや、候補者の懸念を対話の中で解消するといった、定型化しにくいコミュニケーションは、依然として人が担うべき領域として位置づけられている。
「AI面接がうまく機能している企業の共通点は、AIに『合否を決めさせる』のではなく、『評価の材料を揃えさせる』という位置づけで導入している点です。逆にうまくいかない企業は、AIスコアをそのまま合否基準にしてしまい、候補者体験を損なったり、本来採用すべき人材を取りこぼしたりするケースが見られます」(人事・労務コンサルタントの松本祐樹氏)
導入企業が陥りやすい失敗パターン
AI面接の満足度は総じて高く、ある調査では導入企業の86.7%が「満足」と回答している。ただし、その裏側にはいくつかの共通した失敗パターンも見えてくる。一つは、AIスコアへの過度な依存だ。スコアリングの数値だけを基準に機械的に合否を決めてしまうと、数値化しにくい強み(潜在的なリーダーシップや、特定分野への深い関心など)を持つ候補者を取りこぼすリスクがある。もう一つは、候補者体験への配慮不足だ。AI面接に対して前向きな学生がいる一方、「AIに評価されること」への不安や違和感を抱く候補者も一定数存在する。導入の目的や評価の仕組みを候補者に丁寧に説明しないまま導入すると、企業への印象を損ないかねない。
選定基準としての「説明可能性」
AI面接サービスは、対話型・録画型など方式によって特性が異なり、国内だけでも導入企業数を伸ばすサービスが複数存在する。ビデオ面接ソフトウェア市場は世界的にも拡大が見込まれており、2025年の75億米ドルから2030年には124億米ドル規模に成長するとの予測もある。選択肢が広がるなかで重要になるのが、「なぜそのスコアになったのか」を人事担当者が候補者や社内に説明できる、評価ロジックの説明可能性だ。ブラックボックス化したスコアリングをそのまま合否に使うことは、候補者への説明責任の観点からもリスクを伴う。
自社の選考フローを「AI適性マップ」で棚卸しする
ここまで見てきた事例を整理すると、AI活用に向いている業務と、人が引き取るべき業務の輪郭が見えてくる。書類選考の代替や一次面接での均質的なスクリーニング、行動特性データの収集といった「定型化・標準化になじむ業務」はAIとの親和性が高い。一方、カルチャーフィットの最終判断や、候補者の懸念に寄り添う対話、配属先とのマッチング見極めといった「個別性の高い判断」は、引き続き人が担うべき領域として残る。
自社の選考フローを一次面接から内定通知まで棚卸しし、それぞれの工程が「標準化になじむ業務」か「個別の対話が必要な業務」かを仕分けることが、AI面接導入の出発点になる。導入すること自体を目的化せず、自社の採用課題(評価のブレなのか、候補者の取りこぼしなのか、単純な工数不足なのか)に照らして、任せる範囲を設計することが求められている。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=松本祐樹/人事・労務コンサルタント)
※本稿のデータはフォワード社、マイナビ、レバレジーズ(NALYSYS)、労働政策研究・研修機構(JILPT)などの公表資料および各種報道をもとに構成しています。










