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木下隆之「クルマ激辛定食」

新型スカイラインは日産の“場当たり”ブランド戦略の象徴…トヨタの緻密な戦略と真逆

文=木下隆之/レーシングドライバー

日産復活ののろしの役割

 だが、マーケティング担当者のブランド戦略は場当たり的でも、技術集団の心意気は熱い。採用した運転支援技術「プロパイロット2.0」は、優れた出来栄えである。レーザーとカメラに加え、「3D高精度地図データ」を組み込んだ。これにより、自車の位置を正確に把握することに成功。道路形状を先読みすることも可能になった。両手を離していても、ピンボールのように左右に蛇行することもなく、車線の中央を正しく走ってくれるのだ。筆者が日本国内で経験したなかでは最高の完成度である。

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 新開発の3リッターV型6気筒ツインターボの採用からも、力の入れようが伝わってくる。ダイムラーの直列4気筒から決別したのだ。最量販が期待されるモデルには、3.5リッターV型6気筒ハイブリッドが積み込まれた。スポーティ仕様の「400R」も用意されている。

 もっとも、走り味は平凡で、可もなく不可もなくといったところだ。ハイブリッド仕様は重量をシャシーが受け止めきれずグラグラと不快なシェイクが止まらないが、ツインターボ仕様ではその不快感はなかった。フラットな姿勢を保ったまま、すっと何事もなかったかのように旋回する感覚は心地いい。

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 ステアリングとタイヤが直接連結しない「ダイレクト・アクティブ・ステアリング」が技術的な目玉のようだ。ステアリングが異様に軽いのは、これからの日産の方向性ととらえていいのだろうか。ステアリングインフォメーションの不足を除けば、新しいシステムとして期待できよう。

 ともあれ、業績低迷する日産が復活ののろしとして期待したのがスカイラインであることは明白だ。国内投入のセダンが爆発的な利益を生むとは思えないが、日産の旗印であり、日産ブランド再興がスカイラインに託されたと考えたほうがいい。

 だが、果たして、その期待をスカイラインが背負い切れるのだろうか。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

木下隆之/レーシングドライバー

木下隆之/レーシングドライバー

プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

Instagram:@kinoshita_takayuki_

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