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木下隆之「クルマ激辛定食」

日本の信号機は異常、黄を経ず赤→青に替わる謎…“焦り事故”を誘発して危険なのに

文=木下隆之/レーシングドライバー
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 前出の専門家は、ドイツが黄色を経由して青になる理由を、こう推測する。

「マニュアルギア比率が多いことも関係しているかもしれませんね。クラッチを踏み込んでギアを1速に入れて発進する。そんなプロセスが必要ですから、いきなり青が点灯したのではモタモタするのでしょうね」

 日本もかつてはマニュアルギアばかりだった時代もあったはずなのに、古くからこのスタイルを改善することなく続けているのだから、それは理由ではないかもしれない。

タイの交通

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 実は、もっと交通を流そうという国がある。そのひとつが「微笑みの国」タイランドだ。

 バイクやクルマが激しく往来するタイの首都バンコクでは、たいがいの信号機のカウントダウンの数字が表示される。赤信号で停止している時にも「あと○秒で青に変わりますよ」と告げられる。これがとても有効で、どれだけ待たされるのかわからないことのイライラからも解放される。

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 そればかりか、ドイツのように発進にモタつくことがない。カウントダウンからの青信号だから、それはまるでレースのスタートシーンのように、ほとんどのクルマがその瞬間にスタートする。最前列のクルマが動いてからようやく2列目のクルマが動き、挙げ句の果てに後続の車が動き出した時にはもう信号機は赤に変わっていた、などという日本的なモタモタ感はないのである。

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 もちろん、信号機はレース風のスタイルだから、フライングするドライバーがいないわけもない。だが、事故を誘発するような発進をする場面は見当たらなかった。観光客には危険に見えても、あれはあれで秩序が整っているのだ。

「カウントダウンしないと信号無視が多発するから」という苦肉の策である側面もあるのかもしれないが、結果として流れが円滑になる。

 せっかくの優秀なクルマを生み出している自動車大国・日本だが、交通インフラは旧態依然としている。クルマは走らせることで初めてクルマだということを、海外で学ぶことも少なくない。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

木下隆之/レーシングドライバー

木下隆之/レーシングドライバー

プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

Instagram:@kinoshita_takayuki_

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