女性幹部社員を3倍にする
今でこそ女性が活躍するのは当たり前になったマツダだが、かつては完全な男性社会だった。それを変えたのはフォード出身の社長だ。「日本人男性ばかり」という状況を異様に感じたフォード2代目社長のジェームズ・ミラー氏(在任97~99年)は、人事施策として女性登用を主導した。
他社よりも早く、外国人社長という経験を得たマツダは、「女性登用ではなく、ダイバーシティの一環」だと話す。ただし、まだ全管理職1300人余りのうち女性は30人程度しかいない。人数が少ないことは同社も痛感しており、14年8月には「20年に女性幹部社員を13年度実績比3倍にする」と宣言した。
もちろん人数合わせの女性登用ではなく、実力が伴った上での幹部起用を目指す。筆者はこれまで多くの会社を取材してきたが、マツダの女性エンジニアは、気軽に話せる同僚タイプが多いように感じた。
竹内氏は、後輩の女性エンジニアに対して「女性であることを忘れてほしくない」と語る。同氏自身、意図的にスカートをはいてクルマの性能を評価することもあれば、特Aの腕前を持ちながら、わざと下手に運転することもある。いずれも一般女性ドライバーの気持ちを持ち続けようとの意図だろう。
福原氏はこう語る。「職場に普通の女性が増えるのはいいことです。カーマニアではない普通感覚の人が増えれば、商品開発はもちろん、消費者への訴求の仕方も変わっていきます。これまで『自動車好きの人に伝わればいい』と、スペック中心で話していた技術者たちも、素人でもわかる話し方に変わってきたのを実感します」
もともとトヨタ自動車の10分の1の売り上げ規模ながら、技術力に定評があったマツダは近年、スタイリッシュで高機能な車種を次々に開発している。3年で2度の日本カー・オブ・ザ・イヤーの受賞はその成果だろう。普通感覚を持った女性たちが、どのように今後発売される車種の中で魅力を打ち出していくのか、注目していきたい。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)