岩田前社長への賛成比率「75.74%」の意味
そもそも、ヤフーとプラスの議決権行使を除いた岩田前社長と独立社外取締役3候補に対する少数株主の賛成比率が高かったからといって、それが個人株主など少数株主の明確な意思表示といえるのかは微妙な問題だ。
「社外取締役の名前すらうろ覚えで、実績もよくわからない。簡単なプロフィール程度で少数株主に判断を求められ、会社側が経営に役立つとして推薦しているのだからということで、明確な反対理由もないので賛成した。経営統合や減配、無配など直接的に投資に影響がなければ、基本的に会社側議案に反対はしない」(アスクルの個人株主)
たとえるなら、衆議院議員選挙に投票に行くと、一緒に投票を求められる最高裁判官の国民審査のようなものだ。ほとんど情報のないなかで、明確な理由もなく反対票を投じる人はいないだろう。
むしろ、ヤフーとプラスの議決権行使を除いた少数株主の賛成比率が独立社外取締役3候補は90%超えていたのに対して、岩田前社長の賛成比率が75.74%だったことに“少数株主の意思が表れている”と考えるべきではないか。
アスクルが、今回の解任劇がヤフーとプラスによる横暴で、少数株主の意思を無視したものであると主張するならば、その少数株主を調査するべきで、その結果をもとにヤフーとプラスを批判するのでなければ、アスクルの批判は論拠に乏しい。
アスクルはヤフーにとっては連結子会社だ。連結子会社の業績は、当然、親会社の業績に影響する。親会社が連結子会社の経営に対して介入するのは当たり前のこと。連結子会社の業績が悪く、親会社の業績が悪化するようであれば、親会社の経営者が株主総会で追及されることになる。
子会社が上場していなければ、子会社の社長人事は当然のこととして親会社が決める。今回のアスクルとヤフーのケースでは、アスクルが上場しており、少数株主が存在していることが問題を複雑にしている。
業績回復が最優先
近年、増えてきたとはいえ、日本に「物言う株主」はまだ少ない。少数株主が業績の悪化・低迷する企業に対して、「経営者の交代が必要だ」と考えても、それを実現することは容易なことではない。確かに、少数株主の利益を守ることは重要だ。だが、逆に見れば、少数株主の利益を守るためにも、大株主が経営者の適正を判断することも必要だろう。