一方で、無料キャンペーンには大きなリスクも……
無料でハンバーガーを配れば、もちろん多くの顧客が来店するはずです。そして、このキャンペーンによって、2年5カ月にわたって続いた顧客の減少についに終止符を打つことができる可能性も高まったといえるでしょう。
ただし、この無料キャンペーンは数々のメリットと同時にマクドナルドにとって大きなリスクをもたらすことも考えられます。
1つ目は30万人が一斉に全国のマクドナルドに押し掛けることにより、店舗のオペレーションに混乱を来たし、逆に悪評が広まることもあるかもしれないというリスクです。
現状のマクドナルドの店舗は全国におよそ3000店なので、30万人が均等に来店したとすると1店舗あたり100人です。3時間のキャンペーンですから、1時間あたりは33人、10分あたりまでドリルダウンすると5人~6人と1人2分弱で注文をさばくことができれば計算上は問題ないように感じます。ただ、通常は30万人限定とすれば、我先にとキャンペーンの開始直後に来店することが考えられますので、都心など特定の店舗に予想をはるかに上回る顧客が集中することも十分に考えられます。そこで、店舗のオペレーションに混乱を来たしてハンバーガーが提供できないような状況になれば、かえって顧客の不満が爆発し、インターネット上で散々な評価が拡散するリスクもあるのです。
また2つ目として、いきなり新製品を無料で提供することによって、顧客に「おてごろマック=価値のないもの」というイメージが植え付けられるリスクもあるでしょう。
もし、カサノバ社長が宣言したように、おてごろマックが本当に価値の高い商品であれば、値引きせずとも顧客は喜んで購入するはずです。それを最初から無料で提供してしまえば、いきなり商品自体のブランドや価値が毀損され、200円という定価で販売したときに、誰も見向きもしなくなる危険性があるのです。
果たして、これらのリスクを乗り越え、かつてプレミアムローストコーヒーで成功したように、今回のキャンペーンが再びマクドナルドの輝きを取り戻すきっかけとなるのでしょうか?
その成否に注目が集まります。
(文=安部徹也/MBA Solution代表取締役CEO)