男女同数や女性登用進む職場、なぜ社員全体の満足度が低下?男性社員予備軍の女性達
さらにもう1つ同じような調査結果がある。
米国の人事コンサルティング会社ケネクサは、エンゲージメントを「会社の成功に貢献しようとするモチベーションの高さや、会社の目標を達成するために努力しようとする意思の強さ」と定義している。この定義にしたがった調査の結果が12年に発表されているが、世界各国の従業員エンゲージメント指数は、インドが77%で1位、米国が59%で5位、英国、ドイツ、フランスといった先進国も40%台後半であまり高くない。が、日本の社員のエンゲージメント指数はそれより低く最下位の31%だった。
どちらの調査結果をみても、会社への忠誠心が高く真面目で一生懸命働くといわれた、かつての「日本企業の社員」の姿は見られない。
では、職場での多様性を進めることが、社員のモチベーションを高め生産性向上につながることになるのだろうか。
繰り返しになるが、日本企業の中核は男性社員がつくる「男社会」にある。この男社会に女性が同調するようでは、多様性にはつながらない。だが、マジョリティの男性の「男社会」にマイノリティの女性が融合され、男性の視点や観点で物事を判断するようになるのは簡単なことだ。最近、それを実感したのは、安保法案の採決でもめた国会での出来事だ。野党の女性議員はピンクのハチマキをつけ会議場に入れないように通せんぼをし、排除しようとした自民党議員に「さわったらセクハラだ」と抵抗した。これは、すでに自分たち女性を男性の視線で見ているし、物事を男性の観点から判断している。多様性は消え、「男性議員」と「男性のように考える女性議員」がいるだけだ。
だから、男性社員自身がその働き方を変えなければ、女性社員を雇用・登用しても、真の多様性にはつながらない。
多様性の罠
最後に、性の違いによる多様性が生産性を上げることにつながっているかを調査した海外の結果があるので紹介したい。
米マサチューセッツ工科大学の経済学者が、1995年~02年の7年間、米国および海外に60件の事務所を開いているホワイトカラーからなる大手企業を調査した。その結果報告には、「性別の多様性は職場の生産性を向上するのに貢献したが、従業員の満足度は低下した」と書かれている。男性ばかりとか女性ばかりといった同質性の高いオフィスほど、協力、信頼、そして職場における楽しさといったソーシャルキャピタル(社会関係資本)のレベルが高いと結論づけている。