男女同数や女性登用進む職場、なぜ社員全体の満足度が低下?男性社員予備軍の女性達
全員男性ばかり、全員女性ばかりのオフィスから男女半々くらいの職場に転換することにより、収益が41%向上したということで、これを生産性が向上した根拠としている。研究者は、多様性があるということは、さまざまな技能や経験をもつことにつながり、それによって組織がより良く機能し、組織全体の集合的知識が高まるからだろうと結論づけている。
興味深いことに、自分の働く職場が多様性を持つという認識自体は、従業員に満足感をもたらすが、実際にそういった職場で働いている従業員の満足度はかえって低くなる。つまり、会社が多様性を採用するというアイデア・期待感は従業員をハッピーで協力的にさせるが、実際に多様性が普及して収益も上がっているオフィスでは、そういった満足感は低下するということだ。
自分が働いている企業が多様性を採用するということを認識する段階において、期待もあるのだろう。従業員はハッピーで協力的である。だが、実際の運用段階になると、従業員の満足度は落ちるようだ。
実際、多くの女性上司は、「女性の部下は男性上司のほうが格上だと考えて、女性上司の下で働くことをいやがる」と嘆いている、という調査結果もある。また、論理的かつ理性的に自分の意見を述べると、男性上司の場合は「優秀でやり手」だと評価されるが、女性上司の場合は「冷たい」と評価されるとも悩んでいる。
こういった調査は、男女雇用機会均等法が日本より20年早く施行され、職場での男女平等が進んでいると思われる米国その他の先進国での調査結果であり、多様性のある職場で働くことの難しさがうかがえる。
女性の輝く社会を促進するなかで、男性の輝き度がさらに落ちないことが肝心だ。女性がいくら輝いても、男性も輝かなければ多様性が職場の生産性をもたらすことにはつながらない。そういった意味で、性別による多様性は、雇用の流動性を伴わない限り、生産性を向上するのには結びつかない、と結論づけてもよいのではないか。
雇用の流動性を高めることで、男性社員を束縛感や不安から解放する。中途採用の男性社員が増えることで、男性社員の働き方を変える。そういった多様性が促進されなければ、いくら女性や外国人を雇用・登用しても、革新的アイデア創出を含めた生産性の向上は実現されないだろう。なお、筆者が9月に上梓した『格差社会で金持ちこそが滅びる』(講談社+α新書)では、こういった内容についてさらに深く考察しているので、興味のある方はご一読いただければ幸いである。
(文=ルディー和子/マーケティング評論家、立命館大学教授)