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いうまでもなくROEは株主の視点であり、株主にとって少ない投資金額でより多くの利益を手にしたいと考える以上、ROEが高ければ高いほど株主には都合がいい。しかし、会社にとって重要な指標はROA(総資産利益率)です。これは、投下資産がどれだけ利益を出しているかを示す指標で、11年度以降、東芝は黒字決算であってもROAは1~2%台の低水準で推移しており、ライバルの日立製作所に1ポイント以上の差をつけられています。換言すれば、資金の運用効率が悪いということです。利益を稼いでいない資産を抱え込んでいるともいえます。
重要なのは、短期利益ではなく儲け(つまり現金)です。決算書で儲けは営業キャッシュフローとして表されます。短期利益と儲けが大きくねじれる原因は、運転資本(在庫+売掛金-買掛金)にあります。利益が出ていても売上代金の回収が遅れるとか、大量に購入した商品が売れずに倉庫に眠っている場合、会社の資金繰りは厳しくなります。とはいえ、ほとんどの在庫や売掛金は常に循環していますから、短期的に利益と儲け(営業キャッシュフロー)がねじれても、長期で見れば両者はほぼ一致します。したがって、会社経営にとって重要なのは、長期間、利益(つまり現金)を生み出し続けることなのです。
鍵は貸借対照表(BS)にあり
長期利益を左右するのは、損益計算書(PL)ではなく貸借対照表(バランスシート:BS)です。BSを「現金製造機」と考えればわかりやすいです。
収益力の高い会社は、少ない固定資産でより多くの現金を稼ぐことができます。つまり、ROAが高い会社です。ROAが高い会社は安定的に儲ける力が強いといえます。逆に儲かっていない会社は、固定資産が十分に機能せず、赤字かわずかな現金しか稼げない会社です。東芝はまさに固定資産に問題がある会社だったのです。
ところが、このことについて報告書は何も触れていません。なぜなら、調査の範囲外とされていたからです。ここでもう一歩考えを進めてみましょう。もしも現金製造機である固定資産が現金をまったく生み出さないとしたらどうでしょう。それは、資産価値はない損失でしかありません。
東芝の不正会計処理が始まった08年と14年のBSを見比べると、多額の固定資産が目に飛び込んできます。それは調査の範囲から除外とされたのれんと繰延税金資産です。仮にこのうち半分でも損失と認識されれば、自己資本が4000億円消えてしまいます。
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