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しかし、不正会計を繰り返した目的は、単に業績の悪さを隠蔽するためだけではなく、06年に行った原発事業に対する経営の意思決定の誤りを隠すことにあったのではないか、と筆者は推測します。経営者と市場は、暗黙のうちにガチンコのせめぎ合いを繰り返していたということです。以下図の直近5年間の株価の動きを見ると、3つのことが見えてきます。
第一に、会社が公表した決算数値によって株価は敏感に増減したことです。不適切会計によって利益がかさ上げされた場合でも、株価は一時的には良い方向に反応しました。
第二に、決算数値とは別に先行きを暗示させる報道がなされると、株価はより敏感に反応しました。たとえば、リーマンショック、福島第一原発事故、第三者委員会報告後の株価の急落です。
そして第三に、不正会計処理をしようとも、株価は長期利益の動向を予測しながら推移しているということです。
つまり経営者は何を目指し、どの方向に会社を引っ張っていこうとしているか、それは正しい選択なのかを、市場は常に見ていたということです。
不正会計処理によって株価が大きく上昇しなかった理由は、経営者が長期の視点を見失い、目先の利益にとらわれていることを、市場は見抜いていたからではないかと思います。瀬戸際まで追いつめられた東芝の舵取りから目が離せません。
(文=林總/公認会計士、経営コンサルタント、会計専門職大学院教員)
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